[amazon]ボッケリーニ:チェロ・ソナタ集
イタリア生まれの作曲家ルイジ・ボッケリーニ。幼少の頃から優れた音楽的才能を発揮したボッケリーニは、ウィーン、パリ、スペインなどのヨーロッパ各国で人気を獲得し、チェリスト、作曲家として宮廷から寵愛を受けました。また、その生涯で膨大な数の室内楽を作曲しており、彼が生み出したメヌエットは、今日でもさまざまなシーンで使用される人気曲となっています。
そこで本記事では、ボッケリーニの作品の特徴を解説しながら、おすすめ代表曲を5つ紹介します。どの作品も聴きやすいものばかりですので、ぜひ参考にしてください。
ルイジ・ボッケリーニの作品の特徴や評価
ボッケリーニの作品にはどのような特徴があるのでしょうか。今回はおもな特徴を2つご紹介します。
膨大な数の室内楽を作曲
ボッケリーニの功績としてまず挙げられるのが、膨大な作品数と言えるでしょう。とりわけ、室内楽において優れた作品を残しており、弦楽三重奏、弦楽四重奏、弦楽五重奏では同時代の他の作曲家を圧倒する作品数です。あまりにも作品数が多いため、その大半は演奏機会がないものの、近年はボッケリーニの再評価により、録音や演奏機会が増えています。
また、チェロ協奏曲のほか、ピアノ協奏曲、フルート協奏曲といった協奏曲の分野でも多くの作品を残しており、こちらでもボッケリーニの多才ぶりがうかがえます。
同時代の作曲家と一線を画す
ボッケリーニが活躍した時代は、ハイドンやモーツァルト、そしてベートーヴェンが活躍した時代でもありました。また、古典派全盛期の時代であり、西洋音楽における「形式」が完成した頃です。
一方、ボッケリーニはそうした時代の波に乗ることはなかったようで、バロック様式を採用したり、スペインの民族音楽を用いたりするなど、後の国民音楽の先駆けとも言える作品を生み出しました。
もちろん、ボッケリーニ本人にとってはそうした意図はなかったと考えられますが「面白いものをなんでも取り入れる」柔軟な発想力がボッケリーニの大きな特徴と言えるでしょう。
ルイジ・ボッケリーニの代表作5選
おもにチェロ曲と室内楽の分野で優れた作品を生み出したボッケリーニ。今回はその中から、5曲を厳選してご紹介します。同時代に生きたベートーヴェンやモーツァルトの作品とは一味違った、おもむきのある作品をご堪能ください。
交響曲ニ短調
1771年に作曲された、ボッケリーニの交響曲の1つです。本作には「悪魔の家」という副題がつけられていますが、これはグルックのバレエ音楽「ドン・ジュアン」からインスピレーションを受けて作曲されたためと考えられています。とくに第3楽章において「悪魔の家」のイメージが展開されており、標題の通りドラマティックな展開が魅力です。
ボッケリーニといえば室内楽のイメージが強いですが、本作『交響曲ニ短調』は現在でもしばしばコンサートなどで演奏されており、隠れた名曲として親しまれています。
3楽章で構成され、演奏時間はおよそ20分です。
交響曲ハ短調
ボッケリーニが1788年に作曲した、比較的晩年の交響曲です。ボッケリーニが生み出した交響曲の中でも、もっとも優れた作品と評価されており、同時代の作曲家ヨーゼフ・ハイドンの影響が色濃く現れています。作品構成も『交響曲ニ短調』とは異なる4楽章構成となっており、ボッケリーニのロマンチシズムが存分に楽しめます。
『交響曲ニ短調』ほど演奏機会に恵まれていませんが、こちらも併せてお聴きいただくと作曲家の変遷が掴めるのではないでしょうか。
チェロ協奏曲第9番
チェロのヴィルトゥオーゾでもあったボッケリーニをもっとも代表するチェロ作品です。ボッケリーニは生涯で13曲のチェロ協奏曲を作曲していますが、本作は現代でも演奏機会の多い作品として人々に親しまれています。
また、1895年、ボッケリーニの死から90年を経てドイツのチェリスト・グリュッツマッハーにより改訂が行われ「グリュッツマッハー編」として演奏されています。
全3楽章で構成され、演奏時間は約20分です。20世紀半ばまでは、第2楽章は他の協奏曲から転用されましたが、1948年にボッケリーニ本人による楽譜が発見され、現在ではそちらに基づいて演奏されています。
弦楽五重奏曲
1771年に作曲された2本のチェロによる弦楽五重奏曲です。ボッケリーニの全作品の中でも、もっとも有名な作品であり、また演奏機会の多い作品です。第3楽章で演奏される「メヌエット」は「ボッケリーニのメヌエット」として、誰もが1度は聴いたことのある名曲として親しまれています。もとは『6つの弦楽五重奏曲』の中の5番目の曲であり、作曲当初はそれほど有名ではなかったものの、完成からおよそ100年後のフランスにて突然大きな話題となったそうです。
全4楽章構成で、演奏時間はおよそ20分。ボッケリーニの室内楽は規模の小さめの作品が多いため、この作品をきっかけとして他の室内楽に手を伸ばしてみても良いかもしれません。
ギター五重奏曲
ボッケリーニの晩年にあたる、1798年に作曲されたギター五重奏曲です。スペインに長く滞在していたこともあってか、作品にはスペインを代表する舞曲ファンタンゴの形式が採用されています。ファンタンゴとは、スペイン独自の手拍手とカスタネットでリズムを刻む活気ある舞曲のことです。
この作品以外にもボッケリーニはいくつかのギター五重奏曲を作曲しており、その全てが彼のパトロンでアマチュアのギター演奏家だったブナバント侯に献呈されています。
本作はボッケリーニのギター作品の中でも、もっとも人気作であり、現在でもさまざまなギタリストにより演奏されています。
まとめ
今回は、ルイジ・ボッケリーニの作品の特徴やおすすめ代表作を5つ紹介しました。今回紹介した作品の中でも、もっともよく知られているのが「ボッケリーニのメヌエット」ではないでしょうか。この記事をお読みいただき「聴いたことはあるけど曲名は知らない」曲の名前を知っていただければ幸いです。また近年、ボッケリーニの作品は再評価されており、これまで忘れられていた作品の録音が多く出回るようになってきました。もし少しでも興味を持たれた方は、他の作品にも手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
>>ルイジ・ボッケリーニってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?
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