フーゴ・ヴォルフの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

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19世紀後期を代表するオーストリアの作曲家フーゴ・ヴォルフ。幼少期から天才的な才能を発揮したヴォルフは、42歳という若さで亡くなるまでに優れたドイツリート曲を数多く作曲しました。彼が生み出した作品は「ドイツリートの頂点」と称され、現在でも根強い人気を獲得しています。詩人の世界観からインスピレーションを受けたヴォルフの歌曲は、聴く人に感銘と郷愁の念を抱かせ、色彩豊かに音楽空間を彩ります。
そこで今回は、ヴォルフの作品の特徴や、歌曲を中心としたおすすめ代表作を5曲紹介します。

フーゴ・ヴォルフの作品の特徴や評価

ヴォルフの作品の特徴を2つ紹介します。

ライトモチーフへの試み

作曲家ヴォルフにとって大きな転機となったのが、ワーグナーと出会ったことでした。ワーグナーとの出会いがなければ、現在のヴォルフは存在しなかったといっても過言ではないでしょう。ヴォルフはワーグナーの作品に深い感銘を受け、ワグネリアン(ワーグナー主義者)として作品を生み出すようになります。ヴォルフはワーグナーが多用した「ライトモチーフ」の手法をドイツリートに取り入れ、作品を強く印象付ける効果を生み出しました。リート作品におけるライトモチーフの導入は、作品の登場人物や情景を際立たせることに繋がり、ドイツリートの新しい地平を切り開いたとも称されています。

詩人からインスピレーションを受ける

ヴォルフ作品のもう1つの特徴は、詩人の作品にインスピレーションを受けた点です。
もちろんヴォルフ以前にも多くの作曲家が歌曲を生み出していますが、19世紀後半のロマン派音楽において最高傑作を生み出したのは、ヴォルフにおいて他にいないのではないでしょうか。ヴォルフはエドゥアルト・メーリケやゲーテ、アイヒェンドルフといったドイツの詩人のほか、パウル・フォン・ハイゼの翻訳によるイタリア詩集を用い、多くの優れた歌曲を残しています。

フーゴ・ヴォルフのおすすめ代表作5選

ヴォルフの作品を5曲紹介します。どの作品も美しく心に染み渡るような親しみやすいメロディーですので、ヴォルフ入門としてはうってつけです。

『メーリケ歌曲集』より「散歩」

上述したように、ヴォルフは多くの詩人の作品からインスピレーションを受けました。メーリケもその中の1人であり、彼の作品はヴォルフに大きな影響を与えました。また神学者・詩人・作家だったメーリケの作品は日本でも広く知られており、教養小説『画家ノルテン』は現在も多くの日本の読者に愛読されています。

そんなメーリケの詩を題材に作曲されたのが『メーリケ歌曲集』です。ヴォルフはメーリケの詩から43編を選出し、ドイツリートを生み出しています。本作「散歩」は歌曲集の10曲目にあたり、タイトルの通り軽快で弾むような爽快な曲調が特徴です。数あるヴォルフの歌曲の中でも、もっとも親しまれている作品の1つです。

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『メーリケ歌曲集』より「ヴァイラの歌」

上記と同じく歌曲集第46曲目の作品です。本作の歌詞に「オルプリート」という言葉が登場しますが、これはメーリケの小説『画家ノルテン』に登場する理想郷を意味します。また「ヴァイラ」とは、この理想郷を統治する女神のことです。ハープによる伴奏が作品全体に神秘性を与えつつ、女神の美しい歌声が響き渡ります。美しいメロディーはもちろん、ヴォルフの精神性の高さが味わえる1曲です。

『ゲーテの詩による歌曲集』より「鼠捕りの男」

メーリケの作品以上に歌曲として採用されたのが、文豪ゲーテの詩集です。ヴォルフは生涯で51編に及んでゲーテ作品を取り上げ、歌曲の題材にしました。本作は歌曲集第11曲にあたり、有名な「ハーメルンの笛吹男」の物語がテーマです。
物語と同様に非常に意味深であり、狂気さえ感じさせる名曲となっています。なお、ドイツリートの第一人者であるフランツ・シューベルトも同様のタイトルで作品を残しています。
これを機会に2人の作品の違いを聴いてみるのも興味深いかもしれません。

イタリア歌曲集

イタリア歌曲集はヴォルフが晩年に取り組んだ46曲からなる歌曲集です。前半の22曲は1890年から1891年にかけて作曲され、残りの24曲は1896年3月から8月にかけて一気に完成されました。作品の題材はイタリア詩からとられたもので、ヴォルフ晩年の大作と言えるでしょう。
バリトンとソプラノが交互に歌われるのが特徴で、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)とエリザベート・シュヴァルツコップ(ソプラノ)の演奏により大きな話題となりました。

スペイン歌曲集

1889年10月から1890年4月というわずか半年で作曲された歌曲集です。イタリア歌曲集と同じくヴォルフにおける重要な作品集であり、歌曲の集大成とも言える作品です。
全44曲の歌曲で構成されており、スペインやポルトガルの詩や民謡がモチーフとなっています。また44曲のうち10曲が宗教的題材を示し、残りの34曲が世俗的な内容です。ヴォルフが感じた異国情緒が堪能できる歌曲集となっています。

まとめ

フーゴ・ヴォルフの作品は詩とともに紡ぎ出されました。その晩年は梅毒による精神障害により苦悩に満ちたものでしたが、そんなヴォルフの状況を一時的にでも救ったのは、美しい詩の世界と音楽だったのかもしれません。辛辣で激情型の性格で知られるヴォルフですが、彼が生み出した優美なメロディーは、聴く人の心を捉えて離しません。ぜひこの機会にヴォルフの美しい歌曲に触れて、ドイツリートの頂点を味わってみてはいかがでしょうか。

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