ルネサンス音楽とは?特徴や形式は?有名な作曲家や代表曲は?

バッハやヘンデルが登場した「バロック音楽」や、モーツァルトやベートーヴェンに代表される「古典派音楽」など、音楽史はさまざまな時代に分けられています。

もちろん「バロック音楽」より前の時代にも音楽は存在しており、なかでも、今回紹介するルネサンス期の音楽は「音楽が音楽として花開いた」西洋音楽史でも重要な位置を占めています。

では、ルネサンス期の音楽とはどのようなものだったのでしょうか。今回はルネサンス期の音楽について、その特徴や有名作曲家を交えながら解説します。

ルネサンスとは

ルネサンス音楽を説明する前に、そもそも「ルネサンスとはどのような運動だったのか」について簡単に解説します。ルネサンスとは「再生」や「復活」を意味するフランス語です。

14世紀のイタリアでその萌芽が見られ、時代とともにフランスやイギリスなどのヨーロッパ各地へ拡大します。ルネサンス運動といってもその分野は絵画・彫刻・文学・音楽・思想などさまざまあり、17世紀初頭に終わりを迎えるまでに多くの優れた人物が登場しました(日本では鎌倉時代末期から戦国時代を経て、室町時代の初期頃です)。

美術の分野では『モナ・リザ』で有名なレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロ、デューラーなどが挙げられます。また、マキャベリーやトマス・モアなどの思想家たちが台頭したのもこの時代です。

教会の権威・権力に縛られていた中世時代(暗黒時代)から抜け出し、古代ローマやギリシア文化のように、人々が「生き生きとした人生」を取り戻すことがルネサンス運動の中心といえるでしょう。

ルネサンス音楽について

上記のルネサンス期に登場した音楽のことを「ルネサンス音楽」と言い、音楽史上の区分では中世音楽とバロック音楽の中間に位置しています。また、ルネサンス音楽も大まかに3つの時期に分けられます。

・初期ルネサンス(1420〜1470年)・・・ギヨーム・デュファイなどのブルゴーニュ楽派
・中期ルネサンス(1470〜1520年)・・・フランドル楽派
・後期ルネサンス(1520〜1600年)・・・ローマ楽派やヴェネツィア楽派

初期・中期ルネサンス音楽においては、当時商業都市として繁栄したブルゴーニュ楽派やフランドル楽派が主流です。その後イタリアのローマ楽派、ヴェネツィア楽派などの華やかな音楽が台頭し、バロック音楽へ移り変わります。

ルネサンス音楽の特徴や形式は?

ルネサンス音楽の大きな特徴は、フランスで発展した「音楽理論」とイギリス独自の「和音」、そしてイタリアで生まれた「甘美な旋律」の融合にあります。

これらが「ポリフォニー音楽」として一体化し、その洗練された優美な旋律は、ルネサンス音楽の主流となりました。中世時代の「声だけで歌う」声楽から、楽器を用いた演奏が広まったのもルネサンス期が始まりです。また、音楽理論の発達により、複雑な循環ミサ曲やモテットなどの宗教作品が多く作られたのも、この時代の特徴の一つと考えられています。
ルネサンス初期・中期においては、保守的なフランドル楽派やブルゴーニュ楽派が好まれました。しかしルネサンス後期では、それらに対抗するかのようにイタリアでローマ楽派とヴェネツィア楽派が登場し、ルネサンス音楽に影響を及ぼすようになります。

両楽派は、のちの音楽形式において重要な役割を果たしており、現在の協奏曲の原型を生み出したのも彼らの大きな業績です。それぞれの楽派の特徴として、次のものが挙げられます。

ローマ楽派

システィナ礼拝堂を中心に活動した音楽家たち。伴奏のない「ア・カペラ」音楽を得意とし、和声と旋律の融合を発展させる。

ヴェネツィア楽派

協奏曲の原型とされる「2つの聖歌隊と2台のオルガンによる二重合唱」を考案。巨大編成を取り入れた。

ポリフォニーが主流

ルネサンス期に主流となった「ポリフォニー音楽」について簡単に解説します。ポリフォニーとは「複数の音」を意味し、ルネサンス音楽において「複数の独立したパート(声部)で構成された音楽」のことを言います。

一方、中世時代に流行した『グレゴリオ聖歌』にみられる単一旋律の音楽は「モノフォニー」です。

時代が後になるにつれ和声の手法は洗練されましたが、やがてポリフォニー音楽は一つの大きな問題に直面することに。というのも、ポリフォニー音楽ではすべてのパート(声部)が主役であるため、音が重なりすぎると歌詞が聞き取れないという課題が発生します。

中世時代と同様に、ルネサンス音楽においても聖書を題材とした音楽が主流であり、歌詞が聞き取れないというのは大問題でした。そのため、教会側から過剰なポリフォニー音楽の作曲の禁止令も出されたほどです。

その後ルネサンス後期に器楽が発展し、歌手と伴奏で演奏される「モノディー様式」が誕生すると、ポリフォニー音楽はしだいに廃れ始め、バロック音楽へ移行します。

宗教曲と世俗曲

ルネサンス期における重要な変化の一つに、マルチン・ルターを中心とした「宗教改革」が挙げられます。これにより、キリスト教がカトリックとプロテスタントに別れたことはご存知の方も多いでしょう。宗教改革の影響により、カトリック教会は大きなダメージを受けたものの、その絶大な富と権力はルネサンス期を通じて影響力を持ち続けました。

そのため、音楽家たちの多くが教会に雇われ、カトリック教会の典礼のためのミサ曲やモテットなど、ルネサンス期には多くの宗教曲が生み出されています。

一方、宮廷のお抱え作曲家が登場したのもこの時期です。フランスではシャンソン(小歌)が流行し、イタリアではマドリガーレと呼ばれる世俗曲が流行し始め、やがて音楽は庶民も楽しめる娯楽へと変化します。

庶民も音楽を楽しむようになる

ルネサンス期における最大の発明をご存知でしょうか。一般的には「火薬」「羅針盤」「活版印刷」の3つが最大の発明と言われています。このなかでも、ルネサンス音楽においてもっとも重要な発明は活版印刷でした。活版印刷の登場により、それまで教会だけが占有していた音楽が庶民へ広がり、バロック時代には「楽しみとしての音楽」が人々に親しまれ始めます。

なお、活版印刷を用いて最初に楽譜印刷を始めたのは、中部イタリア出身のオッタヴィアノ・ペトルッチという人物です。彼が1501年に出版した『オデカトン』(「快い響きの100の音楽」)は当時大変な評判となり、その後も多くの声楽曲や器楽曲が出版されています。

楽器の発達

中世時代に引き続き、初期ルネサンス音楽の主流は声楽でした。しかし時代が進むにつれ器楽曲が流行し始めると、それに応じて楽器も進化します。例えば、トランペットなどの金管楽器や、鍵盤楽器が充実し始めたのもルネサンス期です。ルネサンス期に活躍した楽器をいくつか紹介します。

オルガン

オルガンは8世紀頃にヨーロッパに伝わったと考えられています。その後14世紀頃から器楽用に転用され、キリスト教のミサ曲やモテットで用いられたのち、バロック時代へと受け継がれます。

ヴァージナル

聞きなれない楽器だと思いますが、チェンバロの原型となった鍵盤楽器です。ヴェネツィアで誕生したヴァージナルは、チェンバロと同じく爪のようなもので弦を弾いて音を出します。チェンバロと異なり横長に引かれた弦が特徴で、16世紀のイタリアで流行しました。

ヴィオラ・ダ・ガンバ

コントラバスの起源とされる大型の弦楽器であり、その名は「脚のヴィオラ」を意味します。比較的大きな楽器ですが、大きい音は出せなかったため、宮廷などの室内楽用に用いられました。

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リュート

中世からバロック時代にかけて普及したギターのような楽器です。おもに伴奏楽器として用いられ、多くの音楽家に愛用されました。しかし音が小さいためその需要は衰退し、バロック時代の終わりと共に演奏機会は激減します。

リコーダー

意外かもしれませんが、ルネサンス期に発明された楽器にリコーダーがあります。リコーダーも、リュートと同じく音楽家に愛用され、バロック時代に全盛期を迎えています。残念ながらフルートの登場により廃れますが、この時代から使われていたのは驚きですね。

ヴァイオリン

16世紀半ばの1550年頃にヴァイオリンの原型が完成しています。しかしその歴史はさらに古く、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿にもその設計図が書かれているそうです。ガスパーロ・ダ・サロやアンドレア・アマティによって制作されたヴァイオリンが、最古のものとして現存しています。

ルネサンス期の作曲家

ルネサンス期の作曲家にはどのような人物がいたのでしょうか。ここでは、代表的人物を簡単に紹介します。

ジョン・ダンスタブル(1390〜1453年)

 

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ルネサンス初期に活躍したイングランドの作曲家です。時代が古いため、その生涯はほとんどわかっていません。しかし、イングランド特有の和声法「フォールドン」をヨーロッパ大陸へ伝え、ルネサンス期の音楽の発展に重要な役割を果たしました。

ギヨーム・デュファイ(1397〜1474年)

 

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中世の西洋音楽をルネサンス音楽に転換したブルゴーニュ楽派の作曲家。作曲家を務めるかたわら、イタリア各地の教会で司祭となり、ローマ教皇庁では歌手としても活動しています。15世紀最大の作曲家の1人に数えられており、「ルネサンスのバッハ」と称される人物です。

ヨハネス・オケゲム(1410〜1497年)

 

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フランドル楽派初期において指導的立場にあった人物です。その生涯について、詳しい事はわかっていませんが、各地の教会楽長を務め、ヨーロッパ全土で絶大な人気を獲得したと言われています。ルネサンス期特有の表情豊かな旋律と作曲技法において、多大な貢献を残しました。

ジョスカン・デ・プレ(1450〜1521年)

 

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ルネサンス中期を代表するフランスの作曲家・声楽家であり、ミサ曲、モテット、世俗曲の分野で多くの作品を残しました。あらゆる作曲技法に精通しており、その作品群は現在も多数残されています。

トマス・タリス(1505〜1585年)

 

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16世紀のイングランドで高く評価された作曲家・オルガン奏者です。ロンドンのウォルサム・アビー修道院で教会オルガニストに就任し、のちに王立礼拝堂のオルガニストを務めています。20世紀の作曲家レイフ・ヴォーン・ウィリアムズによる『トマス・タリスの主題による幻想曲』のモチーフとなった人物です。

オルランド・ディ・ラッソ(1532〜1594年)

 

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後期ルネサンス期において、もっとも人気を博したフランドル楽派の作曲家です。ルネサンス期のポリフォニー音楽を充実させたラッソは、当時の音楽界において絶大な影響力を持つ人物でした。ラテン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語に精通し、生涯で2000曲以上の作品を作曲しています。

チプリアーノ・デ・ローレ(?〜1565年)

 

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フランドル(現在のオランダ付近)に生まれ、作曲家・音楽教師として多くの業績を残した人物。16世紀に流行した音楽様式マドリガーレの発展に重要な影響を及ぼしています。また、カノン形式や半音階、全音階などの作曲技法の発展においても、多大な寄与を果たしています。

ジョン・タウランド(1563〜1626年)

 

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イングランドに生まれた作曲家・リュート奏者です。メランコリア(ゆううつ)芸術の巨匠として人気を獲得し、現代でもリュート歌曲『流れよ、我が涙』の作者として知られています。時代の流れと共にリュート作品は廃れますが、近年の古楽ブームによりその作品群は再び注目を集めています。

クラウディオ・モンテヴェルディ(1567〜1643年)

 

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ルネサンス後期からバロック初期に登場したイタリアを代表する作曲家です。代表作のオペラ『オルフェオ』は現在でも高い人気を誇り、音楽史においても重要な作品と見なされています。

ルネサンス期の代表曲3選

ルネサンス期の作品を3つ紹介します。どの作品もルネサンス期特有の優美さにあふれた名曲です。

ギヨーム・デュファイ『私の顔が青ざめているのは』

15世紀最大の作曲家と称されるギヨーム・デュファイ作曲のミサ曲です。ミサ曲らしい崇高さと、洗練された旋律が聴く人の心を癒します。

ジョスカン・デ・プレ『アヴェ・マリア』

ジョスカン・デ・プレ作曲の『アヴェ・マリア』です。ルネサンス期の音楽は、ジョスカンによって完成されたと言われています。今からおよそ500年も前の作曲家ですが、現在でも70曲以上の作品が現存しています。

クラウディオ・モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』

ルネサンス期後期からバロック音楽初期を代表する作曲家です。モンテヴェルディの登場により、音楽はより庶民にとって身近な存在となりました。

まとめ

今回はルネサンス期の音楽について解説しました。かなりマニアックな内容だと思いますが、近年、古楽器による演奏が見直されたことにより、多くの作品が録音されています。
宗教音楽や古楽器に関心のある方は、さらに深掘りしてみるのも良いかもしれません。バロック音楽や古典派の作品とはまた違った魅力に出会えると思いますよ。

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