バロック音楽とは?特徴や形式は?有名な作曲家や代表曲は?

バロック音楽の作曲家といえば、みなさんは誰を思い浮かべるでしょうか?クラシック音楽が趣味の方ならば、バッハやヘンデル、あるいはヴィヴァルディといった作曲家が挙げられるかもしれません。

たしかに彼らはこの時代を代表する作曲家ですが、活躍した国や地域はまったく異なります。さらにバッハに至っては、バロック音楽に逆行する作曲家であった事はあまり知られていません。

そこで今回は、バロック音楽の特徴や形式について、有名作曲家を紹介しながら解説します。

バロック音楽とは?

あまりクラシック音楽を聴かない方でも、「バロック」という言葉や、バッハ、ヘンデルといった名前を聞いたことがあると思います。しかし具体的にいつの時代で、何を意味するのかといったことは、覚えていらっしゃらない方が多いのではないでしょうか。

バロック音楽の時期

バロック音楽とは、17世紀初頭から18世紀中頃にかけてヨーロッパを中心に発展した音楽を意味します。厳密な時代設定は決まっていませんが、おおむね1600年頃からヨハン・セバスチャン・バッハが亡くなる1750年までを「バロック音楽」とする説が有力です。

ルネサンス期の影響により、初期のバロック音楽では声楽が主流でした。しかしその後、対位法の発展と楽器の開発が進んだことで、次第に人間の喜怒哀楽を表現する新しい音楽へと変化していきます。

また、その発展過程は国や地域により大きく異なり、イタリアではオペラや協奏曲の充実。フランスではオペラ・バレやクラヴサン作品が大流行し、ドイツではプロテスタントを基礎とした音楽が発展しました。

バロック音楽は大まかに分けて、3つの時代に分けられています。

初期バロック(1580年〜1630年)

モンテヴェルディによるオペラや通奏低音、モノディーといった新しい技法が生まれる。

中期バロック(1630年〜1680年)

ジャン=バティスト・リュリが全盛。通奏低音の技法がヨーロッパ各国に伝わる。

後期バロック(1680年〜1750年)

ヴィヴァルディやヘンデル、バッハの時代。古典主義が現れ始める。

”バロック”の意味について

そもそも、「バロック」とはどのような意味なのでしょうか。調べてみると、「バロック」の語源は「barocco」というポルトガル語に由来するそうです。その意味は「歪(ゆが)んだ真珠」(「いびつな真珠」とも)。ではなぜバロックが、「歪んだ真珠」と評されるのでしょうか。

実は「バロック」という言葉は、行き過ぎた装飾を施した当時の建築様式を批判するものとして、18世紀に登場した言葉です。

やがてその評価は当時の時代区分を表す言葉となり、それに合わせる形で「バロック音楽」と表すようになりました。

バロック音楽の特徴や形式は?

バロック音楽の特徴について解説します。中世やルネサンス期に比べ、音楽理論や楽器といった点において、目覚ましい発展をとげています。

音楽で感情を表現する

私たちにとっては「音楽で感情を表現する」のは当たり前のことかもしれません。しかしバロック以前の時代(中世やルネサンス期)では「調和」や「美しさ」が重要視され、抑揚が少なく、不協和音の使用にも制限がかけられていました。

そのような形式の脱却をはかったのが、バロック音楽の大きな特徴の一つです。なかでも対位法※はバロック音楽の発展に大きな影響を及ぼしました。

対位法の発達により、作曲家は喜怒哀楽といった人間の感情を作品に込めることに成功し、それはやがてオペラの分野で花開きます。

対位法・・・音楽理論の1つ。複数の旋律が独立性を保ちながら調和し重なり合う技法です。

絢爛豪華な作風

上述したように「バロック」という用語は、過剰な装飾を施した建築洋式を批判する言葉として誕生しました。それは中世やルネサンス期に生み出された「シンプルで美しい建築」との対比であり、その後、17世紀から18世紀までの芸術全体を表す様式として定着します。

しかし、過剰な装飾と批判された「絢爛豪華な芸術様式」こそが、まさにバロック時代を象徴する最大の特徴といっても過言ではないでしょう。

そして、派手に装飾された建築様式と同じく、音の強弱や装飾音が強調され、人間の感情がストレートに表現されるバロック音楽は、音楽史において大きな改革であったに違いありません。

通奏低音の時代

バロック音楽のもう一つの特徴として、通奏低音の確立が挙げられます。通奏低音とは、作品の最初から最後まで続く低音ベースの旋律のことです。『パッヘルベルのカノン』などを聴いていただくと分かりやすいかもしれません。

通奏低音にはバッソ・コンティヌオと呼ばれる数字が付けられており、演奏者はこの数字に合わせて即興的に和音を演奏します。今でいうとジャズの即興演奏のような技法です。

通奏低音の技法はのちの古典派時代やロマン派の時代には消え去ったため、バロック音楽時代を「通奏低音の時代」と呼ぶこともあります。

バロック時代は楽器も進化した

中世やルネサンス時代の音楽はおもに声楽が中心でした。しかしバロック音楽では、対位法の発達に伴い、器楽曲が発展したことで楽器にも変化が見られます。リコーダーが廃れ、その代わりとして横笛のフルートが登場したのもこの頃です。

また、オルガンやチェンバロなどの鍵盤楽器曲が盛んに作曲され、演奏法の違いが明確に区別され始めます。さらに、ヴィオール属(擦弦楽器の総称)にヴァイオリンが加わったこともバロック音楽の特徴と言えるでしょう。

ヴァイオリンの登場により弦楽合奏のスタイルが確立し、ヴィルトゥオーゾ(名人)といった人々が登場し始めます。

バロック音楽家たちへのリスペクト

メンデルスゾーンがバッハを再発見したことで、バロック期の作曲家や作品に再び注目が集まります。ブラームスやフランクといった作曲家が、自身の作品にバロック的技巧を施したのがその一例です。

また、ドビュッシーの『ラモー賛』やラヴェルの『クープランの墓』といった作品は、バロック時代の作曲家に倣った作品として知られています。

さらにその影響はストラヴィンスキーやプーランクといった新古典主義の作曲家にも見られ、20世紀においてもバロック音楽の影響の大きさがうかがえます。

バロック時代の有名作曲家について

ここでは、バロック時代に活躍した有名作曲家を紹介します。下記に解説する作曲家は現在でも演奏機会の多い人物ばかりですので、ぜひ参考にしてみてください。

ジュリオ・カッチーニ(1545年〜1618年)

 

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初期バロック音楽を代表するイタリアの作曲家です。独唱に合わせて楽器伴奏を演奏する「モノディ」形式を発展させた人物です。

クラウディオ・モンテヴェルディ(1567年〜1643年)

 

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オペラの第一人者と称されるイタリアの作曲家。カッチーニの教え子であり、オペラ『オルフェオ』により音楽の新たな可能性を開花させました。

ジャン=バティスト・リュリ(1632年〜1687年)

 

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フランスで活躍したイタリア出身の作曲家。バロック中期を代表する人物であり、「抒情悲劇」と呼ばれる音楽劇を確立しました。

>>ジャン=バティスト・リュリってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

ヨハン・パッヘルベル(1653年〜1706年)

 

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南ドイツのオルガン楽派を代表する作曲家・オルガン奏者です。『パッヘルベルのカノン』の作者としても有名で、多くの弟子を抱えた音楽教師でもありました。

>>ヨハン・パッヘルベルってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

アルカンジェロ・コレッリ(1653年〜1713年)

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イタリア出身の作曲家。多くのトリオ・ソナタ作品を作曲し、のちのアルビノーニやヴィヴァルディらに大きな影響を与えました。『クリスマス協奏曲』が特に有名です。

>>アルカンジェロ・コレッリってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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アレッサンドロ・スカルラッティ(1660年〜1725年)

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ナポリ楽派の創始者とされる人物。ドメニコ・スカルラッティの父でもあります。500曲以上もの室内カンタータを作曲したほか、管弦楽法の発展にも寄与しました。

>>アレッサンドロ・スカルラッティってどんな人?その生涯や性格・死因は?

フランソワ・クープラン(1668年〜1733年)

出典:[amazon]フランソワ・クープラン:2台のハープシコードのための作品集 第1集(François Couperin: Les Nations – )

フランスを代表する作曲家であり、特にクラヴサン(チェンバロ)曲集の作曲者として知られています。その演奏法がまとめられた著書『クラヴサン奏法』は後世に大きな影響を与えました。

>>フランソワ・クープランってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

トマゾ・アルビノーニ(1671年〜1750年)

出典:[amazon]Sonata VI G Minor From Sinfonie Concerti 5

イタリアの作曲家兼ヴァイオリニスト。オペラの作曲家としても人気を博しました。『アルビノーニのアダージョ』が有名ですが、これはアルビノーニの『ソナタ ト単調』を元に、後世の作曲家が編曲した作品です。

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678年〜1741年)

出典:[amazon]Vivaldi Edition

バロック後期を代表するイタリアの作曲家・ヴァイオリニスト・音楽教師。数多くの協奏曲を作曲したことで知られています。なかでも、ヴァイオリン協奏曲「四季」が有名ですが、このタイトルは本人によるものではないそうです。

>>アントニオ・ヴィヴァルディってどんな人?その生涯や性格は?

ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681年〜1767年)

 

[amazon]Sacred Music

ドイツを代表する作曲家、ヴァイオリニスト。18世紀のヨーロッパにおいて絶大な人気を獲得し、膨大な数の作品を残しました。『ヴィオラ協奏曲』や『フルート協奏曲』などは現在でも演奏機会の多い作品です。

>>ゲオルク・フィリップ・テレマンってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

ジャン=フィリップ・ラモー(1683年〜1764年)

出典:[amazon]ジャン=フィリップ・ラモー:鍵盤音楽全集 第2集

フランスの作曲家兼音楽理論家。クープランと同様にクラヴサン作品を多く手がけたほか、機能和声法と調性を理論的に体系化した人物です。抒情悲劇やオペラ=バレの分野でも人気を博しました。

>>ジャン=フィリップ・ラモーってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685年〜1750年)

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バロック時代をもっとも代表する人物。「音楽の父」と称され、バッハの死をもってバロック時代の終わりと考えられています。しかし実際には、フーガやカノンなどの作曲に没頭したため、時代に反した作曲家でもありました。

>>ヨハン・セバスティアン・バッハってどんな人?その生涯や性格は?

ドメニコ・スカルラッティ(1685年〜1757年)

出典:[amazon]D.スカルラッティ:宗教声楽作品集

アレッサンドロ・スカルラッティを父に持つバロック後期を代表する人物。鍵盤作品を多く作曲し、生涯で500曲以上ものチェンバロ作品を残しています。その作品群は現在でも演奏機会が多く、『猫のフーガ』は特に有名です。

>>ジュゼッペ・ドメニコ・スカルラッティってどんな人?その生涯や性格・死因は?

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685年〜1759年)

出典:[amazon]Handel Edition (65CD)

バッハやスカルラッティと同年に生まれたドイツの作曲家。生涯にわたり高い人気を保持し、イギリスでも人気を博しました。オラトリオ『メサイア』や管弦楽曲『水上の音楽』は現在でも人気の高い作品です。

>>ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルってどんな人?生涯や性格・死因は?

バロック時代の代表曲を紹介

およそ150年に及ぶバロック時代には多くの作曲家が登場し、さまざまな文野で傑作が生み出されました。今回はそのなかから、とくに有名な作品を6作紹介します。

ジャン=バティスト・リュリ『カドミスとエルミオーヌ』

太陽王ルイ14世の寵愛のもと、フランス宮廷舞曲やオペラ形式に大きな影響を与えたリュリ。フランス語に適したオペラを模索したリュリは「抒情悲劇」という形式において、新たな音楽劇を確立しました。

なかでもオウィディウスの『変身物語』を題材とした本作は、リュリの地位を揺るぎないものとした傑作オペラです。

ヨハン・パッヘルベル『パッヘルベルのカノン』

1690年代頃に作曲されたパッヘルベルの代表作です。しかし作曲経緯などの詳細は分かっておらず、謎の多い作品でもあります。『3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ短調』というタイトルが正式名称です。

アントニオ・ヴィヴァルディ『和声と創意のこころみ』より「四季」

1725年頃に作曲されたヴァイオリン協奏曲です。「春」「夏」「秋」「冬」の4部で構成され、各3楽章で成り立っています。演奏時間はおよそ40分程度です。各作品には「ソネット」と呼ばれる定型詩も添えられています。

ドメニコ・スカルラッティ『猫のフーガ』

膨大なチェンバロ作品を作曲したスカルラッティ。なかでも本作『猫のフーガ』は、その愛らしい主題により、もっともよく知られる作品の一つとなりました。

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル『メサイア』

イエス・キリストの生涯を描いたヘンデル唯一の宗教的オラトリオです。1742年にダブリンで行われた初演は大成功を収めました。しかし、ロンドン公演では芳しい評価を得られなかったといいます。作品中の「ハレルヤ」がとくに有名です。

ヨハン・セバスチャン・バッハ『マタイ受難曲』

多くの名曲を残したヨハン・セバスチャン・バッハ。なかでも『マタイ受難曲』は、その内容や完成度において最高傑作と言えるでしょう。本作品はバッハの死とともに忘れ去られましたが、フェリックス・メンデルスゾーンの歴史的な再演により注目を集め、没後およそ100年目にしてバッハは日の目をみることになりました。

まとめ

今回はバロック音楽について解説しました。バロックとひとくちに言っても、国や地域によりその様式はさまざまであり、多くの作曲家が活躍していたことがご理解いただけたと思います。今回の記事を参考に、奥深きバロックの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

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