ルパン三世 カリオストロの城で使われているクラシック曲を紹介・解説!

出典:[amazon]ルパン三世 カリオストロの城 オリジナル・サウンドトラックBGM集

アニメ映画「ルパン三世 カリオストロの城」でBGM・劇中曲として使用されているクラシック楽曲について、作品内容との関連性や演出効果なども含め紹介・解説しています。

(文字数の関係で、作品や各楽曲についての情報はかなり省略しています。ご了承ください)

なお、この記事では「サウンドトラック」という言葉を、「『物語の世界で登場人物たちにも聞こえる音楽』ではない、作品の視聴者にしか聞かされない音楽」という意味で使用しています。

※作品の内容に関するネタバレを含みますので、ご注意ください。

作品概要

モンキー・パンチによる漫画作品を原作とし、執筆現在(2021年)に至るまでテレビシリーズ・テレビスペシャル・映画等のかたちで新作が作り続けられている人気作品『ルパン三世』シリーズのアニメ映画第2作です。

使用楽曲と使用箇所の一覧

作曲家 曲名 使用部分 作品内での使用箇所
J.S.バッハ 管弦楽組曲第4番 BWV1069より

第4楽章 「メヌエット」

前半部分

(第1メヌエット)全て

0:26:20付近〜
J.シュトラウス2世 ワルツ「ウィーン気質」 Op.354 105-137小節

(第2ワルツ)

0:31:40付近〜
J.S.バッハ 「パストラーレ」 BWV590より第3曲 ハ短調 1-42小節 1:15:00付近〜

 

シーンごとの解説

1,J.S.バッハ作曲 管弦楽組曲第4番第4楽章「メヌエット」

使用シーン

ルパン逮捕のためやってきた銭形警部とカリオストロ伯爵の初対面シーン。伯爵は朝食を摂っており、室内では音楽が流れている。

シーン内容との関連など

ヨーロッパの王侯貴族は、それぞれに楽団を抱えていて、生活の様々な場面でBGMを生演奏させていた歴史があります。
作中でルパンも言及していますが、カリオストロ伯爵は機械技術が発達した時代において、古い様式や道具を愛し、時代遅れともとれる王侯貴族の生活スタイルを貫いています。このシーンで流れているバッハの音楽も、その一環としての伯爵の朝食のためのBGMであると考えられます。
なお、楽団による生演奏なのか、音楽再生機器によって再生されているのかは、特に描写がないので不明です。

メヌエットはフランス宮廷舞曲が元になったジャンルであり、バッハの楽曲の優雅で明るく、軽快な響きが、貴族の朝食の時間を演出するのに効果的に使われています。
また、怪盗からの犯行予告とその対策としての国際警察の介入という異常事態に動じず、自分の優雅な生活を優先させようとする伯爵の気質を表すのにも役立っているように思えます。

2,J.シュトラウス2世作曲 ワルツ「ウィーン気質」

使用シーン

伯爵の主催する舞踏会(或いはパーティ)が行われている一方で、銭形たち日本警察の面々は警備にあたっている。些細な違和感からルパン侵入の可能性を感じ取って動き出す銭形たち。

シーン内容との関連など

前述のバッハの作品と同じく、この楽曲も作中で演奏(もしくは再生)されていると思われます。

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この楽曲は、オーストリア=ハンガリー皇帝の息女とバイエルンの王子の結婚祝賀舞踏会のために作曲されました。
このシーンの舞踏会(踊っている描写がないので単なるパーティかもしれません)も、クラリスと伯爵の結婚を祝うため集まった貴人たちをもてなすためのものでしょう。
おそらく、伯爵ないしは使用人の誰かが、経緯を知ったうえで「この会にふさわしい」と考え演奏(再生)させたと考えられます。

明るい大広間で催される華やかな貴族の舞踏会の裏で、ルパン逮捕のために国外からやって来たものの伯爵から軽く扱われ、夜の屋外で夕食として立ったままカップ麺を啜る銭形たち。明るく軽やかで優雅なウィンナ・ワルツによって、その対比がより強調されています。

なお、楽曲の中でも第1ではなく第2ワルツ部分が使用されたのは、(無論「このシーンのイメージに合っているから」というシンプルな理由の可能性も高いですが)この楽曲が後に同名のオペレッタの「音楽的原作」とでもいうべきものになったからではないでしょうか。
第1ワルツのメロディ(譜例1)は、オペレッタの中でまさにタイトルである「Winer Blut (ウィーン気質),Winer Blut…」という歌詞で歌われます。つまり、第1ワルツ部分を使うと、「ウィーン」という別の地名が強調されてしまうからではないか、と筆者は考えます。

譜例1 1出典:IMSLP

3,J.S.バッハ作曲 パストラーレ  BWV590より第3曲 ハ短調

使用シーン

伯爵とクラリスの結婚式のシーン。指輪の交換をもって結婚がまさに成立しようとした時、死んだと思われていたルパンの声で式が中断される。

シーン内容との関連など

オルガンで奏でられる荘厳で厳粛な楽曲の響きが、古いしきたりに則った王侯貴族同士の結婚式という場面を演出しています。
それと同時に、4曲からなる「パストラーレ」のなかで唯一の短調であり、明るくのどかな曲調の他3曲のなかにあってひときわ厳かなこの曲が、結婚を喜び祝う人々のなか、1人望まぬ結婚を迎えるクラリスの悲壮な内心を表すようにも聴こえます。

なお、他の2曲は作中において生演奏されているのか再生機器が使われているのか不明ですが、この曲はルパンの登場と同時にぴたりと音が止まることから、その場でオルガニストによって演奏されている設定であることがわかります。

まとめ

この映画におけるクラシック楽曲は、すべて映画のサウンドトラックとして、というよりも、作中で演奏ないしは再生されているもの(その延長としてのサウンドトラック)と思われます。
文明の発達した世界において、古風なヨーロッパ貴族の生活を続けるカリオストロ伯爵の気質や趣味と、そんな彼の世界である「カリオストロの城」という映画の舞台、そして各シーンの登場人物の心情を演出するのに実に効果的に使われている、といえるでしょう。

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