近代音楽とは?特徴や形式は?有名作曲家や代表曲は?

19世紀に全盛期を迎えたロマン派音楽。ブラームス、ワーグナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウス、ブルックナーなどの優れた音楽家が登場し、クラシック音楽はある種の頂点に達しました。しかし20世紀を迎えると、ロマン派の音楽を乗り越えるべく、世界各国でさまざまな音楽形式が誕生します。

ドビュッシーをはじめとした印象主義音楽や、バルトークやコダーイなどの国民学派がその例です。彼らが活躍した時代は、一般に「近代音楽」に分類されていますが、「近代音楽」とはどのような音楽を意味するのでしょうか。そこで今回は、近代音楽の特徴や代表的作曲家を解説します。

近代音楽とは?

19世紀に全盛を極めたロマン派音楽は、20世紀の到来とともに終わりを迎えます。その後、欧米各国では独自の音楽様式が生まれ、20世紀のクラシック音楽界を華やかに彩りました。

近代音楽の時代区分について

近代音楽の時代区分には諸説あるものの、第1次世界大戦の始まりと同時期とする説が一般的です。また「近代音楽」と「現代音楽」の境目もあいまいですが、音楽史においては、第2次世界大戦以前の音楽を「近代音楽」、それ以降の音楽を「現代音楽」と呼ぶのが通例とされています。

ロマン派への反発から生まれる

ではなぜロマン派音楽は終わりを迎え、新しい試みが登場したのでしょうか。その答えとして考えられるのが、ロマン派音楽が持つ過剰な「叙情性」にあります。古典派音楽から発展し、「人間の感情を存分に表現する」音楽として発展したロマン派音楽。

しかし彼らの音楽は、その性質上、あまりにも個人的すぎるものでもありました。
そして作曲家の強い個性は、ときに聴く人の心に「押し付けがましさ」という感情を引き起こします。「お腹いっぱい状態」というわけです。

そうした状態にいち早く気がついたのが、フランスの作曲家クロード・ドビュッシーでした。そのため、近代音楽はドビュッシーから始まったと言われています。彼はそれまで重きが置かれていた主観を排除し、眼の前の現象や、繊細な雰囲気を客観的に捉える表現方法を生み出します。それが印象主義という方法です。

印象主義の登場をきっかけとして、20世紀の作曲家たちは形式や伝統にとらわれることをやめ、それぞれ独自の表現方法を生み出すようになりました。

近代音楽の特徴は?

近代音楽にはどのような特徴があるのでしょうか。以下ではその特徴について2つ解説します。

欧米各国で独自の音楽様式が盛んに

ロマン派音楽が終焉を迎えると、国民楽派や新古典派、社会主義リアリズムといったさまざまな音楽様式が登場します。なかでも、ロシアや北欧、東欧やスペインなどでは、自国の民謡や伝承を作品の題材とした国民音楽が盛んとなり、フィンランドのシベリウス、ハンガリーではバルトークコダーイ、スペインではファリャといった優れた民族音楽家が登場しました。

またフランスではフランシス・プーランクダリウス・ミヨーを中心とした「フランス六人組」が結成され、同時代の流行を吸収しながら新しい音楽の道を模索しています。

十二音技法が新たな時代を切り開く

近代音楽をもっとも特徴づけるものとして、無調音楽、そして十二音技法があげられます。シェーンベルクが確立した十二音技法は、ロマン派音楽の行き詰まりを脱却し、新しい表現方法を模索したものでした。

そしてその技法は、弟子のアルバン・ベルクやヴェーベルンに引き継がれ、新ウィーン楽派として花開きます。調性を崩した音楽は、当時の人々にとってあまりに斬新であると同時に、受け入れにくいものでもありました。

しかしその技法は、いわゆる現代音楽と呼ばれる作曲家たちに多大な影響を与え、ブーレーズや後期ストラヴィンスキーなどによっても取り入れられています。感情が飽和したロマン派音楽を、理論によって乗り越える試みが、十二音技法という新たな可能性を生み出したと考えられます。

近代音楽を代表する作曲家・代表曲

近代音楽の作曲家にはどのような人物がいるのでしょうか。以下では各国の代表的作曲家を紹介します。

クロード・ドビュッシー(1862〜1918年)

19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したフランスの作曲家です。ロマン派音楽からの脱却は、ドビュッシーから始まったといっても良いかもしれません。彼の印象主義的手法は(本人はそう呼ばれることを嫌っていましたが)、後代の作曲家たちに絶大な影響を与えました。

フランシス・プーランク(1899〜1963年)

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「フランス六人組」の中核をなす人物です。歌曲、ピアノ曲、協奏曲などの幅広い分野を手がけ、その高い精神性により、現在も多くの聴衆を魅了しています。また近年では、宗教音楽にも関心が高まりつつあり、『カルメル会修道女の対話』や『人間の声』などの作品が再演出により上演されています。

イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971年)

『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』などのバレエ音楽の作者であり、新古典主義を提唱した20世紀を代表する作曲家の一人です。生涯でさまざまな技法に転換したため、「カメレオン」と揶揄されることもあったそうです。1959年に初来日し、武満徹の才能を見出したことでも知られています。

セルゲイ・プロコフィエフ(1891〜1953年)

20世紀ロシアにおける最大の作曲家の一人です。9歳でオペラ『巨人』を作曲し、幼い頃から天才的な才能を発揮したプロコフィエフは、オペラや協奏曲など、さまざまな形式において優れた作品を残しました。なかでも音楽物語『ピーターと狼』は、教育音楽として現在も演奏機会の多い作品です。

ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906〜1975年)

プロコフィエフと並び、20世紀における重要な作曲家であり、マーラー以降、最大の交響曲作曲家として評価されています。サンクトペテルブルク音楽院ではグラズノフに師事し、1925年に開催された第1回ショパン国際ピアノコンクールにも出場を果たしました。プロコフィエフと同様、現在でも根強い人気のある作曲家です。

アラム・ハチャトゥリアン(1903〜1978年)

組曲『剣の舞』で知られるロシアの作曲家です。作曲家以外にも、指揮者や映画音楽なども手がけています。民族的要素を積極的に取り入れた作風により、社会主義的リアリズムの代表的人物として絶大な人気を獲得しました。バレエ『ガイーヌ』や『スパルタクス』は現在も上演機会の多い作品として人気を博しています

アルノルト・シェーンベルク(1874〜1951年)

新ウィーン楽派を代表する人物です。ロマン派音楽まで続いた調性を乗り越え、無調、そして十二音技法という新しい作曲技法を生み出しました。そして十二音技法は現代音楽へと引き継がれ、新たな試みの原動力となりました。

アルバン・ベルク(1885〜1935年)

シェーンベルクに師事した、新ウィーン楽派の中心人物です。十二音技法の中に調性を取り入れた独自の表現方法を模索しました。その作品はナチス・ドイツにより「退廃音楽」のレッテルが貼られますが、戦後のクラシック音楽の発展に重要な役割を果たしています。

アントン・ヴェーベルン

上記の二人と同じく、新ウィーン楽派を代表する作曲家、音楽学者です。作品数が少なく、生前は演奏される機会も少ない作曲家でしたが、その前衛的作風は戦後の作曲家たちに大きな影響を与えました。

ベーラ・バルトーク(1881〜1945年)

20世紀を代表するハンガリーの作曲家・ピアニストです。同郷のコダーイと共にハンガリーの民謡収集に尽力し、民族音楽学者としても大きな功績を残しました。晩年は戦争の惨禍を逃れるためにアメリカへわたり、音楽教師として優れた音楽家を育てています。

グスターヴ・ホルスト(1874〜1934年)

イギリスを代表する作曲家です。ホルストの組曲『惑星』は、多くの人が一度は聴いたことがある作品だと思います。『惑星』ばかりが有名ですが、他にも合唱曲や吹奏楽曲においても多くの優れた作品を残しました。また、イングランド各地の民謡や、東洋的テーマを主題として取り上げたことでも知られています。

マヌエル・ド・ファリャ(1876〜1946年)

『三角帽子』や『クラヴサン協奏曲』などで知られる、スペインの作曲家です。民族主義的音楽と印象主義を融合させ、新たな地平を切り開きました。
また、20世紀に「クラヴサン」(チェンバロ)を復活させた立役者でもあります。スペイン舞曲をモチーフとした情熱的なメロディーが魅力です。

近代音楽についてのまとめ

今回は近代音楽について紹介しました。一口に近代音楽といっても、その表現方法は国によりさまざまです。ある意味、クラシック音楽の多様化こそが、近代音楽最大の特徴と言えるかもしれません。

また、20世紀は多くの個性豊かな音楽家が登場した時代でもありました。
近代音楽をあまり聴いたことがない方も、この記事を機会に、いろいろな作品に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

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