ロマン派音楽とは?特徴や形式は?有名作曲家や代表曲は?

西洋音楽史上もっとも華やかな時代を築いたロマン派音楽。シューベルトやショパン、リストなどの名前は、普段クラシック音楽を聴かない方でも、一度は聞いたことのある名前だと思います。一方で、「ロマン派の音楽」について尋ねられると、その定義が曖昧な方も多いのも事実です。そこでこの記事では、ロマン派の音楽について広くわかりやすく解説します。

ロマン派音楽の時代

ロマン派音楽の時代は、一般に楽聖ベートーヴェンがこの世を去った1820年から1850年代に全盛期を迎え、1900年頃までの期間を指します。音楽史上では古典派音楽と近代音楽の間の時代です。

ただし、ウェーバーなどの作曲家もロマン派に属することを考慮すると、1800年からという見方もあります。日本では、葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵が人気を博し、ペリー来航や明治維新があった激動の時代ですね。

「理性」や「形式美」を重視した古典派の時代から、「自由」や「個性」、「想像力」を全面に押し出したのがロマン派音楽です。また、それまで貴族のものだった音楽が、より市民的なものとなったのもロマン派の時代でした。「ロマン」と聞くと、「ロマンチックな音楽」と考えがちですが、古典派の音楽と比べて「より民衆的」で「より個性的」な音楽がロマン派音楽であると覚えておいてください。

ロマン派音楽の時代区分には厳密な分類はありませんが、大まかに分けて3つの時期に分けられます。以下では3つの時代について簡単に紹介します。

初期ロマン派

1800年から1830年代。ウェーバーやシューベルトが登場し、民族詩への曲付けやピアノ伴奏歌曲が全盛期となる。シューベルトがドイツ・リートを確立する。

盛期ロマン派

1830年代から1850年代。ベルリオーズ、メンデルスゾーン、ショパン、リストが活躍した時期。ドイツのロマンティック・オペラが流行し、ベルリオーズによる標題音楽が物議をかもす。ワーグナーが「楽劇」という新たな概念を打ち出す。

後期ロマン派

1850年代から1890年代(1900年代も含む)。ブラームスやマーラー、ブルックナー、リヒャルト・シュトラウスが全盛。印象主義音楽や、無調音楽などが登場し始める。

ロマン派音楽の特徴について

では、ロマン派の音楽にはどのような特徴があるのでしょうか。以下ではロマン派のおもな特徴を解説します。

理性よりも本能

古典派の時代は、啓蒙思想の影響により、ソナタ形式やロンド形式などのさまざまな「形式」が確立した時代でした。つまり古典派時代は、「様式美の時代」と言えます。
一方、ロマン派はそうした堅苦しい「形式」から脱却し、理性より本能を、頭脳より心を、形式より想像力を重視したのが大きな特徴です。作曲家が「愛」や「悲しみ」、「喜び」といった感情をストレートに表現し始めたのもロマン派の時代からです。

ここで注意しなければならないのは、ロマン派以前の音楽、例えばバッハやモーツァルトやベートーヴェンが、音楽に感情を込めなかったというわけではないという事です。彼らもロマン派の作曲家と同様に、作品に情熱を注ぎましたが、その表現方法はあくまでも形式に則ったものでした。

標題音楽の確立と交響詩

ロマン派時代の大きな特徴として、エクトル・ベルリオーズが採用した「標題音楽の確立」が挙げられます。標題音楽とは、文学や哲学、絵画など音楽以外のジャンルから題材を得た作品の事です。

簡単にいうと「作品にタイトルがついている」という事です。作品にタイトルを付ける事で、表現したい内容を伝えやすくしたわけです。現在の私たちからすると当たり前のように思えますが、当時の音楽界では大きな物議となりました。

標題音楽の反対に位置するのが、音楽のための音楽を目指した「絶対音楽」です。この対立はやがてワーグナー派(標題音楽)とブラームス派(絶対音楽)に分かれ、大論争を巻き起こします。

また、音楽を詩に見立てて表現する「交響詩」が生まれたのもロマン派の時代からです。交響詩は交響曲のような特定の形式を持たず、リストを筆頭に多くの作曲家が優れた作品を生み出しました。

ヴィルトゥオーゾが登場

ヴィルトゥオーゾと呼ばれる「超絶技巧の持ち主」が登場したのもこの時代です。ヴァイオリンのニコロ・パガニーニや、「ピアノの魔術師」と呼ばれたフランツ・リストがその代表的人物であり、ヴィルトゥオーゾとして絶大な人気を獲得しました。また、演奏家によるリサイタルが隆盛したのもロマン派時代だと言われています。ちなみに「リサイタル」という言葉を最初に使ったのはフランツ・リストです。

ロマン派を代表する作曲家たち

ここまでロマン派音楽について解説してきました。音楽史上もっとも華やかな時代ともいえるロマン派の音楽家には、どのような人物がいるのでしょうか。以下では、その代表的人物について、作品を交えながら紹介します。

カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786〜1826年)

出典:[amazon]ウェーバー:クラリネット協奏曲全集

少し時代は遡りますが、ロマン派初期を代表する人物にウェーバーがいます。モーツァルトが築いたドイツ・オペラの伝統を引き継ぎ、ドイツ・ロマン派のオペラ様式を完成させた人物です。オペラ『魔弾の射手』や『オベロン』、『舞踏への勧誘』などの作品で知られています。ウェーバーのオペラ様式は、後代のワーグナーへと引き継がれました。また、当時最高のピアニストと称され、演奏家としても活躍しました。

魔弾の射手

全3幕からなるドイツ・オペラです。1821年に初演され、大成功を収めました。ワーグナーやベルリオーズなどの作曲家に多大な影響を与えた事でも知られています。『魔弾の射手』序曲単体でも演奏機会の多い作品です。

>>カール・マリア・フォン・ウェーバーってどんな人?その生涯や性格は?結婚は?

フランツ・シューベルト(1797〜1828年)

出典:[amazon]シューベルト:交響曲全集

ドイツ・リートを完成させた人物です。幼少の頃から楽才を示し、ピアノソナタ、歌曲、交響曲など数多くの傑作を生み出しました。「歌曲王」と呼ばれており、代表作に『鱒』や『アヴェ・マリア』『魔王』などがあります。生前中はあまり評価されませんでしたが、のちのロマン派音楽に重要な影響を及ぼしました。

未完成交響曲

1822年に作曲されたシューベルトの代表作です。ベートーヴェンの『運命』やドヴォルザークの『新世界』とともに3大交響曲の1つに数えられています。生前は演奏されませんでしたが、1865年の初演では大成功となりました。未完成となった理由は、いまだに解明されていません。

>>フランツ・シューベルトってどんな人?その生涯や性格は?

エクトル・ベルリオーズ(1803〜1869年)

出典:[amazon]The Best of Berlioz (Remastered)

フランスを代表するロマン派の作曲家・評論家・指揮者です。「標題音楽」という新しい分野を打ち出した、重要人物でもあります。また、著名な音楽評論家でもあり、『イタリアのハロルド』といった論文も多数残しています。色彩豊かな管弦楽や大規模な楽器編成が特徴です。

幻想交響曲

1830年に発表されたベルリオーズ最初の交響曲であり、彼をもっとも代表する作品です。ベルリオーズ自身の失恋体験を赤裸々に描いた標題音楽と言われています。全5楽章で構成され、各楽章に標題がつけられています。特に第5楽章の「魔女の夜宴の夢」(ワルプルギスの夜の夢)が有名です。作中では、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が印象的に用いられています。

>>エクトル・ベルリオーズってどんな人?その生涯や性格は?

フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1856年)

出典:[amazon]メンデルスゾーン:無言歌集(全曲)、他

ドイツの文豪ゲーテが「モーツァルト以上の天才」と称した天才作曲家です。ピアノ小品集『無言歌集』や、オペラ『夏の夜の夢』などの作品で知られています。作曲家・演奏家として活躍したほか、バッハの『マタイ受難曲』の演奏で成功を収め、バッハが再び注目されるきっかけを作りました。

ヴァイオリン協奏曲

1844年に作曲されたメンデルスゾーンの代表作です。ベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン協奏曲とともに、3大ヴァイオリン協奏曲の一つとして現在も高い人気を誇っています。ロマン派らしい繊細で抒情溢れる旋律が魅力の1曲です。

>>フェリックス・メンデルスゾーンってどんな人?その生涯や性格は?

ロベルト・シューマン(1810〜1856年)

出典:[amazon]Schumann: Complete Piano Works

中期ロマン派における中心的役割を果たした人物です。また、ブラームスの師でもあります。病により演奏家の道は絶たれましたが、作曲家・評論家として多くの優れた作品を残しました。標題音楽にも理解を示し、自らも標題付き作品を手がけています。

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トロイメライ

シューマンの作品でもっとも有名な作品といえば『トロイメライ』でしょう。トロイメライとはドイツ語で「夢」を意味します。ピアノ小品集『子供の情景』に収められており、ピアノ学習者が必ず練習する1曲と言っても過言ではないでしょう。

>>ロベルト・シューマンってどんな人?その生涯や性格は?

フレデリック・ショパン(1810〜1849年)

出典:[amazon]ショパンー200年の肖像(CD)

ポーランドに生まれ、フランスで活躍した作曲家・ピアニストです。「ピアノの詩人」と称され、数々の名曲を作曲しました。その優雅にして甘美な旋律は、現在もなお衰える事なく人々の心に響き渡ります。ショパンの作品には『別れの曲』や『革命のエチュード』などの標題が付けられていますが、これらはショパンによるものではなく、大部分が知人や弟子たちによるものです。ショパン本人は、作品にタイトルを付けるのを好まなかったと言われています。

幻想即興曲

ショパンの有名作品は数多くありますが、今回は『幻想即興曲』を紹介します。ショパンは生涯で4曲の即興曲を作曲しており、本作は最初の即興曲として作曲されました。ショパンの死後に出版され、その際に『幻想即興曲』の名が付けられました。

>>フレデリック・フランソワ・ショパンってどんな人?その生涯や性格は?

フランツ・リスト(1811〜1886年)

出典:[amazon]愛の夢~リスト:ピアノ名曲集

ハンガリー出身の作曲家・ピアニスト・指揮者です。ヴィルトゥオーゾとして絶大な人気を獲得しました。あまりのピアノテクニックにより、「ピアノの魔術師」としても知られています。また、作曲の分野では「交響詩」という新しいジャンルを生み出し、後世の音楽に大きな影響を及ぼしています。ショパンとも友人関係にありました。

ラ・カンパネラ

リストの作品も名曲揃いですが、もっとも知られているのはピアノ曲『ラ・カンパネラ』です。「鐘」を意味する本作は、リストが敬愛したヴァイオリニスト、パガニーニの主題を用いて作曲されました。演奏には超絶技巧を要しますが、ピアノ学習者にとっては憧れの1曲と言えるでしょう。

>>フランツ・リストってどんな人?その生涯や性格は?

リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883年)

出典:[amazon]リヒャルト・ワーグナー:オペラ名曲集(Wagner: Transcribed For Solo Piano)

ドイツ・オペラを飛躍的に進歩させ、「楽劇」という新しいオペラ様式を完成させた人物です。ワーグナーの影響は音楽界にとどまらず、19世紀後半のヨーロッパ文化における中心人物としても活躍しました。「バイロイト音楽祭」を主催した人物としても知られています。

ニュルンベルクのマイスタージンガー

16世紀のニュルンベルクを舞台としたワーグナーの代表作の1つです。ワーグナー自らが台本を手がけ、1868年にハンス・フォン・ビューローの指揮により初演されました。全3幕で構成され、演奏時間はなんと4時間半にも及びます。

>>リヒャルト・ワーグナーってどんな人?その生涯と性格は?

アントン・ブルックナー(1824〜1896年)

出典:[amazon]The Best of Bruckner (Remastered)

後期ロマン派の代表的作曲家・オルガン奏者です。ベートーヴェンやシューベルトの作曲技法を受け継ぎ、管弦楽や和声においてはワーグナーの強い影響がみられます。9つの交響曲を作曲しており、とくにその手法においてはグスタフ・マーラーに多大な影響を及ぼしました。

交響曲第4番

ブルックナーの交響曲のなかでも、もっとも親しまれている作品であり「ロマンティック」という副題でも知られています。ブルックナーの交響曲はとっつきにくいイメージがありますので、最初は本作から聴くことをお勧めします。

>>アントン・ブルックナーってどんな人?その生涯や性格は?

ヨハネス・ブラームス(1833〜1896年)

出典:[amzon]ブラームス:交響曲全集

ドイツの作曲家・ピアニスト・指揮者です。バッハ、ベートーヴェンと並び頭文字の「B」をとって「ドイツ3B」の1人に数えられています。ロマン派的側面を持つ一方で、ベートーヴェンから続く古典主義的伝統を受け継いだ人物でもあります。あまり知られていませんが、ブラームスは人類初のレコード録音をした人物です。

交響曲第1番

指揮者ハンス・フォン・ビューローから「ベートーヴェンの第10交響曲である」と賞賛されたブラームスの代表作です。本作は作曲に20年を要しています。重厚な構成力と荘厳さは、ブラームスの真骨頂と言えるでしょう。

>>ヨハネス・ブラームスってどんな人?その生涯や性格は?

カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921年)

出典:[amazon]カミーユ・サン=サーンス/CAMILLE SAINT-SAËNS

19世紀のフランスを代表する作曲家・ピアニスト・指揮者・教育者です。幼少から天才的才能を発揮し「モーツァルトの再来」と称されました。ロマン派時代に生きたサン=サーンスですが、彼自身は古典派的伝統を自称しており、20世紀の印象主義音楽には懐疑的な態度を示しています。ガブリエル・フォーレなど、優れた音楽家を輩出しました。

動物の謝肉祭

管弦楽から交響曲、オペラなど幅広い分野に優れた作品を残したサン=サーンス。その中でも、もっとも広く知られているのが『動物の謝肉祭』です。作品内の「水族館」や「白鳥」などは、一度は聴いたことのある作品だと思います。

>>カミーユ・サン=サーンスってどんな人?その生涯や性格。逸話は?

グスタフ・マーラー(1860〜1911年)

オーストリア出身の作曲家・指揮者です。大規模な交響曲を手がけ、数多くの名曲を残しました。また、指揮者としてもその貢献度は高く、指揮法においても後世に大きな影響を及ぼしました。

交響曲第1番「巨人」

1884年から1888年にかけて作曲されたマーラー最初の交響曲です。作曲当初は交響詩として構想されましたが、1896年の改訂後は交響曲として発表されました。なお、マーラー自身は「巨人」の副題を削除したものの、現在でもこの副題で呼ばれるのが一般的です。

リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949年)

出典:[amazon]R.シュトラウス:交響詩《英雄の生涯》、交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》

後期ロマン派を代表する作曲家です。事実上、最後のロマン派の作曲家と言えるかもしれません。ワーグナーやリストに強い影響を受け、優れた交響詩を残しました。「シュトラウス」というと、ヨハン・シュトラウスの名が思い起こされますが、シュトラウス一族とは無関係です。

交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」

ドイツの哲学者ニーチェによる同名の物語を元に作曲された交響詩です。冒頭部分は、映画『2001年宇宙の旅』でも使用されており、リヒャルト・シュトラウスの作品でも広く知られています。9つの作品で構成されており、各章にタイトルが付けられています。

>>リヒャルト・シュトラウスってどんな人?その生涯や性格は?

まとめ

今回はロマン派の特徴や有名作曲家について解説しました。ロマン派時代は西洋音楽史上もっとも華やかな時期であり、多くの有名作曲家が登場しています。バロック音楽や古典派の作品と比べて、より自由で作曲家の個性が豊かに表現されているのがロマン派の特徴です。この記事を機会に、あらためて作品を聴き比べてみてはいかがでしょうか。

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