バルトーク・ベーラ「管弦楽のための協奏曲」「ハンガリーの風景」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]ベーラ・バルトーク:作品によるヴィオラ編曲集

「管弦楽のための協奏曲」とは

バルトークが亡くなる2年前の1943年に作曲された、最晩年の作品です。この時期、バルトークは白血病に苦しんでいましたが、その中で作曲された最高傑作の1つとされています。ボストン交響楽団の音楽監督であり、世界的指揮者であったクーセヴィツキーの依頼で、音楽監督就任20周年を祝う作品として作曲されました。

当時のバルトークは、白血病で病床に伏していたことと収入の面で困窮していたことが重なり、作曲する意欲も失い、うつ状態だったそうです。クーセヴィツキーがバルトークに作曲を依頼した理由は、そんな状況にあるバルトークを救うためだったと言われています。

依頼された当初、バルトークは「作曲できるかわからない」と難色を示したそうですが、それに対してクーセヴィツキーは「作品の完成に期限はないよ」と励ましたそうです。クーセヴィツキーの温かい提案に作曲の意欲を取り戻したバルトークは、目の色を変えて作曲を開始し、わずか2ヶ月でこの作品を完成させました。

初演が行われた際、医師が引き止めるのも聞かずにボストンまで足を運んだバルトークは、リハーサルにも参加し演奏について指示を出したそうです。

楽器・楽曲編成は?

5楽章で構成されています。タイトルに「協奏曲」とある通り、管弦楽の各パートが独奏楽器のように構成されており、室内楽とオーケストラのアンサンブルのような作風が特徴です。

第1楽章・・・序奏がついたソナタ形式です。
第2楽章・・・第2楽章全体で3部構成となっています。
第3楽章・・・エレジー(悲歌)で、アーチ形式(A-B-C-B-A)が取られています。
第4楽章・・・中断された間奏曲というタイトルで、「A-B-A-中断-B-A」の構成です。
第5楽章・・・フィナーレで、ソナタ(ロンドソナタ)形式です

聴きどころは?

冒頭部分は重厚な序奏で始まり、テーマに入るとめくるめく音楽が展開していくところが魅力です。フィナーレでは、激しいメロディーの上下と、オーケストラ全体が1つになり爆発的に終わるところも迫力があります。

一度聴いただけでは作品の展開に心が追いつかないかもしれません。そういう意味で、何度も聴いてみたくなる作品です。余談ですが、この作品は指揮法上かなり難しい部類に入るそうで、指揮者の力量を試す試金石とされているそうです。

「ハンガリーの風景」とは

「ハンガリーの風景」は1931年に作曲された、管弦楽組曲です。バルトーク自身がピアノ曲から5曲を選び、管弦楽曲に編曲しました。別名「ハンガリーの5つのスケッチ」とも呼ばれています。1932年にブダペストにて、マッシモ・フレッチャーの指揮で初演されました。作曲家であること以上にピアニストとして有名だったバルトークが、演奏会で人気のある曲を選んで作曲したといわれています。5曲のタイトルは、民謡などからインスピレーションを受けてつけられたものが多いのが特徴です。演奏時間は全体で10分程度で、短い組曲となっています。

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楽器・楽曲編成は?

5曲で編成された組曲です。それぞれのタイトルや構成は以下の通りです。

第1組曲 トランシルバニアの夕べ

「セークレルの夕べ」という別名でも親しまれています。バルトーク自身が作曲した「10のやさしい小品」から抜粋され編曲されました。バルトークらしい民族的な優しいメロディーがまさに「夕べ」を連想させます。

第2組曲 熊踊り

第1組曲と同じく「10のやさしい小品」から組曲用に編曲されました。ティンパニやテューバのリズムが熊の歩く足音を表現していて、聴いていて楽しくなる作品です。木管楽器が踊りのメロディーを奏でます。

第3組曲 メロディ

「4つの挽歌(ばんか)」というピアノ作品の中から抜粋されて作曲されました。「4つの挽歌」はバルトークが熱心に民謡や民族音楽を収集していた頃に作曲されたこともあり、より民族性の濃い作品となっています。視覚的で色鮮やかな作品です。

第4組曲 ほろ酔い

「3つのブルレスク」の第2曲目から抜粋されました。原曲のピアノ曲は複雑な和音が展開され、酒によった足のふらつきが見事に再現されています。旋律の不安定さが、酒で目が回るようすを表現しています。

第5組曲 豚飼いの踊り

「ミクロ・コスモス」などの教育的練習曲を残したバルトークですが、こちらの作品は、「子供のために」という作品集の最後の曲から編曲されました。とても牧歌的な作品で、草原で踊るようすが目に浮かぶ作品です。複雑な音楽的展開はなく、純粋な舞曲として描かれています。

聴きどころは?

すべての組曲が短く構成され、変化に富んでいるので聴く人を飽きさせません。それぞれのテーマを思い浮かべながら聞くと、よりいっそうこの作品が視覚的になります。とくに第2組曲の「熊踊り」は迫力のある構成となっていて、熊の動作や滑稽さがバルトークらしい巧みな技巧で表現されています。第3組曲の「メロディ」は夜明け前のような旋律が聞く人の心を掴みます。

まとめ

今回はバルトークの「管弦楽のための協奏曲」と「ハンガリーの風景」をご紹介しました。
どちらもバルトークらしい迫力と緻密に計算された構成力が楽しめる名作です。初めて聴いた方は、クラシック音楽の印象がガラリと変わるかもしれません。バルトークの作品には、他にもたくさん名曲がありますので、ぜひご自身のお気に入り作品を見つけてみてください。

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