バルトーク・ベーラ「ルーマニア民族舞曲」「カンタータ・プロファーナ」の解説と分析。ヴァイオリンやピアノ、フルートの場合の難易度は?

出典:[amazon]ベーラ・バルトーク:作品によるヴィオラ編曲集

バルトーク・ベーラ(以下バルトーク)は、20世紀の東欧を代表する作曲家です。友人の作曲家コダーイらとともに、民族音楽の収集に生涯を捧げ、クラシック音楽の可能性を大きく広げた人物です。また、ピアニストや教育者としても活躍し、後進の育成に多大な影響を残しました。晩年はアメリカへ渡りコロンビア大学の客員教授に就任し、音楽研究に務めました。今回はバルトークの民族性と音楽性が豊かに表現された2作品をご紹介します。

「ルーマニア民族舞曲」とは

「ルーマニア民族舞曲」は、1915年、バルトークが34歳のころに作曲された作品です。この時期のバルトークは「ルーマニア音楽の年」と呼ばれ、他にもルーマニアの民族音楽を題材にした作品として「ソナチネ」や「ルーマニアのクリスマの歌」を作曲しました
「ルーマニア民族舞曲」はバルトークの作品のなかでも演奏機会の多い作品で、6つのピアノ曲からなる組曲となっています。

発表された当初は、「トランシルヴァニアのルーマニア民族舞曲」というタイトルがつけられていましたが、第一次世界大戦でハンガリーが敗戦した影響で、地域名である「トランシルヴァニア」がカットされました。初演は1920年、当時ハンガリー領だったコロジュヴァール(現ルーマニア領)で演奏され、作品は民族音楽の収集に関わったイオン・ブシツィアに献呈されました。6曲編成で、演奏時間は4分程度のとても短い作品です。のちに、管弦楽曲に編曲され、ヴァイオリンやチェロ独奏用にも編曲されました。

楽曲構成は?

6曲の構成は次の通りです。

1・棒踊り・・・4分の2拍子。「棒を使って戦っている姿」を表現しています。
2・帯踊り・・・4分の2拍子。トロンタール県に伝わる舞踊曲がモチーフになっています。
3・踏み踊り・・・4分の2拍子。小刻みに繰り返されるメロディーが特徴的です。
4・角笛の踊り・・・4分の3拍子。トランシルヴァニア地方の舞踏曲が元にされました。
5・ルーマニア風ポルカ・・・4分の2拍子。ボヘミア地方の舞曲がモデルです。
6・速い踊り・・・4分の2拍子で、ビハール県で集めた2つの舞曲を参考に作曲されました

いくつか抜粋されて演奏されたり、コンクール課題曲としても頻繁に選ばれる作品です。

難易度は?

ピアノ曲としてだけでなく、ヴァイオリンやフルート、チェロなどさまざまな楽器に編曲されている人気作品です。どの楽器で演奏するにしても、中級程度の技術力が必要とされます。短い作品ながら6曲で編成されているので、それぞれの曲が持つ持ち味を存分に表現するには、かなりの技術力が必要とされるでしょう。

「カンタータ・プロファーナ」とは

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「カンタータ・プロファーナ」は、1930年にテノール・バリトン独唱、混声合唱及び管弦楽曲のために作曲された作品です。初演は1934年、エイルマー・ビュスト指揮のBBC交響楽団によって演奏されました。カンタータとは、17世紀後半にイタリアで流行した「声楽のための器楽伴奏付き」の声楽作品のことで、18世紀のドイツではコラール付きの教会カンタータとして発展しました。

「カンタータ・プロファーナ」は、ルーマニアやハンガリーに伝わる叙事詩を元に作曲され、作品中の歌詞はバルトーク自身によって作詞されました。また、「9頭の不思議な雄鹿(おじか)」という別タイトルが添えられています。

簡単なあらすじは次の通りです。

「ある老猟師に9人の子供がいました。老猟師は9人の子供たちに狩の方法だけを教え込み育てました。ある日、9人の子供が狩に出かけると、鹿の足跡を発見します。その鹿の足跡を追いかけて魔法の橋を渡ると、9人の子供たちは鹿に変わってしまいました。

一方、狩に行ったまま帰ってこない子供たちを心配した老猟師は、子供たちを探しにでかけます。老猟師は、同じく魔法の橋にいくと9頭の雄鹿に遭遇し、鹿を狩ろうとしますが・・・」

この物語が採用された背景には、当時のハンガリーの指導者であったミクローシュ・ホルティの独裁政治への抗議が込められていると言われています。20世紀後半を代表するハンガリー出身の指揮者、ゲオルグ・ショルティはこの作品の内容について「民族性や政治情勢のために祖国に帰れないバルトーク自身と重ね合わせているのではないか」と論じています。

楽曲編成は?

楽曲編成は3つのパートで構成されていますが、途切れることなく1つの作品として繋がっています。それぞれのパートは次の通りです。

1・「あるところに老いた父がおりました」 モルト・モデラート
2・「ああ、彼らの愛する父は」 アンダンテ
3・「あるところに老いた父がおりました」 モデラート

難易度は?

バルトークの音楽的技巧があますことなく発揮されている作品で、技巧的にかなりの難曲とされています。演奏時間は20分弱と短い作品ですが、バルトークの感性と民族音楽に対する分析が作品全体に表現されています。

まとめ

今回はバルトークの「ルーマニア民族舞曲」と「カンタータ・プロファーナ」の2作品をご紹介しました。「ルーマニア民族舞曲」はバルトークの作品のなかでも有名な曲ですが、「カンタータ・プロファーナ」は初めて聴かれた方が多いのではないかと思います。とても重厚感のあるハンガリーの民族性があふれた隠れた傑作ですので、機会があればぜひ聴いてみてください。

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