出典:[amazon]ベーラ・バルトーク:作品によるヴィオラ編曲集
バルトーク・ベーラ(以下バルトーク)は、「管弦楽のための協奏曲」や「ルーマニア民族舞曲」などを作曲したハンガリーを代表する作曲家・ピアニストです。伝統的なクラシック音楽に自国ハンガリーなどの民族音楽を融合させ、多くの名曲を残しました。今回はバルトークの作品の特徴や、おすすめ代表作を7つご紹介したいと思います。
バルトークの作品の特徴及び評価
民族音楽を取り入れた作品を多く作曲したバルトークですが、若い頃はベートーヴェンに傾倒していました。ベートーヴェンへの憧れはとても強く、15歳でピアノ教師になったバルトークは、1ヶ月分の月謝のすべてを使いベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」(荘厳ミサ)の楽譜を購入したそうです。
その後ブラームスやR・シュトラウスなどの後期ロマン派へと流れ、そこから民族音楽を取り入れた独自の音楽を発展させます。20世紀に入ってまもなく、作曲家のコダーイとともに民族音楽の収集に没頭し、研究を深めていきます。1910年には、民族音楽を演奏するための「弦楽四重奏楽団」を自ら設立し、演奏会なども多く開きました。
民族音楽や民謡を題材にした作曲家は他にもいますが、バルトークの場合は収集した民族音楽や民謡を、旋律やリズムだけにとどまらず、その構造前体を分析したという点で他の作曲家と異なっています。そしてそれらを自分の感性や作風に落とし込み、新しい作品として発表しました。
また、当時最新の音楽であったドビュッシーやラヴェル、ストラヴィンスキーなどから影響を受け自身の作品の手本としたようです。
その作風からバルトークの評価は賛否両論でした。しかしバルトークの死後、多くの優れた演奏家によって演奏されることにより、作品の評価が見直され、現在では演奏機会の多い作曲家となっています。
おすすめ代表作7選
バルトークのおすすめ代表作をご紹介します。あまり聞きなれない作品が多いかもしれませんが、意外にどこかで聴いたことがある作品もありますので、参考にしてみてください。
ピアノ協奏曲第3番
1945年、バルトーク自身が作曲した最後の作品で、妻のために作曲されました。最後の17小節を残しバルトークはこの世を去りましたが、友人の作曲家によって残りの部分が完成されました。3楽章で構成されていて、演奏時間はおよそ25分です。バルトークの最高傑作の1つとされています。1946年に、オーマンディ指揮によって初演されました。現在でもとても人気のあるピアノ協奏曲です。
オペラ「青ひげ公の城」
バルトーク唯一のオペラ作品です。ハンガリー語のオペラとしてはもっとも上演機会の多い作品となっています。台本は作曲家コダーイの紹介で知り合った、バラージュ・ベーラによって書かれました。青ひげ物語と言えば、フランスの作家シャルル・ペローが有名ですが、こちらの作品はメーテルリンクの戯曲をもとに書かれました。1918年にブダペスト劇場で初演され、1950年代には日本でも上演されています。演奏時間は1時間程度です。
弦楽四重奏曲第3番
1927年に作曲された弦楽四重奏曲です。バルトークの傑作の1つとされています。単一楽章ですが、「緩ー急ー緩ー急」の4構成です。ヴァイオリンの技法の1つである「コル・レーニョ」が巧みに使用された名作です。フィラデルフィア室内音楽コンクールに応募し、見事1位を獲得しましたが、1位が4人いたそうで、そのことにバルトークはがっかりしたと伝えられています。演奏時間はおよそ15分です。
※コル・レーニョ・・・弦楽器の弓の棹(さお)の部分を用いて音を出す奏法
ピアノソナタ
バルトーク唯一のピアノソナタです。1926年に作曲され、ブダペストにてバルトーク自身によって初演されました。3楽章構成で、演奏時間は15分程度です。ピアニストでもあったバルトーク自身のレパートリーとして作曲されたため、演奏難易度が高い作品です。新古典主義の影響が強くでている作品ですが、バロック的構成となっています。
無伴奏ヴァイオリンソナタ
バルトークが亡くなる1年前の1944年に作曲された最晩年の傑作です。ヴァイオリニストのメニューインの依頼で作曲されました。演奏時間はおよそ25分でバルトークの作品としては大曲の部類に入ります。作曲された1944年にメニューインによって初演され、作品自体もメニューインに献呈されました。バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタを意識して作曲されたと考えられています。緩ー急ー緩ー急の4楽章構成となっています。
中国の不思議な役人
パントマイムのために作曲された珍しい舞台音楽です。1幕構成で、脚本はレンジェル・メニヘールトによって書かれました。今でこそ演奏される機会がありますが、発表された当時は大きな問題となり、上演1日で中止を余儀なくされた作品です。ドイツで行われた初演も、不評だったそうです。上演時間はおよそ30分で、ピアノ4手版や、組曲版も作曲されています。ロシアの作曲家ストラヴィンスキーの影響を受けていると言われています。
アレグロ・バルバロ
1911年に作曲された、ピアノ独奏用作品です。ハンガリーやルーマニアなどの民族音楽を題材にして作曲されました。ルーマニアの特徴を半音階で表現したり、アフリカの民族音楽的要素を取り入れたりと、実験的な作品として知られています。
まとめ
今回はバルトークの作品の特徴とおすすめ代表作をご紹介しました。どの作品も、バルトークが生涯探求した「民族性」が表現されていてユニークな作品ばかりだと思います。バルトークの作品は確かに難解ですが、聴けば聴くほど面白さが出てくる作曲家だと思いますので、ぜひ一度バルトークの作品を聴いてみてください。
>>バルトーク・ベーラってどんな人?その生涯や性格は?死因は?
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