出典:[amazon]The Collector’s Edition: Gustav Holst
グスターヴ・ホルスト(以下ホルスト)は19世紀後半に生まれ20世紀前半に活躍したイギリスの作曲家です。代表作の組曲「惑星」は、学校の音楽の授業で聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。また近年では、歌手の平原綾香さんが「Jupiter」としてリリースしたことから日本で再び注目を集めました。組曲「惑星」の大ヒットにより、ホルストの他の作品はほとんど知られていませんが、ホルストは59年という生涯のなかで歌曲や吹奏楽など多くの作品を残しています。そこで今回は、ホルストの作品の特徴や「惑星」以外のおすすめ作品をご紹介します。
ホルストの作品の特徴及び評価
教育熱心だったホルストは、もっぱら週末と夏休み中にしか作曲ができなかったらしく、娘のイモージェンによれば「日曜日にピクニックに行く感覚で、週末に学校の音楽室で作曲していた」そうです。ホルストは音楽以外にもリグ・ヴェーダといったインド哲学(とくにサンスクリット語)やアフリカの民族音楽を研究し、自身の音楽に反映させています。
今回ご紹介する「ベニ・モラ」は、まさにアフリカのアルジェリアの民族音楽的要素が多く用いられていますし、交響詩「インドラ」といったヒンドゥー教の神を題材にした作品も残しています。また、あまり演奏される機会はありませんが、多くの歌曲を残しているという点もホルストの興味深いところです。
組曲「惑星」や他の作品を聞くとわかるように、ホルストの作品の特徴は「旋律の美しさと力強さ」ではないでしょうか。とくに「惑星」のなかの「火星」に代表される燃えるような大胆な旋律と、迫り来る迫力はホルストの感性ならではだと思います。組曲「惑星」ばかりが一般に評価されて知られていますが、今日でも「サマセット狂詩曲」や「ムーアサイド組曲」といったホルストの才能が発揮された優れた作品も多く演奏されています。
おすすめ代表作5選
ホルストのおすすめ作品をご紹介します。今回ご紹介する作品は、吹奏楽のコンクールでも演奏されることがありますので、もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
日本組曲
ホルストは代表作である組曲「惑星」を2年の月日をかけて作曲しました。本来ならばもっと早く完成させられたのですが、「惑星」を作曲している間にこの「日本組曲」に取り組んだため時間がかかったそうです。「日本組曲」は日本人舞踊家の伊藤道郎の依頼によって作曲されました。全6章で構成されている作品で、すべての章で日本民謡が用いられている大変珍しいバレエ音楽となっています。
日本人にとって馴染み深い「ねんねんころりよ、おころりよ」のメロディーなども取り入れられています。それぞれのタイトルは、
- 1、前奏曲・漁師の歌
- 2、儀式の踊り
- 3、操り人形の踊り
- 4、間奏曲
- 5、桜の木の下での踊り
- 6、終曲・狼たちの踊り
です。
吹奏楽のための組曲第1番
1909年に作曲された、ホルストを代表する吹奏楽作品です。初期の傑作であり、吹奏楽分野における古典的名作として知られています。日本の吹奏楽でも演奏機会の多い作品です。全3楽章で構成され、演奏時間は10分程度です。
- 第1楽章、シャコンヌ(※1)
- 第2楽章、インテルメッツォ
- 第3楽章、マーチ
となっています。第1楽章でバロック音楽のシャコンヌ形式が採用されているのは、この曲を作曲した当時、ホルストは17世紀のイギリスの作曲家ヘンリー・バーセルの研究をしていたためです。また、同一フレーズによる展開のため1楽章から3楽章まで休みなく続けて演奏されます。
※1、シャコンヌとは、17世紀から18世紀に流行した、ゆったりした3拍子の変奏曲です。
吹奏楽のための組曲第2番
第1番に続き1911年に作曲されたのち、1922年に改訂され現在では改訂版が演奏されています。1922年にロイヤル・アルバート・ホールにて王立軍学学校の吹奏楽団によって初演されました。全4楽章の構成で、演奏時間はおよそ12分です。1923年に初録音、1924年にはラジオ放送もされているので当時は人気の作品だったのかもしれません。
また、第4楽章の「ダーガソンによる幻想曲」では対旋律としてイングランド民謡の「グリーンスリーブス」が採用されていることでも知られています。
セント・ポール組曲
1912年から1913年に作曲された弦楽合奏のための組曲です。ホルストは1905年から亡くなる1934年までセント・ポールズ女学校の音楽教師を勤め、この作品はセント・ポールズ女学校への感謝の意を表すために作曲されました。4曲で構成された組曲で、演奏時間は約12分です。より多くの学生が演奏できるように木管楽器を用いた管弦楽版も編曲されています。荒野を駆け抜けるような壮大な作品です。
それぞれの作品には、
- 第1組曲、ジッグ
- 第2組曲、オスティナート
- 第3組曲、間奏曲
- 第4組曲、ダーガソン
というタイトルが付けられています。
ベニ・モラ
1909年から1910年に作曲された作品です。「東洋的組曲」の副題が付けられています。全3曲からなる組曲で、19世紀後半にホルストが傾倒したインド哲学やアルジェリアの民族音楽に影響を受けて作曲されました。3曲にはそれぞれ、
- 1、第一の踊り
- 2、第二の踊り
- 3、終曲「ウルド・ナイルの街で」
というタイトルが付けられています。この曲は残念ながら失敗しましたが、それにより傷心のために訪れたスペインで占星術の知識を得て、組曲「惑星」の着想を得るきっかけとなりました。
まとめ
いかがでしたか?組曲「惑星」以外にも興味深い作品があるのがお分かりいただけたと思います。とくに私たち日本人としては、「日本組曲」という作品があるのは驚くと同時に、誇らしく感じます。あまり演奏機会の多い作曲家ではありませんが、この記事をきっかけに「惑星」以外の作品も聴いてみてはいかがでしょうか。
>>グスターヴ・ホルストってどんな人?その生涯・生い立ちは?性格を物語るエピソードや死因は?
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