出典:[amazon]スメタナ―音楽はチェコ人の命! (作曲家の物語シリーズ)
合唱曲としてよく歌われる「モルダウ」は、実は編曲されたものだということをご存じですか?
もとの作品の作曲者であるベドルジハ・スメタナは、そのもとの作品を両耳の聴力を完全に失った状態で作曲しました。そんなスメタナに関して少し紹介をしてから、作品の解説に入りたいと思います。
スメタナの生涯を解説
幼いころから楽器の演奏や作曲を行っていたスメタナは、6歳のころすでに公演を行ったことがあるそうです。
学生時代
15歳で進学した、プラハの学校に馴染むことができなかったスメタナは、不登校の状態で様々なコンサートやオペラの演奏を聴く生活を送っていました。しかし学校へ通っていないことが父親にばれてしまい、プラハから連れ戻されプルゼニという場所へ移ります。
プルゼニでは、様々な夜会での演奏を求められ、忙しい日々を送っていたそうです。
卒業後のプラハ
プルゼニからプラハへ戻ったスメタナは、音楽の正しい教育を求め、ヨゼフ・プロクシュと出会います。
そして20代半ばになると、革命運動に参加したり、リストと親交を深めたり、ピアノ学校を始めたりしました。ピアノ学校の評判は良く、スメタナ自身も評価をされていたようです。
しかし、30歳になったころから数年間の内に、3人の娘を亡くし、さらには妻が結核にかかり、その数年後には亡くなります。また学生時代からの友人で、革命運動中に再会していたカレル・ハヴリーチェク・ボロフスキーも亡くなってしまいました。
ヨーテボリでの評価と仮劇場での苦労
ヨーテボリへ移ったスメタナは、プラハ時代とは違って、すぐに高い評価を受け社会的地位を得ています。そして再婚や子供の誕生というような幸せに思える日々も迎えたのですが、仮劇場の指揮者に就任した後に、またたくさんの苦労をすることになりました。当時その劇場関係で内部の勢力争いが起こっていた際、スメタナは対立側からの様々な攻撃を受けていたとされています。
聴力を失ったスメタナ
50歳の年、感染症が原因で耳に異常が現れたスメタナは、そのまま両耳の聴力を失ってしまいます。しかし、聴力を失ってからもスメタナは作曲をやめることはありませんでした。今回解説をする「モルダウ」を含めた「わが祖国」も、聴力を失ってからの代表作の1つです。そうして作曲を続けていたスメタナでしたが、1884年に精神状態の悪化が見られ、精神病院に入院し、同年に亡くなりました。
「わが祖国」について
ここからは少し、連作交響詩「わが祖国」に関する紹介をしていきます。
「わが祖国」の紹介
この「わが祖国」という連作交響詩は、6つの交響詩で構成されています。チェコに関する風景や歴史などを描写した作品で、スメタナが聴力を失った1874年から1879年の間に作曲されました。
6作品の解説
1曲目から、「ヴィシェフラド」「ヴルタヴァ」「シャールカ」「ボヘミアの森と草原から」「ターボル」「ブラニーク」という題名が付いています。初演に関してですが、5曲目と6曲目以外は、それぞれ別々に行われたそうです。
また2曲目の「ヴルタヴァ」が、「モルダウ」として現在特に有名な作品になっています。
「モルダウ」の伴奏解説
スメタナの最も有名な作品である「モルダウ」ですが、一般的に広く知られていて演奏される機会があるのは合唱版かと思いますので、合唱の伴奏についての解説をしたいと思います。
難易度について
この合唱を歌ったり聞いたりしたことがある方は、伴奏についても印象に残っているのではないかと思いますが、あの流れるような音の前奏はとても印象的です。また中盤以降もフレーズを細かく速く弾く部分が少しずつ出てきますが、それらは前奏が演奏できれば問題ないと思います。
全体的に、譜読みやテクニックに関してのレベルは高くなく、難易度としては中級程度の作品です。
また今回は伴奏曲なので、歌を引き立たせる場所や、伴奏の音が重要になる所などをしっかり意識して弾き分けるテクニックも必要だと言えます。
注意点と解説
演奏をする際に注意する点としてあげるのは、前奏を含めた細かい音のフレーズと、同じ和音を連続で、速いテンポで弾く部分の2点です。
まずこの「モルダウ」という作品は、「ヴルタヴァ川」という川の流れを描写して作曲されているそうです。そのため、前奏を含めた速い音の流れるようなフレーズに関しては、川の流れをイメージして演奏をすると、雰囲気が掴みやすいかもしれません。
また同じ和音が連続する部分に関してですが、同じ和音を速い速度で何回も押さえるというのは、譜読みはしやすいかもしれませんが、違う和音を弾いていくのとは違った大変さがあります。演奏してみて弾きにくさを覚える場合には、もしかしたら腕の力が上手く抜けていないかもしれません。
腕の力が抜けずにいると、鍵盤から指が離れるのが遅くなったり、腕が疲れてきてしまったりします。指が離れるのが遅くなると、次の音が上手く鳴らないことが増えますし、腕が疲れてくるとさらに腕全体の動きが悪くなるのでやはり、上手く音が鳴らないという影響がでてしまいます。
そのため、同じ和音だから簡単だと思わずに、鍵盤と指の動きの様子や、腕の力の抜け具合をしっかりチェックしましょう。
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