シャルル=ヴァランタン・アルカン『ピアノ独奏による協奏曲』『48のモチーフ集ーエスキス』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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フランスが産んだピアノの魔術師シャルル=ヴァランタン・アルカン(以下アルカン)。アルカンはフランスのロマン主義音楽を代表する人物の1人であり、近年、その超絶技巧を駆使した作品が大きく注目を集めています。彼の作品の多くはピアノ曲に捧げられたものであり、その実力はフランツ・リストと肩を並べるほどだったと言われています。

なかでも今回紹介する『ピアノ独奏による変奏曲』はアルカン屈指の難曲とされ、作曲者本人でさえ、聴衆の前で演奏する際には短縮版を演奏したそうです。そんな稀代の難曲がどのようなものだったのか、ぜひ最後までお読みいただき参考にしてください。

シャルル=ヴァランタン・アルカンの生涯について

作品紹介の前にアルカンの生涯について簡単に見てみましょう。アルカン(1813〜1888年)は、フランスのパリに6人姉弟の2番目の子として生まれました。

父が音楽院を経営していたため、幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ったアルカンは、幼少時から類い稀な音楽の才能を発揮します。

周囲からも神童と呼ばれた彼は、わずか6歳でパリ音楽院に入学。入学後も「驚くべき能力を持つ生徒」として評価され、ピアニスト・作曲家の道を歩み始めます。青年になると、文学者や詩人、作曲家といった文化人とも交流を深め、とくにショパンとは生涯にわたり親交を深めたと言います。

20代になったアルカンはフランツ・リストやカルクブレンナーといった、当時のヴィルトゥオーゾと並び称されるほどのピアニストへ成長し、当時のフランスサロン界のスターとして一世を風靡しました。

しかし成功したのも束の間。パリ音楽院ピアノ科教授の落選をきっかけに、次第に世間を遠ざけるようになり、長きにわたり隠遁生活に入ります。その間、複数回のコンサートや教会オルガニストに就任したものの徐々に世間から忘れられ、1888年、74歳でこの世を去りました。アルカンの作品は、彼の死とともに一度は世間から消えたものの、20世紀後半から再評価され、今日再びその作品を聴く機会が増えつつあります。

ピアノ独奏による協奏曲

アルカンはその生涯で複数のエチュード(練習曲)を出版しており、本作は『短調による12の練習曲』の中の、8番から10番をまとめた作品です。超絶技巧を要することで知られるアルカンのピアノ曲でも、もっとも難しい作品として知られ、3楽章形式で構成される本作は、すべての楽章が4分の3拍子という珍しい編成となっています。1857年に楽譜が出版されましたが、実際にはそれよりかなり前から作曲を手がけていたそうです。

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各楽章の編成は次の通りです。
第1楽章・・・アレグロ・アッサイからアレグロ・コン・ブリオ
第2楽章・・・アダージョ
第3楽章・・・アレグレット・アッラ・バルバレスカ
さらにそれぞれに、「トゥッティ」「ソロ」「ピアノ」の指示が示されており、ピアノ1台でありながら、ピアノ協奏曲を構成する要素が求められます。

また楽譜発表から15年後の1872年から1902年にかけて、作曲家でピアニストのカール・クリンヴォルトは、本作をピアノと管弦楽のための協奏曲として再編成しており、1902年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演が行われました(1楽章のみ)。

超長編のピアノ曲

ピアノ独奏による協奏曲というなんとも珍しい作品ですが、この作品の凄さは難しさだけではありません。本作は全体で121ページもあり、第1楽章だけでも30分を要する体力勝負の作品でもあります。第3楽章まで通しで演奏すると50分にも及ぶため、アルカン本人でさえ
演奏会用に省略することを認めたそうです。

実際アルカン自らが行った演奏会でも、第1楽章のみを短縮版で演奏したと伝えられています。全曲が演奏されたのは、アルカンの死からおよそ50年後の1939年、エゴン・ペトリによって達成されました。

48のモチーフ集ーエスキス

全4巻にわたり出版された、アルカンによるピアノ曲集です。これまで難曲ばかりを紹介してきましたが、本作はアルカンの作品の中でも比較的演奏しやすい作品として知られています。タイトルにある通り48の作品で構成されており、その全ての作品にタイトルが付けられた標題作品です。なかには、バロック風やモーツァルトの作品をモチーフにした作品もみられ、アルカンの教養の深さを知る意味でも一聴の価値があるでしょう。

タイトルの例として以下のものを紹介します。
・第7番嬰へ長調「戦慄」
・第11番変ロ長調「ため息」
・第34番変ホ長調「私は衆愚を嫌い、彼らを遠ざける」
・第39番ニ短調「ヘラクレイトスとデモクリトス」

また第5番ホ長調「入信者」の冒頭には、古代ギリシャの叙述家アリストパネスの「蛙」の一説が記されており、全体としてアルカンの遊び心が楽しめるピアノ曲集となっています。

まとめ

アルカンを代表する2作品を解説とともに紹介しました。彼の奇抜な発想や技術、そして演奏力は、まさ音楽史上屈指の逸材といっても過言ではないでしょう。『ピアノ独奏による協奏曲』はあまりにも長いため、滅多に演奏されることはありませんが、クラシック音楽ファンであれば、一度は聴いてみても面白いかもしれません。

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