出典:[amazon]スメタナ―音楽はチェコ人の命! (作曲家の物語シリーズ)
チェコを代表する作曲家である、ベドルジハ・スメタナという人物をご存じでしょうか。この名前にピンと来なくても、「モルダウ」という作品名には心当たりがあると思います。恐らく、学校で合唱曲として知った方が多いであろう「モルダウ」は、もとは交響詩である「わが祖国」という作品の内の2番目の曲です。その「モルダウ」のもとの作曲者であるスメタナについて、紹介していきます。
スメタナの生涯、幼少期からプルゼニでの生活
スメタナは、音楽を仕事にしているような家庭の生まれではありませんでしたが、父親が趣味で音楽を楽しんでいたため、幼いころから身近に音楽があったようです。
幼少期
1824年に誕生したスメタナは、幼いころからヴァイオリンやピアノの演奏をしていました。6歳の年には、すでに公演を行っていたとされています。それからしばらくすると、今度は作曲の勉強も始めていたようです。
12歳で入学した学校では、その後の人生においても重要な友人となる、カレル・ハヴリーチェク・ボロフスキーと出会いました。そのハヴリーチェクに影響され、スメタナはプラハの学校への進学を希望します。
プラハに移る
15歳の年に、希望していたプラハへ進学したスメタナですが、入学した学校に馴染むことができず、すぐに登校しなくなってしまったようです。そして、スメタナは様々な演奏を聴くことに時間を費やすと、その結果フランツ・リストの影響を受けることになりました。
プルゼニでの生活
学校へ行かなくなってからしばらくすると、父親にそのことが知られてしまいます。そしてプルゼニという場所で数年間生活することになりましたが、プルゼニでは、様々な夜会での演奏を行うという、忙しい生活を送っていたようです。
スメタナの生涯、プラハやヨーテボリでの生活
ここまでで、すでに何人かの影響を受けているスメタナは、その後も様々な音楽家の影響を受けたり、そのことを指摘されたりしたようです。もしかすると、スメタナは人にとても影響されやすい人物だったのかもしれません。
再びプラハへ
再びプラハに移ったスメタナですが、実は音楽に関する正しい教育を受けていたわけではなかったため、音楽の知識を得るための教師を必要としていました。そんな中で出会ったのが、ヨゼフ・プロクシュです。プロクシュは、金銭的にも困っていたスメタナのために、仕事の紹介もしたとされています。
そして1848年になると、スメタナの人生にとって重要な、様々なことが起きました。その年、革命運動に参加していたスメタナは、学生時代の友人カレル・ハヴリーチェク・ボロフスキーと再会します。そしてリストに宛てて手紙を出したのですが、その手紙への返事も良いものだったことから、2人の親交が始まりました。さらにピアノ学校を始めると、その学校の評判が上がり評価をされることになっていきます。
妻や娘、友人を失う
このころ、スメタナはカテジナという女性と結婚をしていました。その間には4人の子供が生まれていますが、1854年から1856年の間に長女、次女、四女を亡くしてしまいます。さらに、1856年には妻カテジナも結核と診断され、1859年に亡くなりました。また、1856年には友人のハヴリーチェクも亡くなっており、スメタナにとってはつらい時期となってしまいます。
ヨーテボリへの移住
1856年に、スウェーデンのヨーテボリへ移ることを決めたスメタナは、移ってすぐに社会的地位を手にすることになります。そして1860年には、ベッティーナという女性と再婚しました。
ちなみに、現在ではチェコを代表する作曲家として知られているスメタナですが、幼少期の生活はドイツ語を使用していたため、当時は正しいチェコ語を使えるわけではありませんでした。そこで、このころからチェコ語に関する勉強を始め、正しく使いこなせるようになっていったそうです。
聴力を完全に失う
仮劇場の指揮者に就任したスメタナでしたが、内部では様々な苦労に見舞われていました。そして1874年、スメタナは感染症にかかるとその影響からか、耳にも異常が現れそのまま両耳とも完全に音が聴こえなくなってしまいます。さらにこの時期には、再婚相手のベッティーナとの関係も悪化してしまっていたようです。
聴力を失った後も作曲を続けたスメタナは、そのような状況にもかかわらず、現在代表作とされている作品を作曲しました。しかし1884年、精神状態が悪化してしまったスメタナは、精神病院に入院するとそのまま亡くなってしまいます。
スメタナのおすすめ曲3選
ここまではスメタナの生涯について解説をしてきましたが、最後は、代表作となっている作品から3作品を抜粋して紹介します。
連作交響詩「わが祖国」より第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」
スメタナの作品で最も有名な「モルダウ」は、合唱編曲されたものが学校で歌われていたり、教科書に載っていたりします。しかし実際は、連作交響詩「わが祖国」の中の1曲で、「ヴルタヴァ」と呼ばれる1曲です。この連作交響詩は6つの交響詩で構成されていて、スメタナが聴力を失った1874年から1879年にかけて作曲されました。
オペラ「売られた花嫁」
チェコを代表するオペラとして知られているこの作品は、カレル・サビナという人物が台本の作成を行いました。全3幕で構成されていて、演奏時間は約2時間です。1866年に完成して初演が行われましたが、その後改訂があり、その改定後のものの初演が1870年とされています。
弦楽四重奏第1番「わが生涯より」
この弦楽四重奏曲は、スメタナが聴力を失った1874年以降の作品で、1876年に作曲されました。全4楽章で構成されていて、演奏時間は約30分です。
>>ベドルジハ・スメタナ「モルダウ」合唱版伴奏の解説。難易度や注意点は?
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