セザール・フランクの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

出典:[amazon]セザール・フランク・エディション(23CD)

教会オルガニスト、音楽院教授として後進の育成に力を尽くしたセザール・フランク。「フランス近代音楽の父」と称されるフランクは、サン=サーンスやフォーレらと共に国民音楽協会を設立し、フランス音楽の発展に大きく寄与しました。また、卓越したオルガニストでもあったフランクの演奏には、ピアノの魔術師フランツ・リストをも唸らせるほどだったそうです。生前はあまりヒット作に恵まれなかったフランクですが、現在では作品が見直され、「フランスの古典」として多くの人に親しまれています。そんなフランクの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はフランクの作品の特徴やおすすめ代表作を紹介します。

フランクの作品の特徴や評価

フランクの作品の特徴について簡単に解説します。フランクは温厚で穏やかな人柄から多くの弟子に愛され、弟子たちにとって父親のような存在だったようです。

多くの弟子たちに囲まれる

教会オルガニストとしての名声を高めたフランクは、フランソワ・ブノワの後任としてパリ音楽院オルガン科の教授に就任します。とても温厚で教育熱心だったフランクは、多くの学生から「父フランク」の愛称で慕われました。なかでもヴァンサン・ダンディ、エルネストショーソン、ルイ・ヴィエルヌなどが有名で、その他にも多くの優れた弟子を育てています。

しかし一方で、オルガン科の教授でありながら作曲の指導もしたため、一部の教員から冷ややかな目で見られることもあったそうです。

フランクにおける3つの分岐点

上記のヴァンサン・ダンディはフランク研究の第一人者としても高い評価を受けています。
ダンディによれば、フランクの作品は第1期、第2期、第3期の3つの時期に分けられるそうです。それぞれの時期は以下のようにまとめられています。

第1期・・・パリ音楽院修了後、リサイタルを開き「ピアノ協奏曲2番」などを作曲していた時期(1858年まで)

第2期・・・1858年から1870年まで。ロマン派の影響を受けつつ、宗教音楽を主に生み出した時期。代表作「オルガンのための6つの作品」など。国民音楽協会を設立。

第3期・・・1870年から晩年まで。フランクの音楽家としての頂点とも言える時期。代表作に「ヴァイオリンソナタ」や「3つのコラール」、「交響曲ニ短調」を発表。

フランクの死後に評価が高まる

晩年こそ「弦楽4重奏曲」などの大成功により、作曲家としての名声を獲得したフランクでしたが、それまでの作品はほどほどの評価であり、大ヒットとなる作品に恵まれませんでした。

むしろ作品が評価され始めたのはフランクの死後からであり、それまで埋もれていた作品が各地で演奏され、フランクは多くの賞賛を浴びるようになります。さらにフランク生誕100年にあたる1922年には、祖国ベルギーで大々的なコンサートが開かれ、会場にはエリザベート王妃も参加するほどの人気ぶりでした。
今年(2022年)はフランク生誕200年ですので、もしかしたらフランクの人気が再燃するかもしれません。

おすすめ代表作5選

フランクのおすすめ作品を紹介します。作品数はそれほど多くないものの、フランクは優れた名曲を数多く残しています。

交響詩「鬼神(ジン)」

1884年に作曲した交響詩です。交響詩とは民族音楽や叙事詩などを用いた、自由な音楽形式を意味します。聴いていただくと分かる通り、ピアノの超絶技巧が求められる難曲です。この曲はピアニストのモンティニ=レモリーの委嘱により作曲されましたが、あまりにも難しかったのか、レモリーが演奏することはなかったそうです。

また、長らくピアノ曲から遠ざかっていたフランクが、再びピアノ曲を作曲するきっかけとなった作品としても知られています。1885年、国民音楽協会の演奏会で初演され、演奏時間は13分程度です。タイトルは同時代のフランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの同名の詩から採用されました。

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ピアノ5重奏曲

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1878年から1879年に作曲されたフランクを代表する室内楽曲です。1858年からサント・クロチルド教会の第一オルガニストに就任したフランクですが、オルガニストと音楽院教授を兼任していたため室内楽を作曲する時間を取れず、室内楽としては1848年に作曲した「協奏的2重奏曲」以来、およそ35年ぶりの作品となります。本作は後の「バイオリンソナタ」や「弦楽4重奏曲」につながる重要な作品であり、フランク後期の特徴である循環形式が用いられているのが特徴です。

1880年、国民音楽協会にてサン=サーンスのピアノで初演されました。しかし作品を気に入らなかったサン=サーンスは、演奏が終わるとフランク自筆の楽譜を置き去りにしたまま、ステージを去ったというエピソードが残っています。

前奏曲、コラールとフーガ

1884年に作曲されたピアノ独奏のための作品です。作曲の翌年、国民音楽協会演奏家にてマリー・ポワトヴァンの演奏で初演され、作品は演奏者に献呈されました。上記の交響詩「鬼神」と同時期に書かれた作品で、フランクのピアノ作品としては、1845年以来40年ぶりの作品です。フランクがこの作品を作曲した理由として、「国民音楽協会の演奏会に、ピアノ曲が少なかったため」という説があります。

タイトルの通り、作品は「前奏曲、コラール、フーガ」の3曲で構成されており、途切れなく演奏されるのが通例です。元はバッハに倣い「前奏曲とフーガ」の構成でしたが、作曲中にコラールを加えるアイディアを思いつき、コラールを付け加え作曲されました。フランクのピアノ曲中でもっとも演奏機会の多い名作です。

前奏曲、アリアと終曲

前作「前奏曲、コラールとフーガ」の作曲から4年後の1888年に作曲されました。ボルド・ベーヌ夫人により初演され、作品は夫人に献呈されています。初演はそれほど評判の良いものではありませんでしたが、フランクの愛弟子ヴァンサン・ダンディは「ベートーヴェン以降、初めて現れた語るに足るピアノ曲」と評価しました。この点については、ヴァンサン・ダンディはフランクに心酔していたこともあり、やや誇張が含まれていると考えた方が良いかもしれません。またピアニストのアルフレッド・コルトーは、この作品について「あたかもオルガン曲、もしくは弦楽合奏曲のように響く」と述べています。

美しく、祈りに満ちたメロディーは聴く人を安らぎへと導きます。演奏時間は20分から25分程度です。

オラトリオ「至福」

1869年から1879年にかけて作曲されたオラトリオです。完成までに10年かかった理由は、普仏戦争の勃発と、もう一つのオラトリオ「贖罪」の作曲途中だったという2つの理由が考えられています。マタイの福音書に基づくテキストで作曲され、1879年、パリのフランク邸にて初演されました。フランクの生前中に全曲演奏されたことはなく、死後1891年に初めて全曲が演奏されています。2時間弱に及ぶ大曲で、現在ではほとんど演奏機会がありませんが、20世紀初期までは頻繁に演奏される人気作品だったそうです。

まとめ

いかがでしたか?今回はフランクの作品の特徴やおすすめ作品を紹介しました。ピアノを演奏されている方なら、「前奏曲、コラールとフーガ」「前奏曲、アリアと終曲」をご存知の方も多いと思います。フランクが生きた時代は、ワーグナーやブラームスといった、ロマン主義全盛の時代でした。しかしその中にあって、ドイツ古典主義的音楽を作曲したフランクの功績は、後世の作曲家に絶大な影響を及ぼしました。まだフランクの作品を聴いたことのない方は、入門編として今回紹介した作品から聴いてみてはいかがでしょうか。

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