ジョン・ケージの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

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前衛芸術家、思想家、発明家として20世紀の音楽史に大きな痕跡を残したジョン・ケージ。
1952年に発表した「4分33秒」は世間にセンセーショナルを巻き起こし、その作品には賛否両論が出ています。また後年には「偶然性の音楽」に着目し、コイントスで音を決めて作品を完成させるなど、西洋音楽の常識を覆したことでも知られています。そんな前代未聞の作曲家ジョン・ケージの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はジョン・ケージの作品の特徴とおすすめ作品を紹介します。

ジョン・ケージの作品の特徴や評価について

前衛芸術家として活躍したジョン・ケージの作品の特徴はどのようなところにあるのでしょうか。凡人にはなかなか理解できない発想に驚くばかりです。

既存の概念を破壊する作風

初期の作品では、シェーンベルクの影響が窺える作品を多数作曲したジョン・ケージですが、シェーンベルクの元から離れ、ダンスの振付師となった頃から前衛的作品に目覚めます。当時最先端だった電子楽器の可能性に注目し、いち早く作品に取り入れたのもジョン・ケージでした。下記に紹介する「心象風景第1番」では、ピアノやシンバルの他に、ターンテーブルや周波数記録装置などを使用し、既存の音楽的概念を覆す作品として注目を集めました。

偶然性に目覚める

インド哲学や東洋思想、禅などに関心を示したジョン・ケージは、次第に不確定性の音楽に進み、それを発展させ「偶然性の音楽」にたどり着きます。偶然性の音楽とは、作曲過程における「作曲家の意図」を排除したものであり、コインを投げて音符を決めたり、紙についたシミなどを利用して作曲を進めることを指します。

そういう意味で、会場で流れるすべての音も音楽であると解釈する「4分33秒」は、ジョン・ケージの確固たる哲学の表れと言えるでしょう。

サティの「ヴェクサシオン」を初演する

ジョン・ケージは、「嫌がらせ」を意味するサティの作品「ヴェクサシオン」を初演したことでも有名です。サティの指示通り840回反復し、複数の演奏者により、18時間かけて見事初演を成し遂げました。ジョン・ケージが「ヴェクサシオン」に挑戦したのは、前衛芸術家の先駆けであるサティに対する尊敬の念からだったのかもしれません。その後ジョン・ケージは「ヴェクサシオン」をも超える壮大な作品を作曲しています。

永遠に続く作品がある?

その壮大な作品とは、1985年に作曲された「オルガン/ASLSP」です。楽譜は8ページ程度ですが、この作品は事実上「演奏時間が無制限」であり、世界最長の作品とされています。
2001年から、この作品を639年かけて演奏するプロジェクトが開始し、2022年現在までに15回音演奏されています。

おすすめ代表作5選

ジョン・ケージのおすすめ作品を紹介します。どの作品もあっと驚くような、そして不思議な曲ばかりだと思います。

ソナタとインターリュード

ジョン・ケージ自身が発明した「プリペアド・ピアノ」と呼ばれる楽器のための作品です。1946年から1948年にかけて作曲されました。「プリペアド・ピアノ」とは、グランドピアノの弦にゴムやボトルなどの金属、木片などを挟んだり乗せたりすることで、打楽器的音質を生み出す楽器です。

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16曲のソナタと4曲のインターリュードで構成され、ピアノ88音のうち45音に装飾が施されています。取り付ける材料や位置が、1音毎に厳密に決められています。

フリーマン・エチュード

タイトルからして「?」と思われるかもしれませんが、ヴァイオリン独奏用に作曲された全32曲からなるエチュードです。作曲過程における偶然性を活かした「チャンス・オペレーション」を厳密化した作品と言われています。アメリカの現代音楽ヴァイオリニストであるポール・ズコフスキーとのコラボレーションによって作曲されました。ズコフスキーが「絶対に演奏不可能」と述べたことで、作曲が一時中断されましたが、ジョン・ケージの死の2年前、1990年にようやく作品が完成されました。

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1962年に発表した作品です。初演は東京・草月ホールにてジョン・ケージ自身によって「演奏」されました。楽譜に音符は書かれておらず、標題の下に「独奏として誰が何をしてもよい」とだけ書かれています。

この作品では例えば、顔を洗う、文字を描く、歯を磨く、コーヒーを飲むなど「日常的な行為」なら何をしても良いとされていますが、再び演奏する場合は「前回と同じことをしてはならないという」ルールがあります。

心象風景第1番

フランスの作家・ジャン・コクトーの『エッフェル塔のマリアたち』の上演に伴い作曲された作品です。もともと聴衆の面前で演奏されることは想定しておらず、ラジオ放送のみの予定で作曲されました。1939年春ごろに作品が完成し、同年3月24日に初演されています。1楽章のみの構成で、演奏時間はおよそ6分です。演奏にはレコードのターンテーブルや、周波数記録、ミュートしたピアノなどが使われる大変珍しい作品です。

易の音楽

中国の『易経』にインスピレーションを受けて作曲された作品です。作曲家が厳密に音楽を構成する西洋音楽を真っ向から否定した作品として、発表当時大きな話題となりました。この作品は、ジョン・ケージが到達した「不確定性の音楽」を代表する作品であり、作曲家の意図を超えた「何か」を表現した作品でもあります。

まとめ

今回はジョン・ケージの作品の特徴やおすすめ代表作について解説しました。これまでの西洋音楽の概念を覆す作風に驚いた方も多いのではないでしょうか。ジョン・ケージの作品を解釈するためには、彼が「どのような思想に基づいて」作品を生み出したかを理解する必要があると思います。少し哲学的で難しい部分もありますが、本記事で興味が出た方は、著作なども読んでみてはいかがでしょうか。

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