セザール・フランク「交響曲ニ短調」「ヴァイオリンソナタ」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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19世紀フランスにおけるクラシック音楽の礎を築いたセザール・フランク。フランクは作曲家、教会オルガニスト、パリ音楽院教授などを務め、多くの優れた音楽家を育てました。生前、フランクの作品はそれほど評価が高いものではありませんでしたが、フランクの死後、その評価は一気に高まり、今日でもコンサートなどで頻繁に演奏されています。なかでも「交響曲ニ短調」と「ヴァイオリン・ソナタ」はフランクをもっとも代表作する傑作として、現代でも輝きを放ち続ける名曲です。そこで今回は「交響曲ニ短調」と「ヴァイオリン・ソナタ」について解説します。

交響曲ニ短調について

1888年に作曲されたフランク唯一の交響曲です。学生時代にも「交響曲ト長調」を作曲したそうですが、現在では楽譜が存在しないため演奏の機会はありません。初演は不評に終わりましたが、フランクの死後、シャルル・ラムルーによって演奏されたことがきっかけとなり高く評価されました。

現在では19世紀後半におけるフランスを代表する交響曲として、コンサートでも演奏機会の多い作品です。作曲の動機は、エドゥアール・ラロやサン=サーンスといった、同時代の作曲家が相次いで交響曲を発表したのと、弟子たちの勧めがあったためと言われています。

主題が各楽章に登場する「循環形式」となっており、この背景にはベートヴェンやワーグナーの影響が色濃く出ています。この作品を聴いたドビュッシーは「数えきれないほどの美しい部分をそなえている」と絶賛しました。

楽曲編成は?

全3楽章で構成されており、とくに第2楽章中間部のスケルツォのリズミカルな旋律が特徴です。これについてフランクは「緩徐楽章とスケルツォを互いに結びつけたもの」と解説しています。また、作品の随所にオルガン的響きが見られるため、オルガン用に編曲・演奏されることもあるそうです。

初演は不評を買った

現在では「近代フランス音楽の父」と称されるフランクですが、この作品の初演の評判は良いものではありませんでした。とりわけグノーはこの作品について「不毛であり、陰気、また魅力や愛嬌すらない」、「自分を無能と知っていながらそれを『教養』の延々としゃべるような作品」と酷評したそうです。

しかしフランクは、こうした批判を気にすることなく、「自分の想像していた通りの音が響いた」と満足げに微笑んだと言います。

ヴァイオリン・ソナタについて

フランクが1886年に作曲した作品です。ありとあらゆる「ヴァイオリン・ソナタ」の中でも「最高傑作」と称される珠玉の名曲です。「交響曲ニ短調」同様、こちらもフランク晩年に作曲され、作品は天才ヴァイオリニストのウジェーヌ・イザイの結婚祝いとして献呈されました。初演は1886年12月、ベルギーのブリュッセルにてイザイによって行われています。ヴァイオリン・ソナタにもフランク得意の「循環形式」が採用され、同一主題が様々な形で展開します。

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この作品に魅了されたピアニストのアルフレッド・コルトーは、全曲をピアノ版に編曲しており、ピアノ版以外にもフルート版やチェロ版など、様々な楽器で演奏されています。本作はあくまでも「ヴァイオリン・ソナタ」ですが、それだけにとどまらず、ピアノとヴァイオリン双方の個性が最大限発揮されているのも魅力の一つです。

楽曲編成はについて

4楽章で構成され、演奏時間はおよそ30分です。各楽章の簡単な構成は以下の通り。

第1楽章・・・アレグレット・ベン・モデラート、イ長調、ソナタ形式
第2楽章・・・アレグロ、ニ短調、ソナタ形式
第3楽章・・・ベン・モデラート、幻想的な叙唱、形式自由
第4楽章・・・アレグレット・ポコ・モッソ、イ長調、ロンドソナタ形式

ウジェーヌ・イザイに捧げられた傑作

冒頭でも触れたように、本作はベルギーの世界的ヴァイオリニストであるウジェーヌ・イザイの結婚祝いのために作曲されました。そしてこの作品を受けとったイザイは、謝辞として次のように述べています。

「これは私だけのものではありません。全世界の贈り物です。私の役目は全身全霊を捧げ、この曲の素晴らしさを伝えることです」

イザイの言葉通り、フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」は全世界に広がり、現在では世界中の人々から愛される名曲となりました。当のフランクはイザイの結婚式に出席しなかったらしく、その代わりとしてイザイ夫人に手紙を送り、二人の結婚を祝ったそうです。

ウジェーヌ・イザイについて

ウジェーヌ・イザイは1858年にベルギーに生まれた世界的ヴァイオリニストです。フランクと同じリエージュ音楽院出身で、サン=サーンスやエルネスト・ショーソンなどからも作品を提供されています。

現在、若手登竜門として知られるコンクールには、ショパンコンクール、チャイコフスキーコンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールの3つがありますが、エリザベート王妃国際音楽コンクールの前身が「イザイ国際コンクール」でした。ヴァイオリニストとして活動した他、オペラを作曲するなど作曲家としても知られています。

まとめ

今回は「交響曲ニ短調」よ「ヴァイオリン・ソナタ」の2曲を解説しました。どちらも名作であることは言わずもがなですが、作品の裏にあるエピソードなども興味深いです。フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」はヴァイオリン・ソナタ史上最高の一曲に挙げる人もいますので、ぜひこの記事を機会に、最高傑作の一つを聴いてみてはいかがでしょうか。

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