フランシス・プーランク「オルガン協奏曲」「グローリア」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]プーランク : 歌曲全集 (Poulenc : Integrales des melodies pour voix et piano)

20世紀初期のフランスを代表する作曲家フランシス・プーランク。プーランクが生み出す軽快なメロディーと予期せぬ音楽展開は、聴く人に心の軽やかさと小さな驚きをもたらします。正式な音楽教育を受けていないことに若干のコンプレックスを抱いていたプーランクですが、しかしだからこそ、ユーモアやアイロニーを含んだ知的な作品を生み出せたとも言えます。さまざまなジャンルで人気作を作曲したプーランクですが、今回はその中から「オルガン協奏曲」と「グローリア」の2曲を紹介します。

オルガン協奏曲

1934年に作曲が開始された、プーランクを代表する作品の一つです。一般に「オルガン協奏曲」のタイトルで親しまれていますが、正式名称は「オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲」です。プーランク作品としては、かなり重厚で劇的な作品ですが、その理由は、親しかった作曲家ピエール=オクターヴ・フェルーの突然の死が関係していると言われてます。

本作は作曲開始からおよそ4年後の1938年、依頼者であるエドモン・ド・ポリニャック公妃のサロンにて初演されました。余談ですが、ポリニャック公妃はパトロンとして数々の芸術家を支援し、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」やドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」、ストラヴィンスキーの「狐」など、多くの作品が公妃に捧げられています。

1939年、オルガニストのモーリス・デュリュフレとパリ協会室内管弦楽団の演奏で一般初演されました。オルガンとオーケストラの組み合わせによる成功は、サン=サーンスの「交響曲第3番”オルガン付き”」に見られますが、本作はサン=サーンスの交響曲に匹敵するオルガン曲の成功例と言えるでしょう。

楽曲編成について

この作品の大きな特徴は「管楽器が使われていない」点にあります。これは、「管楽器が使用されてない部分をオルガンが持つ音色の多様性で解決する」という意図があるそうです。この話を知らなければ、管楽器が使われていないことに気がつかない人も多いかもしれません。

切れ目のない単一楽章として演奏され、3つの楽章と7つのパートにより構成されています。3楽章に分けた場合の構成は以下の通りです。

第1楽章・・・アンダンテ、アレグロ・ジョコーソ
第2楽章・・・アンダンテ・モデラート
第3楽章・・・アレグロ、モルト・アジタート、レント、アレグロ、ラルゴ

演奏時間はおよそ22〜24分程度。

聴きどころは?

冒頭のオルガンの重厚さに圧倒されること間違いなしです。オーケストラと対峙した時のオルガンの荘厳さと華やかさが聴く人の心を捉えます。オルガンによる宿命的暗さと孤独が表現される一方で、急激に親しみやすいメロディーになるところは、まさにプーランクの真骨頂と言えるでしょう。フランスではそれほど成功しなかったそうですが、アメリカでの演奏は大成功を収めました。

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グローリア

1959年に作曲された後期プーランクを代表する宗教音楽です。クーセヴィツキー財団の委嘱で作曲され、作品は亡きクーセヴィツキー夫妻に献呈されました。1961年、シャルル・ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団によって初演され、歌詞にはカトリックのミサで使用される「ミサ通常文」のラテン語版が用いられています。

プーランクをもっとも代表する作品の一つなので、部分的に聴いたことのある方もいるかもしれません。発表当時は、ミサ曲としての荘厳さが薄かったため「明るすぎる」や「軽薄だ」など、評判は散々だったそうです。たしかにベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」やブラームスの「ドイツ・レクイエム」と比べると軽快なミサですが、プーランクの高い精神性と抒情性が感じられる1曲であることは間違いありません。

「グローリア」を作曲するにあたり、プーランクは「天使たちが舌を出しているフレスコ画と、真面目な修道士たちのサッカー試合を頭に思い浮かべながら書いた」そうです。この精神的背景を知った上で、再度本作を聴くと、プーランクの「遊び心」を感じられるような気がします。

録音も多数あり、なかでも合唱指揮者ロバート・ショウによる録音は、1965年のグラミー賞最優秀合唱部門賞を受賞した名盤です。

楽曲編成や構成について

本作は6曲(6楽章)構成で、それぞれのテーマは次の通り。()内はラテン語タイトルです。

第1楽章・・・天のいと高きところには神に栄光(グローリア・イン・エクセルシス・デオ)
第2楽章・・・我ら主を讃え(ラウダムス・テ)
第3楽章・・・神なる主、天の主(ドミネ・デウス、レックス・ケレスティス)
第4楽章・・・主なる御ひとり子(ドミネ・フィリ・ウニジェニテ)
第5楽章・・・主なる神、神の子羊(ドミネ・デウス、アニュス・デイ)
第6楽章・・・父の右に座したもう主よ(クィ・エデス・アド・デクステラム・パトリス)

演奏時間はおよそ25分です。

まとめ

フランシス・プーランクの「オルガン協奏曲」と「グローリア」について解説しました。どちらも重厚で精神性の高い作品だと筆者は感じています。プーランク作品の面白いところは、高い精神性の中にも、所々に「遊び心」が見え隠れする点にあります。今回紹介した2作品も繰り返し聴いていると、プーランクのユーモア精神を感じられると思いますので、まだ聴いたことの無い方はぜひ作品に触れてみてください。

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