フレデリック・ディーリアスの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作6選

出典:[amazon]ディーリアス・ボックス(生誕150年記念)

フレデリック・ディーリアスという作曲家をご存知でしょうか。日本ではそれほど知名度は高くありませんが、フレデリック・ディーリアスは19世紀後半から20世紀にかけて活躍した、イギリスを代表する世界的作曲家です。同時代の作曲家にはエドワード・エルガーなどがおり、生前は互いにその才能を認め合ったと言われています。

では、そんなフレデリック・ディーリアスの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はディーリアスの作品の特徴や評価を、おすすめ作品を交えながら紹介します。

フレデリック・ディーリアスの作品の特徴や評価について

ディーリアスの作品にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは2つに絞って簡単に紹介します。

ワーグナー、グリーグを経て独自の世界観を確立

ディーリアスが特に影響を受けた人物に、ワーグナーとグリーグの2人の作曲家が挙げられます。ロマン主義音楽の極地ともいえるワーグナーからは、無限旋律の技法と半音階的和声を学び、グリーグからは民族音楽への決定的な開眼を与えられました。

とりわけ民族音楽に目覚めたディーリアスは、後年、作曲家バルトークやコダーイといった民族音楽(国民音楽)を題材にした人々からも高く評価されており、ヴォーン・ウィリアムズと並び、イギリスの民族音楽をクラシック音楽に取り入れた先駆け的存在と言えるでしょう。

交響曲と宗教曲を除くあらゆるジャンルを作曲

ディーリアスは作曲家として交響曲や宗教曲は残さなかったものの、それ以外の分野、例えばピアノ曲、合唱曲、オペラといったジャンルにおいて多くの作品を残しています。宗教曲については、ディーリアス自身が「無神論者であった」という点を考慮すると、作品がないのも頷けます。

20世紀初頭に『レクイエム』(ミサ曲)を発表していますが、この作品には宗教的意図が含まれておらず、発表当時から「反キリスト教的である」とその内容が批判に晒されることもしばしばだったそうです。

フレデリック・ディーリアスのおすすめ代表作6選

ディーリアスのおすすめ代表曲を紹介します。日本でも少しずつ認知が広まりつつありますので、ぜひこの記事を通じてディーリアスの作品に触れてみてください。

ブリッグの定期市

イングランドで広く知られる民謡です。オーストリアの作曲家兼民謡蒐集家パーシー・グレインジャーが録音した民謡「ブリッグの定期市」を、ディーリアスが管弦楽版としてアレンジした作品となっています。ディーリアス作品の中でも演奏機会の多い作品であり、しばしば演奏会のプログラムとして取り上げられています。民謡を元に編曲されているため、とても抒情味豊かな牧歌的なメロディーが印象的です。演奏時間はおよそ20分程度。

ピアノ協奏曲

1897年に作曲されたディーリアス唯一のピアノ協奏曲です。1888年にイギリス本国で聴いた、グリーグの『ピアノ協奏曲』に触発されて作曲されたと言われています。発表当時は3楽章が連続して演奏される構成でしたが、数回に及ぶ改訂を経て、最終的に3楽章構成へと変更されました。作品はピアニストのテオドール・サントーに献呈されています。滅多に演奏されることがないので、これを機会にぜひ聴いてみてください。

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パリ・大都会の歌

1899年から1900年にかけて作曲されたディーリアスを代表する管弦楽曲です。本作は「夜想曲」的雰囲気を持ち、自由でロマンティックな作風が特徴です。1901年、ハンス・ハイムの指揮で初演され、イギリス本国では1908年に初演されています。

本作では、ディーリアスがパリ在住時に体験した「パリの印象」が表現されており、楽譜草稿には「不思議な街」「喜びの街」「ゲイの音楽と踊り」といった当時の印象が書き記されています。またこの作品は、同時期に活躍していたリヒャルト・シュトラウスの影響が色濃く見られます。演奏時間は20分程度です。

高い丘の歌

1911年に発表されたディーリアスの交響的合唱曲であり、発表から9年後の1920年に初演が行われました。本作は合唱曲でありながら歌詞を持たない点が興味深く、合唱を「声の響き」として活用しているところにディーリアスの個性が垣間見られます。

これについて、ディーリアス本人は「声楽パートは、大自然にいる人間を象徴している」と説明しています。ディーリアスの友人で指揮者のトーマス・ビーチャムはこの作品について、ディーリアスの主要作品として評価し、「風景そのものが湧き出ているかのようだ」と讃えました。また、1964年にはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団演奏による、録音も残されています。

人生のミサ

こちらもディーリアスを代表する合唱曲です。1908年に2部のみが初演され、1909年にロンドンにて全曲が初演されました。本作はドイツの哲学者ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』がテキストとして採用されており、歌詞もドイツ語が用いられています。合唱曲としては最大規模の作品であり、演奏時間はおよそ100分を要します。

『ツァラトゥストラはかく語りき』を題材にした代表的作品といえば、リヒャルト・シュトラウスによる同名の交響詩が有名ですが、これを機会にディーリアスの作品もぜひ覚えておいてください

交響詩「おとぎ話」

ディーリアスがノルウェーの童話にインスピレーションを受けて作曲した交響詩です。交響詩とは「民族的主題(あるいは民謡など)を題材とした、形式自由な作品」を意味します。
1917年に作曲され、1919年にロンドンにて初演されました。ノルウェーの童話というところにグリーグの影響が窺えますが、作曲のきっかけには指揮者フリッツ・カッシーラの助言が大きく関わっています。「おとぎ話」というタイトルの通り、幻想的かつ情景的な作風が特徴です。演奏時間はおよそ15分となっています。

まとめ

フレデリック・ディーリアスの作品の特徴やおすすめ作品を紹介しました。多くの方にとって、初めて耳にする作品ばかりだったのではないでしょうか。ディーリアスの音楽は、水彩画で描かれた絵画のようであると筆者は感じています。聴く人を「淡い透明感のある世界」に引き込むようなメロディーは、ディーリアスならではといっても過言ではないでしょう。
この記事を機会に、ディーリアスの世界観を少しでも味わっていただければ幸いです。

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