『クラジャン=フィリップ・ラモー『優雅なインドの国々』『クラヴサン曲集』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]ジャン=フィリップ・ラモー:鍵盤音楽全集 第2集

17世紀後半に生まれ、バッハやヘンデル、スカルラッティと同時代に生きたフランスバロックを代表する作曲家ラモー。

若き日のラモーはクラヴサン曲の作曲や教会オルガニストを務め、やがて50歳を目前に控えて発表したオペラ『イポリットとアリシー』が大成功を収めたことをきっかけに、ルイ15世お抱えの宮廷音楽家にまで上り詰めました。

また、ラモーは音楽理論家としても多数の理論書を執筆し、その体系化された音楽理論は、近代音楽の発展に重要な役割を果たしています。そこで今回は、数あるラモーの作品の中から、もっとも華やかなオペラ・バレエ『優雅なインドの国々』とライフワークとなった『クラヴサン曲集』の2作品について解説します。

オペラ『優雅なインドの国々』について

『優雅なインドの国々』は1735年に作曲されたラモーを代表するオペラ・バレエです。オペラと聞くと堅苦しいイメージがありますが、本作はエキゾチックなストーリと優雅で抒情豊かなメロディーが聴く人の心を惹きつけます。

タイトルの「インド」とは現在のインドを示すものではなく、ヨーロッパ以外の人々や異教徒、原住民を指す言葉です。本作はプロローグと全4幕で構成されていますが、それぞれが1幕で完結する、オムニバス形式が採用されています(各幕は「アントレ」と名付けられています)。

各幕のテーマは次の通りです。
第1幕・・・寛大なトルコ人
第2幕・・・ペルーのインカ人
第3幕・・・花々、ペルシャの祭り
第4幕・・・アメリカの未開人

本作の魅力は、それぞれが独立した物語でありながら、物語の全編を通して「愛」がテーマとなっている点にあります。初演はパレ・ロワイヤルにてプロローグと第2幕までが上演され、数回の上演ののち、第3幕と第4幕が追加されました。

聴衆から絶大な支持を得た本作は、その後1743年、1744年、1751年、1761年の4年間の間に計185回上演されており、本作が当時のヒット作だったことが窺えます。優雅な音楽とダンスが融合した本作は、当時としては第1級のエンターテイメントだったのではないでしょうか。

楽曲編成や聴きどころは?

『優雅なインドの国々』というタイトルにある通り、本作の魅力はなんと言っても華やかなメロディーとオリエンタル気質溢れるダンス、そしてわかりやすいプロットにあります。

人々の心の機微を色彩豊かに表現し、日常の何気ない側面を美しい夢のような世界として映し出す手腕は、まさにラモーの真骨頂と言えるでしょう。

また、本作は組曲版に編曲されていますので、初めて訊かれる方は組曲版から聴いてみるのもオススメです。

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20世紀になり再演される

1761年のパリ公演を最後に忘れ去られた本作ですが、1925年、パリ・オペラ座で第3幕が復活公演されたことをきっかけに、20世紀初頭からたびたび再演されるようになります。

そして再演から四半世紀後の1952年には、セルジュ・リファール振り付けによる再演が大好評となり、再びラモーの傑作として注目を集め始めます。

現在は管弦楽版で演奏されるのが主流ですが、オペラ版の公演もしばしば行われており、ラモーの傑作不滅の名曲として聴衆に支持されています。

『クラヴサン曲集』について

オペラ作曲家として不動の地位を獲得したラモーですが、50歳まではクラヴサン曲の作曲者、教会オルガニストとして生計を立てていました。クラヴサン曲の作曲家としては、同じフランスの作曲家クープランが有名ですが、ラモーのクラヴサン作品も秀逸です。

ラモーは1706年に出版した『クラヴサン曲集』を含め、生涯で4冊の『クラヴサン曲集』を出版しています。クープランの繊細な作風とは対照的に、ラモーのクラヴサン曲は、大胆で躍動感のある作風が聴衆を魅了します。

また、ラモーのクラヴサン曲には標題が付けられている作品が多いため、初めて聴く方にもイメージがつかみやすく、クラヴサン曲入門としてうってつけの作品集と言えるでしょう。

全4冊の発表年代は次の通りです。

1、クラヴサン曲集第1巻(1706年)
2、クラヴサン曲集と運指法(1724年)
3、新クラヴサン組曲集(1727年から1728年)
4、コンセール形式によるクラヴサン曲集(1741年)

楽曲編成や聴きどころは?

ラモーはその生涯で60曲以上ものクラヴサン曲を発表しました。そのなかでも、1741年に出版された『コンセール形式によるクラヴサン曲集』は、その高い完成度により、18世紀フランス室内楽における最高傑作と称されています。

この作品において、ラモーはクラヴサンをフルートやヴァイオリンなどの楽器と見事に調和させ、楽器の持つ音響効果を最大限発揮させることに成功しています。

まとめ

今回はラモーのユーモア溢れるオペラ・バレエ『優雅なインドの国々』と『クラヴサン曲集』について解説しました。どちらの作品も、初めて耳にする方が多かったのではないでしょうか。

バロック音楽というと形式的ばったイメージがありますが、今回紹介した『優雅なインドの国々』は最初から最後までリラックスして楽しめる作品だと思います

。一方で、ゆったりとした時間を味わいたい方には、優しい音色の『クラヴサン曲集』がオススメです。ご自身の気分に合わせて、是非ラモーの作品を楽しんでください。

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