グスターヴ・ホルスト「惑星」「我は汝に誓う、我が祖国よ」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]The Collector’s Edition: Gustav Holst

ホルストの名前を知らなくても、彼が残した組曲「惑星」を聴いたことがある人は多いのではないでしょうか。組曲「惑星」は発表当時から大人気となり、なかでも「木星」の中間部のメロディーはイギリスの愛国歌やイングランド国教会の聖歌となっています。クラシックだけではなく、さまざまな場面で耳にする機会の多い組曲「惑星」とはどのような作品なのでしょうか。今回は、組曲「惑星」とそれに歌詞を付けた「我は汝に誓う、我が祖国よ」について解説します。

組曲「惑星」について

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ホルストを代表する組曲「惑星」は、1914年から1916年にかけて作曲された管弦楽用の組曲です。作曲された当初は、ピアノのための作品として発表されましたが、周りの助けを得て、管弦楽版に編曲されました。1918年にロンドンのクイーンズ・ホールで初演され、正式な演奏は1920年にバーミンガムで行われました。作曲に2年の歳月がかかったのは、1916年に「水星」を書き上げたのち、日本人舞踊家の伊藤道郎の依頼で「日本組曲」を作曲したためです。

地球を除く7つの惑星がテーマとなっており、それぞれに標題と、曲に対応するギリシャ・ローマ神話の神々の名前が付けられています。「惑星」がテーマとなった理由は、友人の作曲家アーノルド・バックスの弟のクリフォードから占星術を学んだためです。占星術をモチーフにしているため地球は含まれず、また、冥王星が曲目に無いのは、1916年当時には冥王星が発見されていなかったためです(現在は準惑星)。

火星と水星が入れ替わっている理由は諸説あり、
1、西洋占星術における黄道(こうどう)十二宮と守護惑星との関係
2、音楽的構成上の理由(緩急など)
3、第1次世界大戦の強烈なイメージを先行させたため
という理由が考えられています。

発表当時はイギリス国内で大変な人気となりましたが、同時代に活躍したドビュッシーやストラヴィンスキーなどの作品と比べるとそれほど評価が高くなく、ホルストの名前とともにヨーロッパでの人気は下火になりました。しかし1960年代に大指揮者カラヤンが演奏・録音したことで再び世界的人気作品となり、今日に至ります。

楽曲編成は?

組曲の順番と表題は次の通りです。()内は神々の名前です。

  • 第1組曲 火星・・・戦いをもたらす者(マース)
  • 第2組曲 金星・・・平穏をもたらす者(ヴィーナス)
  • 第3組曲 水星・・・翼のある使者(メルクリウス)
  • 第4組曲 木星・・・喜びをもたらす者(ジュピター)
  • 第5組曲 土星・・・老いをもたらす者(サタン)
  • 第6組曲 天王星・・・魔術師(ウーラヌス)
  • 第7組曲 海王星・・・神秘家(ネプチューン)

大オーケストラ編成で、演奏時間は50分程度です。コンサートでは、組曲からいくつか抜粋して演奏されることもあります。

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聴きどころは?

ホルストの「惑星」といえば、第4組曲の「木星(Jupiter)」が有名です。中間部の3拍子のメロディーは、「喜びをもたらす者」という標題ににある通り雄大で厳(おごそ)かでありながら、すべてを包み込むような優しさに溢れた感動的なメロディーとなっています。このメロディーはクラシック音楽だけではなく多くのメディアでも使われていますので、聴いたことがある方も多いと思います。また「火星」の三連符の始まりも圧巻で、まさに「戦の神」の行進を連想させます。

「天王星」も興味深い冒頭で始まります。この部分は「ソ→ミ→ラ→シ」と進行しますが、それぞれをドイツ語表記で表すと「G→S(ES)→A→H」となり、ホルストは自身の名前に使われているアルファベットでメロディーを表現したと言われています。

「我は汝に誓う、我が祖国よ」について

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組曲「惑星」のなかの第4組曲「木星」を、管弦楽付きのコラール(※1)として編曲した作品です。現在ではイギリスの愛国歌、イングランド国教会の聖歌としてイギリス国民に愛されています。歌詞は当時外交官だったセシル・スプリング・ライスによって付けられ、
1926年、第1次世界大戦の休戦協定記念式典での演奏以降、毎年11月11日に戦没者追悼の歌として歌われるようになりました。

また、友人の作曲家ヴォーン・ウィリアムスが監修した讃美歌集「ソングス・オブ・プライズ」に収録された際に、「木星」の主題を基にした作品は、ホルストが住んでいた地名から「サクステッド」と名付けられています。

※1、コラールとはルター派の教会で歌われる讃美歌のことです。

楽曲編成は?

「木星」中間部の雄大なメロディーと、前述のスプリング・ライスの歌詞で構成されています。イングランドにとって重要な人物の葬儀でも、その人物を讃えるためにしばしば演奏され、エルガーの「威風堂々」と同じく、イギリス国民にとっての第2の国歌として息づいています。

聴きどころは?

メロディーは「木星」の中間部と同じですが、「我は汝に誓う、我が祖国よ」で大切なのはその歌詞にあります。第1番ではイングランド祖国への忠誠心が歌われ、「And there’s another country(そしてもう一つの祖国がある)」という歌詞から始まる第2番は、キリスト教的理想郷(天国)が高らかに歌われます。

最後の歌詞「かの国が歩む道のりは穏やかで、その先には常に平和である」の部分も聖書の「箴言(しんげん)」から採用されており、ホルストの雄大なメロディーとともに美しい歌詞も堪能することができます。

まとめ

今回はホルストの組曲「惑星」と「我は汝に誓う、我が祖国よ」について解説しました。ホルストは何事にも勉強熱心で、さまざまなモチーフから音楽を作曲した人物でした。今回ご紹介した「惑星」も占星術の知識を取り入れるなど、とてもユニークな発想だと思います。こうした知識を得てから改めて作品を聴いてみるのもクラシック音楽の楽しさだと思いますので、ぜひホルストの「惑星」をもう一度聴いてみてはいかがでしょうか。

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