アレクサンドル・ボロディン「交響曲第2番」「イーゴリ公・ダッタン人の踊り」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]ボロディン:交響曲全集、だったん人の踊り 他

アレクサンドル・ボロディン(以下ボロディン)の代表作といえば「イーゴリ公」です。そのなかでも、第2幕で流れる「ダッタン人の踊り」は今もなお演奏会のプログラムで頻繁に演奏される名曲です。また、クラシック音楽のみならず、ポップスやドラマなどにも使用され、不朽の名曲となっています。そこで今回は、「ダッタン人の踊り」を含めたボロディンの名作2曲を解説します。

交響曲第2番とは

1869年に着手され、1877年に完成されたボロディンを代表する作品の一つです。クラシック音楽ファンの間では「ボロ2」という愛称で親しまれています。サンクトペテルブルクで行われた初演はあまり成功しなかったようですが、管弦楽を手直ししたのち1879年の再上演では成功を収めました。

ロシア的なメロディが色濃く、ムソルグスキーはこの作品を「スラヴの英雄の交響曲」と評しています。ボロディン自身も「交響曲第2番 勇士」として発表しました。
全4楽章構成で演奏時間はおよそ25分です。この時代のロシアの交響曲といえば、チャイコフスキーとボロディンの交響曲といわれるほど、ヨーロッパでも広く知られた作品です。

楽曲編成について

第1楽章・・・アレグロ ロ短調
第2楽章・・・スケルツォ、プレスティッシモ、へ長調
第3楽章・・・アンダンテ、変ニ長調の3部形式
第4楽章・・・フィナーレ、アレグロ、ロ短調、ソナタ形式

大きな編成となっており、使用される楽器は次の通りです。

  • フルート
  • ピッコロ
  • オーボエ
  • クラリネット
  • ファゴット
  • ホルン
  • トランペット
  • トロンボーン
  • チューバ
  • ティンパニ
  • トライアングル
  • タンブリン
  • シンバル
  • バスドラム
  • ハープ
  • 弦楽5部

聴きどころは?

ボロディン自身が「勇士」と発表したように、第1楽章から迫力と重厚感のある構成が特徴で、全体もまさに「雄大」な作品となっています。第3楽章から第4楽章は続けて演奏される「アタッカ」となっており、第4楽章はフィナーレにふさわしいテンポの良い、空を駆け抜けるような作風が聴く人の心を掴みます。

エピソード

19世紀から20世紀にかけて活躍した指揮者・ワインガルトナーはボロディンについて次のような言葉を残しています。

「ロシアとロシアの国民性を知ろうとするなら、チャイコフスキーの交響曲6番とボロディンの交響曲を聴くだけで十分である」

このような言葉から考えると、ボロディンの交響曲の完成度がいかに高かったかということがわかります。

イーゴリ公・ダッタン人の踊りとは

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「イーゴリ公」は「5人組」の理論的指導者であったスタソフの勧めで作曲されたボロディンのオペラです。12世紀のキエフ公国(現ウクライナ)を舞台に、イーゴリ公が遊牧民族ポーロベツの侵略から人々を守る物語です。ロシアの叙事詩「イーゴリ遠征物語」を元にボロディン自身が台本を執筆しました。序幕と4幕からなる構成となっていますが、1887年にボロディンが急逝してしまったため、同じ「5人組」のリムスキー・コルサコフとその弟子のグラズノフによって補筆されました。

リムスキー・コルサコフが序幕、1幕、2幕、4幕、第3幕「ダッタン人の行進」の未編集部分を補筆し、グラズノフは第3幕の編曲を担当しました。1890年、サンクトペテルブルク、マリインスキー劇場で初演され、20世紀初頭になるとニューヨークのメトロポリタン劇場でも上演されています。

作品全体はおよそ3時間ある大作ですが、とくに第2幕で流れる「ダッタン人の踊り」が有名で、単独で演奏される機会の多い作品となっています。クラシック音楽の中でも屈指の名作で、さまざまなジャンルでアレンジされています。舞台では、負傷して囚われた主人公・イーゴリ公の気晴らしのために、敵将コンチャークが開いた宴会の場面で流れます。

ボロディンは「ダッタン人の踊り」の場面で「ドローン」という音楽的技法を巧みに使用しています。ドローンとは、低音部で高さの変わらない音が鳴り続ける技法のことです。この技法を取り入れることにより、ボロディンはロシアの民族的音楽をうまく表現しています。

楽曲編成について

使用される楽器は以下の通りです。

  • ピッコロ
  • オーボエ
  • フルート
  • クラリネット
  • ファゴット・ホルン
  • トランペット・トロンボーン
  • チューバ・ティンパニ
  • 打楽器・ハープ
  • 弦楽5部

聴きどころは?

ロシア叙事詩やロシアの民族的音楽に加え、ボロディンの持つオリエンタリズムが遺憾無く発揮されているのが特徴です。場面転換もわかりやすく、全体的にとても情熱的な作品となっています。特に、音楽全体が上下に変動し、うねるような表現が見事な作品といえるでしょう。

まとめ

今回はボロディンの2つの作品をご紹介しました。交響曲第2番はあまり聴き慣れない作品かもしれませんが、とてもロシア的で情熱的な作品です。ボロディンが作曲した当時は、ベルギーなどのヨーロッパでも演奏され高い評価を得ました。どちらの作品も聴いていて元気が湧いてくる作品なので、テンションを上げたいときにはぜひ聴いてみてください。

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