出典:[amazon]Schumann: Complete Piano Works
シューマンの作品はジャンルの幅が広いことで知られていますが、その中でも特に有名な作品はピアノ曲と歌曲に多くなっています。この記事では、そのピアノ曲の中でも、クラシック経験者であれば演奏機会の多い「子供の情景」についての解説と、作曲者本人についての紹介をしていきます。
シューマンの作品について
特徴
シューマンは、出版業をしていた父親の影響を受けていたため、幼いころから文章を書いていたり、小説に夢中になったりしていました。シューマンの作曲作品は、そういった文学の才能もあったためか、文学的な要素が感じられると考えられています。また、作品の演奏に関しては解釈が演奏家によって大きく変わる作品が多いため、ピアニストによって作品の演奏の仕方が変わってくるという点も特徴的です。
個人的には、そのような演奏の違いについても、文学の影響を受けたシューマンならではなのかもしれないと感じています。例えば、小説を読んだ後の感想や解釈は、人によって大きく変わることがあります。それと同じように、文章に影響を受けて作曲を行うことがあったシューマンの作品も、演奏側の解釈で変化が起きやすくなっているのかもしれません。
弾き手によって音楽が変わるということから、演奏者にとっては解釈を考える楽しみがある作曲家だと思います。
代表ジャンルとその作品
冒頭でジャンルの幅が広いと紹介しましたが、これには理由があります。例えば、シューマンが30歳の年にあたる1840年は、この年の内に120曲を越える歌曲作品を書いていました。このことからこの年は、シューマンの「歌曲の年」と呼ばれています。また、代表作としては「ミルテの花」が有名です。
さらに翌年の1841年は「交響曲の年」と呼ばれています。この年に、シューマンの完成されている交響曲としては1作目となる「交響曲第1番 春」が作曲されました。
その翌年は「室内楽曲の年」と呼ばれ、代表作「ピアノ五重奏」や「ピアノ四重奏」などが作曲されています。このように、年ごとにジャンルを変えていったことによって、シューマンの作品ジャンルは幅広くなりました。
シューマンのエピソード
リストとの関係
リストはシューマンのことを、とても早い段階から評価していたと言われています。例えばこの記事で紹介する「子供の情景」は、リストが感動した作品としても知られていて、その内容はシューマンへの手紙でも伝えられました。
また、シューマンの作品をリストに献呈すると、その返礼としてリストの作品が献呈されたこともあります。さらに、リストは自身のコンサートでシューマンの作品を演奏していました。
シューベルトの交響曲
シューベルトが亡くなった後、メンデルスゾーンの指揮によって初演が行われたシューベルトの交響曲があるのですが、この作品は、実はシューマンが発見したものでした。このことから、シューベルトの遺された交響曲を世に出すために一役買っていたというシューマンの裏エピソードは、その交響曲と共に知られています。
「子供の情景」の解説
作品の紹介
シューマン作品の中でも特に有名な作品「子供の情景」は、そのタイトルから子供用の作品集だと思われることが多いようですが、実際には大人のための作品集です。コンセプトとしては、大人が子供の心を思い出すための作品ということになっているため、そこを理解して楽譜を見るだけでも印象が変わってきます。
13曲で構成されているピアノ小品集ですが、中でも特に有名なのは「第7曲:トロイメライ」です。そこで、演奏解説は「トロイメライ」に絞って行います。他にも「第1曲:異国から」や「第3曲:鬼ごっこ」も有名です。
全て演奏してもそこまで演奏時間が長くなる作品集ではないので、もし興味があれば挑戦してみて下さい。
難易度について
大人のための作品集と紹介しましたが、だからと言って難易度がとても高いという作品ではありません。曲の解釈が演奏家によって大きく変化する作品のため、考えることは必要ですが、単純なテクニックとしては比較的演奏しやすい作品です。
「トロイメライ」の弾き方解説
「トロイメライ」は、日本語にして「夢」というタイトルでも呼ばれることがあるように、夢を見ることを意味する言葉です。そのイメージは忘れずに持っておきながら、何度も繰り返される似た音形の表現についてもしっかりと考える必要があります。
例えば、最初のドファで始まる流れと同じような形で進行しているフレーズが、繰り返し込みで8回登場していますが、それらの表現が全て同じ調子では聴いていても弾いていても面白くないと感じませんか?
そうならないように、1回1回のフレーズについて、またフレーズの頭の弾き方について、よく考えながら演奏することが大切になります。
また、それらの表現について考えることと同時に、フレーズの始まりと終わりをしっかりと意識して演奏することで、曲の流れも見やすくなります。その流れを切ってしまわないようにするために、長音はペダルだけに頼るのではなく、指でできるだけつなげて演奏できるように練習することも必要です。この時の注意点として、押さえている指に力が入りすぎてしまい、ただ鍵盤を押さえつけているだけになってしまわないように気をつけてください。
コメントを残す