ヨハン・セバスティアン・バッハ「G線上のアリア」の解説と分析。楽器の構成や聴きどころは?

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TBS系のドラマ「G線上のあなたと私」を知っていますか?このドラマのヒロインがヴァイオリンを始めるきっかけになったのがヨハン・セバスティアン・バッハ(以下バッハ)作曲の「G線上のアリア」なのです。今回は、バッハが作曲した1000曲以上もある中から「G線上のアリア」をピックアップしたいと思います。

「G線上のアリア」を解説!

実は「G線上のアリア」のアリアはバッハが今の形を作ったわけではありません。すこしややこしいかもしれませんがもとになっている曲を作ったのがバッハなのです!もとになっている曲とは「管弦楽組曲第3番 BWV1068」の2曲目「アリア」です。

この曲は、現在のようにヴァイオリンの曲ではなく弦楽器の他にトランペット、オーボエ、ティンパニなども加えた「合奏形式」の曲で祝祭的で華やかな雰囲気が漂い、当時はやっていた「フランスの組曲」の形式を取り入れた作品で17世紀に作曲されました。

しかし、バッハが生きていた時代にこの曲は有名にならず、死後100年過ぎたあたりから少しずつ世の中に回るようになりました。バッハは、カントルという演奏者や指揮者など、まとめると音楽監督というお仕事についていました。それにより毎週行われる礼拝で演奏する教会カンタータの作曲もお仕事の一部のため5年間で300曲も作曲したと言われており、その時に作られた作品だと言われています。

そして、その後この曲をヴァイオリンの曲に編曲したのがヴァイオリニストのアウグスト・ヴィルヘルミ(以下ヴィルヘルミ)です。バッハが亡くなった後に編曲されたためバッハが意図として作った作品とは少し離れているかもしれませんね。「G線上のアリア」という曲名に関しては、「G線だけで弾けるようにしたため」と言われております。

もともとはニ長調の曲ですがハ長調に移調することで「G線」のみで演奏することが出来るようになりました。G線というのは、ヴァイオリンの最低音の弦になります。ヴィルヘルミは、他にも多くの名曲をヴァイオリン用に編曲しました。

「なんでG線にしたのか」と聞かれますとはっきりとした根拠がないので難しい話ですがこの時代は「G線だけで演奏する」という一種の芸が流行っていたため「G線」を用いたと言われております。

曲の分析

この曲はとてもスローテンポの曲です。スローテンポというと速いパッセージなどはないためあまり難しく思われませんが、伸ばしている音でどう人の心を掴むのか、それは演奏者の力量にかかっているため演奏のテクニックというよりか「表現力」が試される曲になっています。

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最初の1小節目でヴァイオリンは4拍音を伸ばし2小節目の0.5拍目でやっと動き出します。しかし、2小節目のタイミングでピアノとヴァイオリンは半音の違いにより「ぶつかり」が生じます。最初の小説は和やかに緩やかな雰囲気が漂っていますがこの「ぶつかり」により、いきなり「緊張感」が感じられます。この「緊張感」に向けてヴァイオリニストはクレッシェンドをかけてこの「ぶつかり」に向かいます。

簡単に言うと、1小節目はジェットコースターに乗り頂上に向けてどんどん上り2小節目で一気に降りる感じです。そして3、4小節目でこの曲の中で1番レベルが高いと言われている「マイナーキー」へ転調します。雰囲気が落ち込んでいる中5、6小節で再び「メジャーキー」となり温かい雰囲気に戻ります。このように1~5小節は1小節ごとに表情を変えて作っています。

楽器構成

基本的には、ピアノを伴奏にヴァイオリンがソロとして演奏する曲ですが、伴奏をピアノではなくオーケストラや吹奏楽に代えた楽譜も存在します。吹奏楽版では、フルートやクラリネット、サックス、トランペット、チューバといったオーソドックスな楽器がやはり使われています。

聴きどころ

この曲の聴きどころは分析の所にもあるように「1小節ごとに表情を変えて作っている」所です。これは、スローテンポだからこそできる構成だと思います。基本的にメロディは4、8、12、16など4小節区切りでフレーズを作ります。

勿論、今は変拍子の曲や拍が読みづらい楽曲も沢山出ているので一概に言えませんが、音楽の基本で一番多い拍子は4分の4拍子です。吹奏楽コンクールで用いられるマーチなどは8小節、16小節の高音楽器による華やかなメロディから一変して次の小節からは低音楽器によるずっしりとしたメロディに移り変わります。やはりこの低音楽器も1小節のフレーズではなく、8小節や16小節ぐらいはこの低音楽器にしか出せない雰囲気が漂います。

しかし、「G線上のアリア」に関しては、1小節ごとに表情が変わるため飽きずに聴くことが出来ます。また、演奏者一人一人の表現方法によってはもっとテンポを揺らしたり、ためたりなどこの曲自身を「自分の物」にして噛み砕いて演奏することによって演奏者一人一人の「色」が出る曲だと思います。

なので、この曲を聴く際は一人の演奏者の曲を聴くのではなく、「G線上のアリア」の聴き比べをしてほしいと思います。それにより、その人の「色」が見えてくると思いますから。

まとめ

今回は「G線上のアリア」について簡単にまとめさせていただきました。スローテンポで特に難しいパッセージが出てくる曲ではないので音楽の時間で鑑賞やリコーダーをやった方もいると思います。

確かにメロディ自体はとても単純ですがふたを開けると1小節ごとに表情を変え、様々な空間に連れていかれる曲になっています。この曲は3分、長くても5分くらいの曲なので是非「G線上のアリア」の聴き比べをしてみて下さい。新たな発見があるかもしれませんよ。

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