アルバン・ベルクの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作6選

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新ウィーン楽派の中心的人物として、20世紀の前衛音楽に多大な影響を及ぼしたアルバン・ベルク。師シェーンベルクの下で無調音楽と12音技法を学んだベルクは、オペラ『ヴォツェック』の成功により、その名声を不動のものとしました。きわめて前衛的でありながらも、ベルクの作品には後期ロマン派を想起させる雰囲気が漂い、聴衆を魅惑の世界へと誘います。そこで今回は、不思議な魅力溢れるベルク作品の特徴と、おすすめ代表曲を6曲紹介します。

アルバン・ベルクの作品の特徴や評価について

ベルクの作品の特徴について解説します。現代音楽は難解だと思われがちですが、ベルクは現代音楽にロマン派の要素を取り入れました。

12音技法に潜むロマン主義

シェーンベルクの元で学び、アントン・ヴェーベルンらと共に新ウィーン楽派の1人に数えられるベルク。ベルクの作品の特徴は、無調音楽や12音技法の中に後期ロマン派的抒情性を込めたことにあります。これは一見すると矛盾しているように思えるかもしれません。

しかしベルクは、無調や12音技法だからこそ表現できる「音楽の可能性」を追求し、これらにロマン派的抒情性を溶け込ませることにより、より深い「人間心情」の表現に果敢に挑みました。

そしてオペラ『ヴォツェック』の完成により、その頂点に達したベルクは、師のシェーンベルクやヴェーベルンとは異なる道を歩むことになります。オペラ『ヴォツェック』に対する意見は賛否両論あるものの、20世紀という時代を象徴する重要な作品として、これからも多くの人々に受け継がれて行くでしょう。

おすすめ代表作6選

アルバン・ベルクのおすすめ作品を紹介します。なかには初演後に暴動騒ぎとなった作品もありますので、ぜひ聴いてみてください。

オペラ「ルル」

劇作家ヴェーデキントによる戯曲『ルル2部作』を元に、ベルク自らが台本・作曲を手がけたオペラです。1929年に作曲が着手され、台本はヴェーデキントの『地霊』と『パンドラの匣』を結合させる形で執筆されました。1933年、シェーンベルク50歳の誕生日に第2幕の「ルルの歌」が献呈されています。

その後も作曲は続けられたものの、1935年にベルク本人が敗血症によりこの世を去ったため、本オペラは未完の大作となりました。しかしベルクの死後、1937年に最初の2幕と5曲編成の組曲が初演され、フリードリヒ・チェルハによる補筆後、1979年に全3幕のオペラとして初演される運びとなりました。

抒情組曲

1924年から1926年にかけて作曲されたベルクを代表する弦楽四重奏曲です。1927年にウィーンにて初演され、作品は友人で作曲家のツェムリンスキーに献呈されています。『抒情組曲』というタイトルは、ツェムリンスキーの同名作品より引用されたものです。

その一方で『抒情組曲』というタイトルには、ハンナ・フックス=ロベッティン夫人とベルクの不倫の恋が暗示されているとも言われています。本作は全6楽章で構成され、演奏時間はおよそ30分です。随所に12音技法が施されたベルクの傑作として、今日でも高い人気を獲得しています。

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アルテンベルク歌曲集

全5曲からなる声楽と管弦楽のための歌曲集です。ベルク初のオーケストラ曲という記念碑的作品でもあります。作品は1912年に完成し、翌年シェーンベルクの指揮によりウィーンにて初演を迎えました。しかし作品があまりにも斬新過ぎたため、演奏後に聴衆が暴動を起こし、裁判沙汰にまで発展するという「伝説」も生まれました。

全体の演奏時間はおよそ10分程度です。しかし最終的に5曲すべての演奏が行われたのは、発表から約40年を経た1952年になってからのことでした。

管弦楽のための3つの小品

ベルクが作曲した唯一の管弦楽曲です。別名『3つの管弦楽曲』としても知られています。シェーンベルクの誕生日のために作曲が開始されましたが、第1・3楽章は完成したものの2楽章が完成せず、ついには誕生日に間に合わなかったという逸話が残されています。

また、ベルクが敬愛したマーラーの影響が大きく見られるのも本作の特徴です。1923年にアントン・ヴェーベルン指揮により第1・2楽章の初演が行われ、改訂を経たのち、1930年に全体初演となりました。

各楽章には、それぞれ「前奏曲」「輪舞」「行進曲」といったテーマが付けられています。演奏時間は20分程度です。

室内協奏曲

全3楽章で構成されたピアノ・ヴァイオリン・管弦合奏のための協奏曲です。1923年、こちらはシェーンベルク50歳を祝う誕生日のために作曲が開始されましたが、またもや間に合わず、最終的に1925年に完成となりました。

1927年に初演を迎えた本作は、随所に「3」という数字が暗示的に用いられた神秘的な作品です。全楽章は通しで演奏され、演奏時間は40分程度となっています。

ピアノソナタ

生前にベルクが発表した唯一のピアノソナタです。シェーンベルクの元で学んだ卒業制作として、1907年から1908年にかけて作曲されました。ベルクは2楽章以降の制作を迷っていたようですが、シェーンベルクの指導により、最終的に単一楽章として発表されています。

1911年に出版と初演が行われたものの、初演の際には、作品のあまりの斬新さに聴衆が暴動を起こしたと伝えられています。演奏時間は約10分です。

まとめ

アルバン・ベルクの作品について解説しました。現代音楽は複雑で難解な印象があり、またそれは真実でもあるのですが、その中においても、ベルクの作品は比較的耳馴染みの良い作品が多いと思います。これまでベルクの作品を聴いたことのない方は、今回の記事で紹介した作品を参考に、ベルクの作品及び現代音楽に触れてみてはいかがでしょうか。

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