コダーイ・ゾルターン「ハーリ・ヤーノシュ」「<孔雀は飛んだ>による変奏曲」の解説・ 分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]The Choral Music of Kodaly

20世紀ハンガリーを代表する作曲家コダーイ・ゾルターン(以下コダーイ)。幼少期から天才的な才能を発揮したコダーイは、音楽の分野にとどまらず、音楽学者、教育者、国際会議の会長などさまざまな分野で活躍しました。そんなコダーイの代表作として知られるのが、今回紹介する「ハーリ・ヤーノシュ」と「<孔雀は飛んだ>による変奏曲」です。どちらも演奏機会の多い作品ですので、どこかで聴いたことのある方もいるかもしれません。では、この二曲にはどのような背景があるのでしょうか。楽曲編成などを踏まえながら紹介します。

組曲「ハーリ・ヤーノシュ」について

「ハーリ・ヤーノシュ」は1927年に作曲された管弦楽用の組曲です。バルセロナのリセウ劇場にて、パブロ・カザルス管弦楽団によって初演されました。6曲構成の組曲であり、コダーイの作品でもっとも演奏機会の多い作品です。6曲にはそれぞれ標題が付けられており、それぞれのタイトルと特徴は以下の通りです。

第一組曲「前奏曲・おとぎ話は始まる」
「くしゃみ」の表現から始まる楽しい作品。

第二組曲「ウィーンの音楽時計」
ゼンマイ仕掛けのオルゴールを表現しています。

第三組曲「歌」
無伴奏のヴィオラの音色が美しい組曲です。

第四組曲「戦争とナポレオンの敗北」
ナポレオンとの戦争風景が描かれています。音楽記号ffffの効果が抜群です。

第五組曲「間奏曲」
ハンガリー民謡が用いられています。

第六組曲「皇帝の延臣たちの入場」
行進曲らしい軽快な作品で、オーストリア宮廷の様子を描いています。

ハンガリー晩「ほらふき男」がモチーフ

「ハーリ・ヤーノシュ」とは、ハンガリーの詩人ガライ・ヤーノシュの作品に登場する、酔っ払い親父の名前です。町の居酒屋で酔っ払い、他の客に向かってホラ話をするハーリ・ヤーノシュ。その話とは「7つの頭をもった竜を退治した話」や「ナポレオンに勝って捕虜にした話」など荒唐無稽なものばかり。しかし他の客も、酔っ払いの話を面白がって聞き入ります。そんな楽しい物語を基に作曲されたのが、組曲「ハーリ・ヤーノシュ」です。

特に第二組曲「ウィーンの音楽時計」はキラキラとしたおもちゃ箱を見ているようで、とても印象的で楽しい作品です。

もとは台本付き音楽劇だった

「ハーリ・ヤーノシュ」は、もともと上記の話を基にして作られた「5つの冒険」というタイトルのジングシュピーゲル(台本付き音楽劇)として作成されました。その中から6曲を抜粋して編曲されたのが、組曲「ハーリ・ヤーノシュ」です。組曲への編曲には、友人のバルトークの助言があったと言われています。

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<孔雀は飛んだ>による変奏曲について

1939年に作曲された管弦楽曲です。ハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」がモチーフとされ、コダーイの最高傑作と評価する人もいる隠れた名作です。ハンガリーでは、孔雀は「希望の象徴」とされ、オスマン帝国の支配下に置かれていたマジャール人の解放を歌った歌とも言われています。それと同時に、作曲当時に勢力を強めつつあったファシズムへの抵抗の意味も込められています。

オランダのアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団創立50周年を記念に作曲され、1939年、ウィレム・メンゲルベルク指揮により初演されました。主題と16の変奏曲で構成されており、コダーイの民族愛の満ちた作品として親しまれています。演奏時間はおよそ25分で、「孔雀変奏曲」や「<孔雀>による変奏曲」のタイトルでも知られています。

第13変奏は葬送行進曲のスタイルがとられ、金管楽器による物悲しいメロディーが印象的です。終曲では「孔雀は飛んだ」の主題で再び登場し、テンポアップしながら自由への喜びや情熱が高らかに歌われ、壮大なフィナーレとなります。

ブダペスト中心に住んでいたコダーイですが、コダーイが住んでいたコンドミニアムは現在コダーイ博物館として一般公開されています。その展示品の中に、本作の自筆譜が展示されているそうです。

作品の構成について

本作は大まかに6つの構成に分類されています。

1、主題提示(モデラート)
2、変奏1〜6(コン・ブリオ)
3、変奏7〜10(ヴィーヴォ)
4、変奏11、12(アンダンテ・エスプレッシーボ)
5、変奏13〜16(葬送行進曲)
6、フィナーレ

吹奏楽曲として日本でも人気作品

日本では管弦楽曲としての知名度は低い本作ですが、1990年代頃から吹奏楽の分野で人気が出始め、今日ではコンクールの定番曲として人気となっています。吹奏楽曲としてさまざまなアレンジがあるようですが、いずれにしても高難易度曲として知られています。吹奏楽をやられている方は是非一度聴いてみてください。

まとめ

「ハーリ・ヤーノシュ」と「<孔雀は飛んだ>による変奏曲」について解説しました。添付のYouTube動画を見ていただくとわかる通り、今回紹介した2曲は、いずれも楽しげな作品として現在も親しまれています。とくに「ハーリ・ヤーノシュ」は、初めて聴いた方でも耳馴染みが良い作品だと思います。20世紀は前衛作品が流行した時代でしたが、コダーイの作品は、ハンガリーの民謡と伝統的音楽が融合した、色鮮やかな作品が多いのが特徴です。この記事を機会に、ぜひコダーイの他の作品も聴いてみてください。

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>>コダーイ・ゾルターンってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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