[amazon]Heitor Villa Lobos, Sa Musique Et Ses Interpretes
ヴィラ・ロボスは20世紀のブラジルを代表する作曲家です。豊かな民俗音楽の要素と西洋のクラシック音楽を融合させたロボスの音楽は、国際的に高い評価を獲得したと同時に、母国への愛が余すことなく表現されています。
なかでも彼が生み出したギター曲は、ロドリーゴといった作曲家たちと並び、今日でもギター曲の定番として多くの演奏家に愛されています。
そんなヴィラ・ロボスとはどのような人物だったのでしょうか。今回はエピソードを交えつつ、その生涯を解説します。
ヴィラ・ロボスの生涯について
ヴィラ・ロボスはどのような人生を歩んだのでしょうか。その人生を見てみると、一般的な作曲家とは大きく異なる道を歩んだようです。
ブラジルに生まれる
ヴィラ・ロボスは1887年3月5日、ブラジルのリオデジャネイロに生まれました。父ラウルは公務員でありながら、図書館司書や音楽をたしなむ教養人だったそうです。ヴィラ・ロボスが生まれた同時のブラジルは、近代化に向かう真っ只中の時代。奴隷制が廃止され、人々が自由に人生を選択できる時代の始まりでもありました。
そんな中、ヴィラ・ロボスは父が自宅で開催する定期音楽会を影から見ながら、独学で音楽を学んだそうです。正式な音楽教育こそ受けなかったものの、チェロやクラリネット、クラシックギターを学び、父の急死後は映画館や劇場オーケストラで演奏して家計を支えていました。
やがて18歳になったヴィラ・ロボスは、さらなる音楽の可能性を追求すべく、ブラジル先住民の音楽収集にとりかかります。これに費やした時間は、およそ10年間。
長きにわたる民俗音楽研究の末、ヴィラ・ロボスはブラジル人にしか生み出せない新しい音楽に辿り着いたのでした。
また1915年から1921年にかけて、主にリオデジャネイロでコンサートを開くなど、自作の公開の場を増やしながら、徐々にその知名度を高めて行きます。
ヨーロッパでの成功
しかしそんな彼も、西洋クラシック音楽とブラジル音楽のどちらのスタイルを優先するかという大きな葛藤に悩んだそうです。彼の交響詩『アマゾネス』はまさにそうした苦難の時代に書かれた作品であり、また同時に、葛藤を乗り越えるための手段として模索された作品でもありました。
そんな苦しい時代にあったヴィラ・ロボスを後押ししたのが、ピアニストのルービンシュタインです。ピアノ曲集『赤ん坊の家族』の初演を演じたルービンシュタインは、この作品に対し「ブラジルモダニズム最初の不朽の名作」と絶賛し、ヴィラ・ロボスにヨーロッパへの演奏旅行を勧めます。
これによりフランス・パリへ渡ったヴィラ・ロボス。1927年から1930年にかけて同地に滞在し、レオポルド・ストコフスキーやセルゲイ・クーセヴィツキーといった著名な音楽家たちと知り合い、友人関係を築きます。
音楽面では、ベートーヴェンやバッハに心酔した時期でもあり、大作曲家の作品をベースとしたブラジル曲へのアレンジに着手したのもこの時期からです。
誉高い晩年
第2次世界大戦後、ヴィラ・ロボスはブラジルを代表する世界的作曲家として認知され、その活動はヨーロッパだけにとどまらずアメリカやイスラエルなどでも高い評価を獲得しています。その人気は晩年になっても衰えることなく、指揮者としても活動するかたわら、膨大な作曲依頼を受けていたそうです。この時期に書かれた作品としては『交響曲第11番』やオペラ『イェルマ』などがありますが、いずれもヴィラ・ロボスを代表する作品として、今日も親しまれています。
生涯にわたり音楽家として意欲的に活動し続けたヴィラ・ロボス。
しかし1948年に膀胱がんを患ったことにより、次第に体調が悪化し始め、1959年、故郷リオデジャネイロにてその生涯を終えました。享年72歳でした。
葬儀には多くのブラジル国民が駆けつけ、偉大なる音楽家の死を悼みました。
ヴィラ・ロボスのエピソードについて
ヴィラ・ロボスのエピソードについて紹介します。
彼の情熱的な作品は、祖国への愛がつまったものとも言えるでしょう。
変わり続ける開拓者
作曲をほぼ独学で学んだヴィラ・ロボス。しかしその才能は幼少期から花開き、パリで絶賛されるまでに成長します。彼の音楽スタイルを一言で表すと、まさに「改革」という言葉が相応しいのではないでしょうか。
常に変化を求め、斬新な音楽を追求するその姿勢は、ストコフスキーやコープランドといった同時期の音楽家や芸術家たちに強い反響をもたらしました。
またブラジル民俗音楽と西洋クラシックを融合させたヴィラ・ロボスですが、その後も彼独自の表現方法を模索し、他のどのジャンルにも属さない新しい作品を生み出しています。
情熱的でダイナミックな作品で人気を博したヴィラ・ロボス。そんな彼は、作曲家であると同時に愛国者でもありました。祖国ブラジルでは、たびたびコンサートを開催し、愛国的で教育的な音楽で人々を魅了したと言われています。
まとめ
ブラジルを代表する作曲家ヴィラ・ロボスについて解説しました。彼が試みた民俗音楽とクラシック音楽の融合は当時大きな話題となり、20世紀のクラシック音楽に新風を巻き起こしています。そしてその影響は今もなお衰えることなく、世界中の聴衆から愛されています。彼が生涯で作曲した作品数はなんと1000曲以上とも言われており、クラシック音楽ファンであれば、ぜひ追求してみたい作曲ではないでしょうか。この記事をきっかけに、ぜひヴィラ・ロボスの作品を聴いてみてください。
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