ミハイル・グリンカの作品の特徴及び評価。おすすめ代表曲3選

出典:[amazon]Mikhail Glinka: Songs and Romances

「近代ロシア音楽の父」として知られるミハイル・イヴァノヴィチ・グリンカ(1804-1857)。名前は聞いたことがあっても、どんな曲を作った人物か問われた時に、グリンカ作のメロディラインを思い浮かべられる方は意外にも少ないのです。
しかし、グリンカはロシアのクラシック音楽の基盤を築いた重要な人物で、後の大作曲家チャイコフスキーにも多大な影響を及ぼしているのです。つまり、ロシアのクラシック音楽をより深く知るにはグリンカの音楽にも触れなくてはいけないのです。

今回は、グリンカの作風、功績に触れつつ、グリンカの代表作を3つ選んでご紹介してきます。

グリンカの作風

グリンカは大変勉強熱心な人物で、生涯ずっと音楽の勉強や研究をしていました。
当時のロシアの音楽界ではまだロシアクラシックの基盤が出来上がっていなかったため、グリンカは西ヨーロッパのクラシック音楽を熱心に学びます。その後、ロシア的な要素を加え、独自の、そしてロシアの音楽を作り出しました。

20代の頃のグリンカ

音楽学校を卒業した頃のグリンカはまだ作曲家としての手腕は発揮していません。
卒業時にピアノ曲をいくつか遊び感覚で書いていますが、いずれも後に校正を入れてしっかりとした作品に仕上げなおしています。

音楽学校でピアノ、ヴァイオリン、声楽、作曲などを学んだグリンカは、作曲に興味を持ち、卒業後はしばし古典音楽の勉学を独自に進めていました。モーツァルトやハイドンの古典楽曲に親しみに、管弦楽法の知識を深めます。それを元に室内楽曲を作曲していたのがちょうど20代の頃です。

自分の音楽を築き上げた30代~40代

病弱な身体を休めるために訪れたイタリアは、グリンカ音楽を発展させることになります。
当時の売れっ子作曲家、ドニゼッティ、ベッリーニ、メンデルスゾーン、ベルリオーズなどと直接会い、親睦を深めることができたことは、グリンカの音楽を発展させるきっかけになったことは言うまでもありません。さらに、イタリアに滞在していた3年間はミラノの地で音楽院長から直々に作曲の指導を受け、イタリアロマン派の音楽を学んでいます。
この時期に作曲した<<第六重奏曲>>や歌曲<<ヴェネチアの夜>>、<<勝利者>>にはイタリアらしい明るいカンティーナ様式が多用されています。

しかし、イタリア音楽が自身の音楽だとは思っていなかったグリンカは、自分の音楽の最終目的地を模索するようになります。
ドイツのベルリンに飛んだグリンカは、当時理論家として有名だったジークフリート・デーンに師事します。彼のもとで和声法、対位法を学びなおしたグリンカは作曲のルールに振り回されることなく、自身の音楽を貫くことができるようになったと後に回顧しています。

作曲家として、はっきりとした目的の下に作曲ができるようになったグリンカは、ここで初めてロシアの音楽を作るようになります。ベースは西ヨーロッパのクラシック音楽ですが、メロディラインにロシア独特の民俗音楽、民謡などを取り入れ、ロシアのクラシック音楽を確立していくのです。
その成功例がロシアオペラ「皇帝に捧げた命」でしょう。国民的オペラとして大変な人気を博し、グリンカの作曲家としての地位を確固たるものにしました。

教会音楽に捧げた晩年

名声を得た後のグリンカは、戦争や自身の健康状態に翻弄され、まともに大作を作曲できなくなります。そんな時に依頼されたのが教会音楽の作曲でした。ロシアの教会音楽を作曲する上で西欧の教会音楽に大変な興味を持ったグリンカは、熱意に動かされるまま単身ベルリンに飛びます。旧師デーンの元で教会音楽の研究を熱心に始めたものの、体調が悪化して1年もしないでこの世を去ることになります。

グリンカの音楽と功績

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西欧音楽も基礎から徹底的に学び、当時の流行音楽も現地でしっかり見聞きして学んだグリンカの音楽はロシアにクラシック音楽をきちんとした形で輸入しました。そして、ロシア的な要素を取り入れながら発展し、「五人組」、チャイコフスキー、ラフマニノフ、プロコフィエフへと脈々と受け継がれてきたのです。つまり、グリンカなくしてチャイコフスキーもラフマニノフもなかったといえるのです。

ロシアのメロディというのは大変独特で、当時のクラシック音楽に合わせるのは容易いことではなかったのです。それをグリンカはピアノでも、管楽でも、弦楽でも表現できるよう研究を重ね、ロシアメロディを管弦楽で表現するという新たな作曲手法を編み出すに至ったのです。この手法はチャイコフスキーらも多用しています。

グリンカは生涯に渡って作曲よりも音楽研究の方を熱心に行っていたので、作品は比較的少なめです。しかし、いずれも研究尽くされた確かな作曲法に基づいた美しいメロディのものばかりです。ロシア的な音楽が多いかと思いきや、エキゾチック性はそこまでない、西欧音楽にも非常に近いロシア音楽を耳にすることができます。

グリンカのおすすめ代表曲3選

グリンカの音楽はどれも独特の美しさを持っていますが、ここではあえて毛色の異なる3曲を選んでご紹介していきます。

オペラ<<ルスランとリュドミラ>> より序曲(1842年)

グリンカが二番目に手がけたロシアオペラの<<ルスランとリュドミラ>>は、グリンカの代表作としても名高いです。全5幕からなるこのオペラは演奏時間も3時間を超える大作であるため、なかなか通しで演奏されません。しかし、序曲は大変有名で、演奏時間も5分と短いことからよく単独で演奏されます。
明るく、活気付いたメロディラインが大変愉快な序曲で、実に飽きのこない曲になっています。独特のリズム感とちょっとエスニックな要素が加わった音楽はどこかチャイコフスキーの音楽を髣髴とさせるところもあります。

ピアノ曲<<「魔笛」の主題による変曲>>(1822年、1856年)

モーツァルトのオペラ<<魔笛>>は大変有名です。その序曲を聴いたことがある人であれば、グリンカのこの曲も興味深く聴くことができるでしょう。
休みなく紡ぎだされる音が美しく、心に響きます。モーツァルトらしさは残しつつも、グリンカらしいアレンジがきいており、新たな<<魔笛>>の魅力を垣間見ることができるでしょう。
シンプルそうに聞こえる曲ですが、弾くのは決して易しくはありません。

管弦楽曲<<カマリンスカヤ>>(1848年)

グリンカは<<カマリンスカヤ>>を作曲する前、スペインの民俗音楽を管弦楽曲にする実験的作曲を行っていました。この手法が上手くいったことから、今度は自国ロシアのメロディを管弦楽曲にするために作ったのが<<カマリンスカヤ>>です。
今日、我々はロシアの様々な作曲家による管弦楽曲を当たり前のように耳にしていますが、その基礎を打ち立てたのが他ならぬ<<カマリンスカヤ>>なのです。
ロシア音楽が好きだという方は、ぜひ初代ロシアクラシック音楽も聴いてみてください。

まとめ

グリンカは西欧音楽を熱心に研究した上で、自国ロシアの音楽をいかにクラシック音楽に生かせるか、ロシアならではのクラシック音楽とは何かを模索し、ロシアクラシック音楽の基礎作りに貢献してきました。
世界には数多くの素晴らしいクラシック音楽作曲家がいましたが、グリンカほど熱心に他の人の音楽を研究し、学んだ作曲家はいたでしょうか。しっかり基礎を学びつくしたグリンカの音楽は、実に緻密で、美しさに隙がありません。流れるような美しいグリンカ音楽をぜひ体感してみてください。

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