ヴィラ・ロボス『交響曲第10番「アメリンディア」』『ブラジル風バッハ』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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ブラジル国民楽派をもっとも象徴する作曲家ヴィラ・ロボス。ヴィラ・ロボス作品の魅力は、なんといって爆発的なダイナミックさと感情表現の機微にあります。彼の作品を一度でも聴けば「情熱と冷静の共存」「静と動の躍動」といった物語が、目の前で繰り広げられているかのように感じることでしょう。

彼から生み出された音楽は、民俗音楽とクラシック音楽の垣根を超え、聴く人に新しい音楽的体験をもたらしてくれます。あらゆるジャンルで象徴的な作品を残したヴィラ・ロボスですが、今回は膨大な作品群の中から『交響曲第10番「アメリンディア」』『ブラジル風バッハ』の2曲を紹介します。

ヴィラ・ロボスの生涯

作品について解説する前にヴィラ・ロボスの簡単なプロフィールを見てみましょう。ヴィラ・ロボスは1887年、ブラジルのリオデジャネイロに生まれました。アマチュア音楽家であった父の影響により、幼少期から音楽に目覚め、チェロやクラシックギターを独学で学びます。やがて才能を開花させた彼は、映画館や劇場オーケストラのメンバーとして働き音楽家としてのキャリアをスタートさせました。

20世紀初頭に入りブラジル民俗音楽の収集に専心したヴィラ・ロボスは、その後クラシック音楽との融合を試み、独自の世界観を生み出すことに成功します。やがてヨーロッパでも彼の名が知られるようになると、パリを拠点としながらアメリカ、イギリス、イスラエルなどでも演奏活動を開始し、世界的な作曲家としての地位を確立するに至ります。

また祖国愛に溢れたヴィラ・ロボスは、ブラジルへの愛国歌なども手がけており、現在でもブラジル人にとっての「心の歌」として広く愛されています。彼の作曲への意欲は晩年になっても衰えることなく、オペラや交響曲、バレエ音楽などさまざまなジャンルで優れた作品を残しました。

なかでも今回紹介する『ブラジル風バッハ』はヴィラ・ロボスをもっとも代表する作品として知られており、現在でも多くのファンを魅了し続けています。1959年、72歳没。

『交響曲第10番「アメリンディア」』について

ヴィラ・ロボスは生涯で12曲の交響曲を作曲し、それらの多くに標題が付けられています。
その中でも本作は、ブラジル・サンパウロ市誕生400周年記念のために委嘱された作品であり、ヴィラ・ロボスにとっても記念碑的作品と言えるでしょう。作品は1952年から1953年にかけて作曲され、1957年にフランス・パリで初演が行われました。

全5楽章で構成されており、第1楽章は管弦楽飲みですが、残りの4つの楽章には独唱と合唱がつくという興味深い構成です。作中のテキストは宣教師ジョゼ・デ・アンシエタの伝説をベースに制作されており、それにより作品全体に豊かな物語性が注がれています。最終第5楽章ではサンパウロを礼賛するハレルヤが高らかに響き渡り、サンパウロの栄光を高らかに歌いあげます。

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また、物語の始まりを告げるかのような冒頭部分も大きな魅力の1つです。
余談ですが、ジョゼ・デ・アンシエタとはリオデジャネイロ創立に大きく関わった重要人物であり、同時にブラジルで最初の文筆家とも称され聖人の1人と言われています。

『ブラジル風バッハ』について

ブラジル民俗音楽を探求したヴィラ・ロボス。一方で、クラシック音楽においては大バッハに生涯魅了されていました。そうした中で作曲されたのが、本作『ブラジル風バッハ』です。この作品は9曲の組曲形式で構成され、1930年から1945年にかけて作曲されました。
組曲は通常、連続して演奏されることが多いですが『ブラジル風バッハ』は、そうした想定はなされておらず、あくまでも「バッハへのオマージュ」としての意図が強いようです。

また使用される楽器もとくに指定はなく、室内楽や管弦楽アンサンブルなど演奏形式も自由に変更可能です。作品としての完成度が高いことから、ヴィラ・ロボスが生み出したブラジル民俗とクラシック音楽の融合という意味において、最高傑作の1つとみなす人も多いようです。日本においては『ブラジル風バッハ』として知られている本作ですが、現在では原題ママの『バシアーナス・ブラジレイラス』のタイトルが用いられています。

現代版『ブランデンブルク協奏曲』とも称されている

『ブランデンブルク協奏曲』といえば、大バッハを代表する協奏曲集ですが、本作は「現代版ブランデンブルク協奏曲」とも称されるほど高い評価を獲得しています。その点において、バッハの研究に生涯をささげ、ブラジル音楽との融合を見事に成功させたヴィラ・ロボスの大きな功績と言えるでしょう。
作品にはバッハ音楽における典型的な対位法や和声が登場する一方、20世紀初頭に隆盛した、国民楽派の要素が余すことなく取り入れられている点が、本作の聴きどころとなっています。初めて本作を聴かれる方にとっては、第1番「8本のチェロのための作品」に驚くかもしれません。

まとめ

今回はヴィラ・ロボス作品の中でも、もっとも重要な作品2曲を解説しました。彼の作品をまだ聴いたことがない方でも「面白い!」と思っていただけると思います。普段聴き慣れない作品かもしれませんが、ヴィラ・ロボスの作品には、今日にも通じる情熱が込められています。この記事が、読者の方にとっての新たなクラシック音楽体験のきっかけになれば幸いです。

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