ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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クラシック音楽史上最高のドイツリート歌手の1人、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(以下ディースカウ)。オペラやリートの分野で国際的に高い評価を受け、その歌唱スタイルや表現力において非常に影響力のある存在でした。彼は特にフランツ・シューベルトやフーゴ・ウォルフ、リヒャルト・シュトラウスなどの作曲家の歌曲を得意とし、その深い理解と優れた表現力によって、数々の叙情的で感動的な名演を残しています。また指揮者としても成功を収め、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とも共演を果たしました。

タイム誌において「世界でもっとも偉大なリート歌手」と絶賛されたディースカウはどのような人物だったのでしょうか。

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの生涯

偉大な声楽家ディースカウはどのような人生を歩んだのでしょうか。

文学好きの少年

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウは1925年5月28日、文学研究者の父と音楽教師の母のもとに3人兄弟の末っ子として生まれました。現在でこそ「20世紀最高のドイツリート」と称されるディースカウですが、少年時代は父の影響もあり、文学好きの少年だったそうです。しかし音楽的家庭に育ったディースカウは、幼少の頃から演劇やオペラにも興味を示し、9歳の頃には母に連れられてワーグナーのオペラに親しんだと自伝で語っています。

その後16歳でようやく正式に声楽を学び始めたディースカウは、1942年、17歳でベルリン音楽院(現ベルリン芸術大学)に入学を許可され、音楽の道を歩み始めます。

第2次世界大戦中にデビュー

しかし時代は第2次世界大戦へ向かう真っ只中。戦争の足音は、次第にディースカウにも近づきます。ベルリン音楽院にて1年と1学期分を過ごしたのち、ディースカウはドイツ軍として召集となり、青春時代の一部を戦争により奪われることとなりました。ロシア戦線という過酷な環境の中で過ごしたディースカウでしたが、戦時中は兵士を集め歌曲を披露するなど、仲間たちを楽しませたと言われています。

その後1944年から45年にかけてイタリア・ボローニャ南部の歩兵団に所属したディースカウは、イタリアで捕虜となり1947年に初めてラジオ録音をするまで捕虜の生活が続いたそうです。そして同年ようやくドイツに戻ることが許されたディースカウは、歌手としてのキャリアをスタートさせ、翌1948年には早くも西ベルリン市立歌劇場の首席バリトンとして迎えられることとなりました。

同歌劇場はのちにドイツオペラにおける名門歌劇場に成長し、ディースカウはオペラを引退する1978年まで、芸術の本拠地としてこの劇場で活動を続けています。

最高の声楽家として

そんなディースカウにとっての最大の転機となったのが、1951年に開かれたザルツブルク音楽祭への出演です。指揮者フルトヴェングラーとの共演で歌ったマーラーの『さすらう若者の歌』が大成功を収めたことをきっかけに、イギリスデビューも果たし、ディースカウの名は一躍世界に知られることとなります。

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世界的バリトンとしての名声を獲得したディースカウですが、上述の通り1978年にオペラを引退すると、続いて1993年にはコンサートからも身を引き、以降は指揮や教育者としての道を歩み始めました。また晩年は音楽の他に絵画や執筆、朗読の分野にも進出しており、朗読家としても大きな評価を得ています。

声楽家・指揮者・朗読家とさまざまな分野で高い評価を受けたディースカウですが、年齢と共に体調を崩し始め、2012年5月18日、自宅にて眠るように息を引き取りました。享年86歳。詳しい死因はわかりませんでしたが、おそらく老衰だと思われます。

ディースカウの性格を物語るエピソードについて

ディースカウは世界最高のドイツリート歌手であったものの、彼のレパートリーはそれだけではありません。バロックから現代音楽まで、さまざまなジャンルで優れた歌声を披露しています。「時代に対する柔軟さ」もディースカウの魅力の1つです。

20世紀でもっとも偉大な声楽家

ディースカウはその生涯で400枚以上のレコード録音を残しました。これだけの枚数を録音したのは、後にも先にもディースカウただ1人であり、またそのレパートリーの豊富さは他の声楽家を圧倒しています。オペラや歌曲、オラトリオなどの宗教音楽はもちろん、さまざまな言語でも正確なパフォーマンスを披露したのは、ディースカウの大きな業績と言えるでしょう。それはディースカウの生来の才能によるものが大きいですが、それ以上に、彼が真摯に音楽に向き合った証でもあるのかもしれません。

ジャンル問わない柔軟性

バッハやシューベルト、マーラーなどの作品で名演を残したディースカウ。しかし彼のレパートリーにはフランス歌曲やアメリカ歌曲、さらには現代音楽の歌曲も含まれており、時代に対する柔軟性を垣間見ることができます。イギリス人作曲家ベンジャミン・ブリテンの代表作『戦争レクイエム』の初演に参加したのも、ディースカウの大きな功績の1つです。

ディースカウの歌声

ドイツリートの第1人者としてだけでなく、オペラ歌手としても誉高い業績を残したディースカウ。しかし彼のレパートリーは幅広く、ドビュッシーやラヴェルといったフランスのシャンソンや、シェーンベルクやベルクら現代音楽の作品もレパートリーに取り入れています。とはいえ、ディースカウを代表するものといえば、やはりシューベルトの歌曲やバッハの宗教音楽などのドイツ音楽が白眉です。
そこで今回は、シューベルトの代表作『鱒(ます)』とバッハの『カンタータ』をご覧ください。

まとめ

今回はディートリヒ・フィッシャー=ディースカウを紹介しました。クラシックファンの方であればご存じの方も多いかと思います。一方、今回の記事でディースカウの名前を初めて知った方もおられるでしょう。彼の透き通るような歌声は、まさに天与のものであると筆者は思います。歌曲やオペラ、宗教音楽を普段聴かない方でも、ディースカウの歌声が心に響く事まちがいなしです。この記事を機会に、ぜひディースカウの歌声を堪能してみてください。

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