アーロン・コープランド『オルガンと管弦楽のための交響曲』『市民のためのファンファーレ』の解説と分析。楽曲編成や聴きどころは?

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20世紀アメリカを象徴する作曲家アーロン・コープランド(以下コープランド)。ヨーロッパの伝統的なクラシック音楽の形式にとらわれない彼の作品は、同時代の作曲家だけでなく、後世の音楽家たちに大きな影響を及ぼしています。

また、指揮者・教育者としても力を尽くしたことから、アメリカのみならず、世界的にも高い評価を獲得しました。コープランドの作品には優れたものがいろいろありますが、今回はその中から、初期の代表作『オルガンと管弦楽のための交響曲』とアメリカン・スピリットの象徴である『市民のためのファンファーレ』を解説します。
どちらも、コープランドを知る上で欠かすことのできない作品ですので、ぜひ最後までお読みください。

アーロン・コープランドの人生

「アーロン・コープランドってどんな人?」という方のために、その生涯について簡単に解説します。

アーロン・コープランド(1900-1990)は、アメリカ・ニューヨークに生まれた、20世紀アメリカ音楽をもっとも代表する作曲家です。15歳で作曲家を志したコープランドは、フランス・パリで音楽を学び、帰国後、アメリカ音楽のアイデンティティを探求しました。
コープランドはアメリカの民俗音楽やポピュラー音楽からインスピレーションを受け、クラシック音楽に取り入れることで、アメリカ音楽の新たな地平を模索したことでも知られています。

代表作には『アパラチアの春』や『ビリー・ザ・キッド』などがあり、これらの作品はアメリカの大自然や歴史を音楽で表現し、国内外で高い評価を受けています。

また、広く聴衆に愛される音楽を生み出し、アメリカ音楽の国際的な評価を高めたのも大きな功績といえるでしょう。優れた教育者としても活躍したコープランドは、多くの若い作曲家を指導し、その影響はアメリカ音楽において今もなお続いています。

『オルガンと管弦楽のための交響曲』について

本作『オルガンと管弦楽のための交響曲』は、1924年に完成されたコープランド初の管弦楽曲であると同時に、大オーケストラを用いた最初の作品でもあります。また、大オーケストラ編成に加えて、オルガンが用いられているのも大きな特徴です。

パリで出会った世界的音楽教師ブーランジェにより作曲が提案され、1925年1月11日にエオリアン・ホールにて初演が行われました。その後、コープランドの才能にいち早く目を付けた指揮者クーセヴィツキーによって演奏されると、瞬く間にコープランドの名は知れ渡り、彼の出世作となりました。

作曲の依頼を受けた当初、コープランドは自信のなさから作曲に戸惑いを見せたと言われていますが、ブーランジェの後押しを受け、見事本作を完成させたのでした。
作曲から10年後の1931年、コープランドは本作を『交響曲第1番』として再編成し、エルネスト・アンセルメ指揮、ベルリン・フィルハーモニー交響楽団により初演が行われています。

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楽器編成について

本作の楽器編成は以下の通りです。なお、『交響曲第1番』版ではオルガン部分が金管楽器に変更されているため、オルガンは使用されていません。

・ピッコロ
・フルート(2)
・オーボエ(2)
・コーラングレ※
・クラリネット
・バスクラリネット
・ファゴット(2)
・コントラファゴット
・ホルン
・トランペット(3)
・トロンボーン
・チューバ
・ティンパニ
・打楽器
・ハープ(2)
・チェレスタ
・弦5部
・オルガン

※コーラングレ・・・イングリッシュ・ホルンのこと。ロマン派時代から用いられるようになった。

楽曲編成について

本作は全3楽章で構成され、
1楽章・・・前奏曲
2楽章・・・ブルース調のスケルツォ
3楽章・・・フィナーレ
の順に展開します。楽章が進むごとに演奏時間が長くなるという、交響曲としては珍しいスタイルで作曲されています。この作品で登場する複雑な和声には、コープランドが尊敬したストラヴィンスキーの影響が強く出ている一方で、「アメリカ的な」音楽を模索するコープランドの態度がうかがえます。

『市民のためのファンファーレ』とは

コープランドが1942年に作曲した、20世紀アメリカをもっとも代表する作品の1つです。指揮者ユージン・グーセンスの委嘱により作曲が開始され、ファンファーレの典型として、現在もなお広く愛されています。
グーセンスは当初、第2次世界大戦が勃発した時期だったことから、本作を「兵士のためのファンファーレ」のタイトルを提案しましたが、コープランドによって『市民のためのファンファーレ』に変更されました。
1943年3月12日、アメリカ納税日に初演が行われ、その後、『交響曲第3番』のフィナーレに転用されています。

1984年に開催されたロサンゼルス・オリンピックでは、アメリカン・スピリッツの象徴として、開会式の「ミュージック・オブ・アメリカ」の最初に演奏されたことでも話題になりました。

まとめ

今回は、コープランドの初期及び後期を代表する2作品を解説しました。
コープランドの作品は調性の取れた作品が多く、ジャズなどの要素も含まれているため、現代音楽に対して苦手意識のある方でも聴きやすいと思います。

とくに『市民のためのファンファーレ』はクラシック・コンサートに限らずさまざまな場面で用いられているので、1度は聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。
コープランドの作品には他にも優れた作品がありますので、クラシック通を目指して、ぜひ他の作品も聴いてみてください。

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>>アーロン・コープランドってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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