アルバン・ベルク『ヴォツェック』『ヴァイオリン協奏曲』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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アルバン・ベルクは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した、オーストリアの作曲家です。12音技法の創始者アルノルト・シェーンベルクに師事し、アントン・ヴェーベルンらと共に新ウィーン楽派を形成したベルクは、無調音楽や12音技法を取り入れながら20世紀のクラシック音楽界に新風を巻き起こしました。なかでも今回紹介する2作品は、ベルクをもっとも代表する作品であると同時に、音楽史上においても重要な位置を占めています。これまでベルクの作品を聴いたことのない方も、今回の記事を参考にぜひ彼の作品に触れてみてください。

オペラ『ヴォツェック』とは?

本作は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲『ヴォイツェック』をオペラ化した作品です。1914年、ウィーンにて本作に触れたベルクがオペラ化を思い立ち、構想から8年の歳月をかけて完成させました。

全3幕15場からなる台本のすべては、ベルク自らによるものです。第1次世界大戦勃発の影響により一時的に作曲が中断されたものの、1919年に第1幕、1921年に第2幕を書き終え、1922年にようやく完成となりました。

しかし本作は作曲後すぐに上演とはならなかったようで、1924年に『ヴォツェックから3つの断章』としてフランクフルトにて上演され、その後1925年、ベルリン国立歌劇場において、エーリッヒ・クライバーの指揮により本編の舞台初演が行われました(エーリッヒ・クライバーはカルロス・クライバーの父です)。

本作は、1821年にドイツの田舎町で実際に起きた事件を題材としています。発表当時は賛否両論を巻き起こした『ヴォツェック』ですが、現在ではドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』と並び、20世紀を代表する2大オペラとして、多くの聴衆から支持を集めています。

楽器編成が面白い!

大規模なオーケストレーションも『ヴォツェック』の魅力の1つです。本作はワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』に倣い、4管編成が採用されています。また、ピットのオーケストラの他に、舞台上にもマーチング・バンドや酒場の楽団、ボロボロのピアノなどが設置され、視覚的演出という点においても楽しめる作品です。

本作で使用されている楽器は以下の通りとされています。

木管楽器

・フルート(4、ピッコロ持ち替え)
・オーボエ(4)
・クラリネット
・バスクラリネット
・ファゴット(3)
・コントラファゴット

金管楽器

・ホルン(4)
・トランペット(4)
・トロンボーン(4)
・チューバ

打楽器

・ティンパニ
・シンバル
・大太鼓、小太鼓
・タムタム
・トライアングル
・シロフォン
・ムチ

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ヴァイオリン協奏曲について

ベルク作品の中でもっとも演奏機会に恵まれている作品であり、また作者にとって最後の作品でもあります。ヴァイオリニストのルイス・クラスナーの委嘱により、1935年に作曲がなされました。クラスナーから依頼を受けたベルクでしたが、依頼時はオペラ『ルル』の制作に取り組んでいたため、しばらくは手付かずのまま置かれていたそうです。

しかし、アルマ・マーラーの娘マノン・グロピウスが18歳という若さで死去したという訃報に接したベルクは、急遽『ルル』の制作を中止し『ヴァイオリン協奏曲』の制作に取り掛かります。

その後、急ピッチで作曲が行われ、着手からおよそ3ヶ月で本作が完成します。完成後、作品には「ある天使の思い出に」という献辞が添えられ、ベルクは亡きマノンの死を悼みました(ポリオにより亡くなったそうです)。ところが、作曲中に虫に刺されたことが原因で敗血症を発症し、作曲者であるベルク自身も同年12月にこの世を去ることに。亡き人への「レクイエム」として作曲した本作ですが、皮肉なことにベルク自らへの「レクイエム」にもなってしまいました。

ベルクの死の翌年1936年4月にバルセロナにて初演が行われましたが、指揮を予定した盟友ヴェーベルンは亡き親友の思い出のために練習さえできず、ヘルマン・シェルヘンが代役を務めています。

楽曲構成は?

本作は「アンダンテ」「アレグロ」からなる2楽章で構成されており、演奏時間は25分から30分程度です。第1楽章は古典的ソナタ形式が採用され、ケルンテン地方の民謡により愛らしかった亡きマノンの肖像が表現されています。

対照的に、第2楽章では激しいヴァイオリン独奏とオーケストレーションが奏でられ、マノンの激しい苦しみと魂の救済が奏でられます。

無調でも12音技法でもない?

無調音楽や12音技法の可能性を追求した新ウィーン楽派の作品にあって、これほど甘美で魅惑的な作品はないと言っても過言ではないでしょう。2つの楽章で構成された本作は、全編にわたり視覚的であり、それはまるで一つの物語が目の前で展開しているような錯覚さえ覚えます。立体的な音の配置に加え、多層的オーケストレーションの妙は、まさにベルクの真骨頂と言えるでしょう。

まとめ

今回はベルクの代表作『ヴォツェック』と『ヴァイオリン協奏曲』について解説しました。どちらも20世紀初頭を代表する作品であると共に、無調や12音技法の複雑さとベルクの後期ロマン派的官能性が見事に融合した傑作だと筆者は思います。現代音楽は実験的側面が強すぎるあまり、聴衆を置いてけぼりにする傾向が多々ありますが、その中において、ベルクは「聴きやすさ」を求めた作曲家でもありました。皆様にとってこの記事が現代音楽への足がかりとなれば幸いです。

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