アレクサンドル・グラズノフ「サクソフォン協奏曲」「ヴァイオリン協奏曲」の解説・分析。難易度や聴きどころは?

出典:[amazon]SINFONIEN 4 ES-DUR OP.

アレクサンドル・グラズノフはヨーロッパ音楽とロシアの民族音楽とを融合させた、ロシアを代表する作曲家の1人です。また教育者としても大変有名で、ショスタコーヴィチやストラヴィンスキーなど、20世紀を代表する作曲家を育てました。

とても面倒見の良い教育者であったらしく、多くの苦学生がグラズノフによって救われたと言われています。

今回は、グラズノフの名曲「サクソフォン協奏曲」と「ヴァイオリン協奏曲」について解説します。

サクソフォン協奏曲について

サクソフォン協奏曲の正式タイトルは「アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」です。タイトルが長いために「サクソフォン協奏曲」と呼ばれることもあります。サクソフォンで協奏曲を書いた作曲家はあまりいませんが、フランス印象派の作曲家ドビュッシーもサクソフォンを用いた協奏曲を作曲しています。

グラズノフの「サクソフォン協奏曲」は、ドイツのサクソフォン奏者ジーグルト・ラッシャーの依頼によって作曲されました。1934年に作曲され、グラズノフがパリに滞在していた頃に書かれた作品です。亡くなる2年前に作曲されたことから、グラズノフの最晩年の作品とされています。スウェーデン南部ニュヒェーピングにある聖ニコライ教会で初演されました。サクソフォンにはロマン派の音楽があまりないため、グラズノフのこの作品は、現在でも貴重なサクソフォン音楽として扱われています。

アルト・サクソフォンと弦楽五部で構成されており、演奏時間はおよそ15分程度です。比較的短い作品ですが、アルト・サックスの音色が表情豊かに奏でられる名作です。「急ー緩ー急」の3楽章構成となっていますが、切れ目のない単一楽章として演奏されます。

第1楽章はアレグロ・モデラートの4/4拍子で、とても穏やかな音色が主題を奏でます。
第2楽章はアンダンテの3/4拍子で、サクソフォンによるカデンツァ部分です。
第3楽章はサクソフォンによるフーガの演奏という珍しい形式ですが、グラズノフの明るい性質を知ることができる曲調となっています。

難易度について

サクソフォンとしての難易度は非常に高く、技術的な成熟度が求められます。グラズノフのサクソフォン協奏曲には「独奏用」の抜粋作品もあるようで、しばしばコンクールなどで演奏曲されています。サクソフォン作品の中でもとても人気のある作品ですが、こちらの難易度も高く、十分な技術が必要とされる作品です。サクソフォンを学ぶ学生にとって、避けては通れない作品と言えるでしょう。

聴きどころは?

サックスとオーケストラによる対話の様な曲調が魅力的です。また、楽章ごとの主題がめくるめく変化し、サクソフォンの音色とともに作品全体が色鮮やかに彩られていきます。
中間部のカデンツァは完全な独奏となりますので、演奏者の力量がわかると同時に、息を呑む様な音楽的展開も魅力的です。

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ヴァイオリン協奏曲について

グラズノフのヴァイオリン協奏曲は1904年に作曲され、翌年の1905年にグラズノフ自身の指揮によって初演されました。グラズノフの作品の中でも演奏機会の多い作品で、繊細で美しいメロディーと大胆なオーケストレーションが魅力です。作品はヴァイオリニストのレオポルト・アウアーに献呈されました。一説によると、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に刺激を受けて作曲されたと言われています。

3楽章構成となっていますが、楽章ごとに切れ目がなく単一楽章ように演奏されるのが特徴です。中間部分(第2楽章)はカデンツァとなっていますが、カデンツァの部分もグラズノフによって明確に作曲されています。

カデンツァとは協奏曲、独奏曲などの作品で演奏者が即興で自由に演奏できる部分のことを言います。しかし、作曲者や有名演奏家によって作られたものをそのまま演奏する場合も少なくありません。

楽器編成は次の通りです。

・フルート
・オーボエ
・クラリネット
・ファゴット
・ホルン
・トランペット
・トロンボーン
・ティンパニ
・トライアングル
・シンバル
・グロッケンシュピール
・ハープ
・ヴァイオリン(独奏)
・弦楽五部

難易度について

高度な技術と音楽的解釈が求められます。ヴァイオリンを専門に学ぶ人や、プロレベルの技術が必要とされる作品です。ピチカート部分はとても難所で、相当な練習が必要となります。

聴きどころは?

全編を通して駆け抜けるような作品ですが、第1楽章の哀しげなヴァイオリンの独奏が美しく奏でられます。ロシア的悲哀とロマン派の雰囲気が見事にマッチしており、聞く人の心をとらえます。

第3楽章部分の主題は有名なメロディーですので、どこかで聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。グラズノフの内面が持っている「明るく陽気な部分」が存分に散りばめられたメロディーです。最終部分は、オーケストラとヴァイオリンの掛け合いが見事に調和しています。

まとめ

今回はグラズノフの「サクソフォン協奏曲」と「ヴァイオリン協奏曲」について解説しました。「サクソフォン協奏曲」は珍しい作品だと思いますが、とても温かみのある優しい名曲です。一方「ヴァイオリン協奏曲」は、とても繊細なヴァイオリンの独奏が魅力的な作品です。どちらもそれほど長い作品ではないので、クラシックをあまり聞かない方でも楽しめると思います。これを機会に、ぜひ2つの作品に触れてみてはいかがでしょうか。

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