エドヴァルド・グリーグ「ピアノ協奏曲」「ペール・ギュント」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]Grieg-the Piano Music in His

ノルウェー生まれの作曲家、エドヴァルド・グリーグ。グリーグは大曲を作曲するのが苦手でしたが、抒情小曲集や歌曲、組曲など短くも美しい作品を数多く残しています。それらの作品は、まるでグリーグの人柄そのものを表しているかのようです。

交響曲や協奏曲をほとんど残していないグリーグでしたが、生涯で1曲だけ「ピアノ協奏曲」を作曲しました。グリーグの「ピアノ協奏曲」はロマン派を代表するピアノ協奏曲であり、現在でもとても人気のある作品です。そこで今回はグリーグの「ピアノ協奏曲」と組曲の代表作「ペール・ギュント」をご紹介します。

ピアノ協奏曲 イ短調

「ピアノ協奏曲イ短調」は、グリーグが作曲した唯一のピアノ協奏曲であり、現代でも演奏頻度の高い人気作品です。ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と同じく、冒頭部分の悲劇的テーマが大変有名なので、一度は聞いたことがある方も多いと思います。ロマン派のピアノ協奏曲の中でも屈指の傑作で、初演は作曲の手助けをしたピアニストのエドムント・ノイペルトによって演奏されました。

この協奏曲は、グリーグが意識していた「民族音楽的要素」が作品全体に散りばめられています。有名な冒頭部分での「2度下がってさらに3度下がる」という表現は、ノルウェーの民族音楽の特徴を活かしたものです。

「ピアノ協奏曲イ短調」は1868年、グリーグが25歳のときに作曲され、発表当時から大変な成功を収めました。しかしこの曲は何度も改訂された作品として有名で、最終版が完成したのはおよそ40年後の20世紀に入ってからのことです。ピアノ独奏部分を約100回、オーケストラパートをおよそ300回改訂したと言われています。現在コンサートなどで聞く演奏は、最終改訂版です。

グリーグは、ドイツの作曲家シューマンに強い影響を受けており、この作品がシューマンのピアノ協奏曲に似ているのも、その影響からだと考えられています。実際にグリーグは、ライプツィヒ音楽院で学んでいた頃に、シューマンの妻であるピアニストのクララ・シューマンの演奏でピアノ協奏曲を聴いたそうです。

楽曲編成について

一般的な3楽章構成で作曲され、演奏時間はおよそ30分です。第1楽章ではノルウェー民謡の要素を巧みに取り入れており、エネルギッシュで躍動感の強い構成です。一転して第2楽章では、緩やかなピアノのメロディーが印象的で、壮大な海の景色を連想させます。第3楽章では非和声的な響きが美しく、最後はピアノとオーケストラの力強い掛け合いが聞く人の心を捉えます。

楽器編成は次の通りです。
・ピアノ   ・フルート
・オーボエ  ・クラリネット
・ファゴット ・ホルン
・トランペット・トロンボーン
・ティンパニ ・弦楽合奏

聴きどころは?

ティンパニのトレモロで始まる冒頭部分は、クラシック音楽曲のなかでも屈指のインパクトがあるといえます。この部分はノルウェーのフィヨルドに流れる滝の流れを表現しており、一気に聴衆を作品へ引き込みます。

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また第3楽章ではノルウェーの民族音楽的要素が随所に採用されており、グリーグがフランツ・リストに楽譜を持って行ったところ、「まさに北欧的だ!」と賞賛されたそうです。作品全体を通してドラマティックで、聞く人を飽きさせない傑作です

ペール・ギュントとは

「ペール・ギュント」は、ノルウェーの劇作家で「人形の家」などの作品で知られるヘンリク・イプセンの同タイトルの作品に音楽をつけた劇付随音楽です。イプセン本人からの依頼で作曲されました。

依頼された当初は作品作りをためらったグリーグでしたが、「ペール・ギュント」の持つノルウェーの民族的要素に惹かれ、作曲を決意をしました。

ペール・ギュントとは、物語の主人公の名前です。「自由奔放なペール・ギュントが旅に出て、紆余曲折を経て老人になって帰ってくる」という物語です。

1876年にクリスチャニア(現在のオスロ)にて初演され、成功を収めました。この曲もピアノ協奏曲と同様に何度か改訂され、最終盤は1902年に完成しています。

1891年に本編から4曲抜粋した第1組曲が作曲され、翌年1892年にも4曲からなる第2組曲が作曲されています。とくに第1組曲は現在でも演奏機会のとても多い作品で、「朝」や「山の魔王の宮殿にて」はグリーグを代表する作品として人々に愛されている名曲です。

楽曲編成について

劇付随音楽としての構成は、全5幕構成で、グリーグはこの作品のために27曲を作曲しています。演奏時間はおよそ90分です。組曲編では合唱がカットされています。

第1組曲の構成は次の通りです。
1「朝」
2「オーセの死」
3「アニトラの踊り」
4「山の魔王の宮殿にて」

第2組曲は次の4曲が本編から抜粋されています。
1「イングリッドの嘆き」
2「アラビアの踊り」
3「ペール・ギュントの帰郷
4「ソルヴェイグの歌」

聴きどころは?

現在では組曲が演奏されることが多く、なかでも第1組曲の「朝」や「山の魔王の宮殿にて」や、第2組曲の「ソルヴェイグの歌」が有名です。とくに「朝」で表現されている、霧がかった空が次第に晴れていく描写は、グリーグの才能が存分に発揮されていると言えます。

「ソルヴェイグの歌」は物悲しくも、聞く人に問いかけるようなメロディーが特徴で、一度聞いたらいつまでも耳に残る美しい作品です。

まとめ

今回はグリーグの作品の中でももっとも有名な「ピアノ協奏曲」と「ペール・ギュント」を解説しました。どちらの作品も一度は耳にしたことがあるかと思います。

グリーグの作品は、どちらかというと穏やかで優しい雰囲気の作品が多いですが、この2作品はとても情熱的でエネルギッシュな作品です。どちらも聞けば聞くほど、面白みや発見がありますので、ぜひ聞いてみてください。

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