出典:[amazon]ボロディン:交響曲全集、だったん人の踊り 他
アレクサンドル・ボロディン(以下ボロディン)という作曲家をご存知ですか?ボロディンはロシアの国民楽派を代表する人物であり、「ロシアの5人組」として活躍した作曲家です。ボロディンの名前は知らなくても、代表作「ダッタン人の踊り」は誰しも一度は聴いたことのある作品だと思います。では「ダッタン人の踊り」以外に、ボロディンの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、ボロディンの作品の特徴とおすすめ代表作をご紹介します。
ボロディンの作品の特徴と評価
ロシア国民楽派に所属し「5人組」の中でも異色の経歴を持っていたボロディン。その作風は、ロシアの民族的音楽を軸にしながらも、雄大で美しいメロディラインが特徴です。本業であった学業に忙殺されていたため、作品数は多くありませんがボロディンの「ダッタン人の踊り」はクラシック音楽史上において屈指の名作とされています。
ロシアの民族性や叙事詩などを作品の軸としたのが「5人組」の特徴ですが、それをもっとも貫いたのはムソルグスキーでした。ムソルグスキーはロシアとロシア民族的音組織を芸術化したことで知られていますが、ボロディンの作品はロシア民族の要素を取り入れつつ、オリエンタリズムを強調したのが特徴といえます。
またボロディンは、チェロ・ソナタにみられるようなバロック的音楽様式やベートーヴェンなどの古典派の音楽を積極的に吸収し作品に取り入れました。これは他の「5人組」のメンバーにはあまりみられない傾向です。これはもしかしたら、長くヨーロッパに滞在した経験がボロディンの作風に影響を与えたのかもしれません。ボロディンの情熱的で美しいメロディーは、フランスの作曲家ドビュッシーやラヴェルに影響を与えたと言われています。また、作品数は少ないもののピアノ曲「スケルツォ」をラフマニノフが演奏し、その録音が残されています。
ボロディンは作品数が少なく、それほど長い人生とはいえませんが、今もなお多くの聴衆に愛されていることを考えると、音楽史に残した業績はとても大きいものだと考えられます。
おすすめ代表作5選
ボロディンのおすすめ作品をご紹介します。どれも明快でわかりやすい作品ですので、添付の動画をぜひ観てみてください。
交響曲第1番
1862年から1867年にかけて作曲された交響曲です。「5人組」の指導的役割だったバラキレフの指導の元で作曲され、初演もバラキレフによって指揮されました。この作品には、ボロディンがヨーロッパ滞在中に聴いたシューマンの影響があると言われています。全4楽章構成で、演奏時間はおよそ40分です。ロシア国内で発表されたのち、フランツ・リストの働きかけにより、ヨーロッパでも演奏する機会を得ています。演奏機会の少ない作品ですが、ロシア国民楽派らしい力強さや美しい旋律が魅力的な作品です。
交響曲第3番
1884年に着手した交響曲です。しかしボロディンの本業が忙しかったのと急死が原因となり未完成となった作品です。残されたスケッチとピアノ演奏を元にグラズノフが補完しましたが、1楽章と3楽章のみで2楽章と4楽章は完成されませんでした。1887年にリムスキー・コルサコフの指揮で初演されています。1楽章と3楽章で17分程度の作品です。第2楽章はロシア聖歌をモチーフにした作風だったようですが、スケッチなども残されておらず、わからないまま今日に至ります。しかしボロディンの交響曲集はこの作品も含めたものが多く残されています。
交響詩・中央アジアの平原にて
1880年に初演されたボロディン唯一の交響詩です。ロシア皇帝アレクサンドル2世の即位25周年を記念して作曲されました。初演の指揮は「5人組」のメンバーであるリムスキー・コルサコフが担当しました。とてもオリエンタル的な魅力にあふれた作品で、メロディの美しさもさることながら、ロシアの大地の静けさや雄大さが1曲に盛り込まれたボロディンの名作とされています。
小組曲
1885年に作曲されたボロディン晩年の作品です。1887年のボロディンの死後、友人だったグラズノフによって管弦楽版に編曲されています。ボロディンはこの作品を「少女の愛の小唄」として構成したため、それぞれの曲にタイトルがついた「標題音楽」となっています。
それぞれの標題は、
- 修道院にて
- 間奏曲 へ長調
- マズルカ ハ長調
- マズルカ 変ニ長調
- 夢
- セレナード 変ニ長調
- ノクターン 変ト長調
となっています。
チェロ・ソナタ ロ短調
1860年に作曲されたボロディン唯一のチェロ・ソナタです。ボロディンは学生時代、室内楽を仲間と楽しんでいたそうですが、そのときに演奏していたのがチェロだったと言われています。本来は3楽章構成の予定でしたが、未完成となってしまいました。ロシアの民族的作品が多いボロディンですが、この作品はバッハの「無伴奏ヴァイオリンソナタ」や「フーガ」をモチーフにして作曲されました。その影響のためバロック的雰囲気が特徴です。
まとめ
いかがでしたか?今回はボロディンの作品の特徴とおすすめ代表作をご紹介しました。どれもロシア情緒にあふれていて、メロディーも美しく聞きやすい作品だと思います。交響曲を聴く機会はあまりないと思いますが、この記事を機会にぜひ聴いてみてください。聞けばきっと、新しいボロディンの魅力に出会えると思いますよ。
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