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20世紀を代表するオペレッタ作曲家フランツ・レハール。プラハ音楽院でヴァイオリンを学んだレハールは、ドヴォルザークの勧めにより作曲を開始し、オペレッタの分野で優れた作品を残しました。またメロディー・メーカーとしての天分にも恵まれ、甘美で夢見心地のような旋律は、現在も世界中の聴衆に愛されています。そこで本記事では、レハールの作品の特徴やおすすめ代表曲について解説します。どの作品も一聴の価値のある作品ですので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
フランツ・レハールの作品の特徴や評価は?
フランツ・レハールの作品にはどのような特徴があるのでしょうか。今回はその特徴について2つ簡単に紹介します。
オペレッタの新しい時代を切り開く
レハール以前のオペレッタといえば、ヨハン・シュトラウスの『こうもり』やオッフェンバックの『地獄のオルフェ』『パリの生活』といった華やかで愉快な物語が一般的でした。
たとえば『地獄のオルフェ』の序曲として流れる「天国と地獄」は、その代表作と言えるでしょう。
一方レハールは、オペレッタの世界に悲劇的内容を取り入れ「バッドエンド・オペレッタ」という新しい表現を生み出しました。この試みは聴衆からも受け入れられ、レハールはオペレッタにおける「白金の時代」を築いた人物として音楽史上に名を残すこととなりました。
音楽史における固定観念を打ち破った点において、レハールの功績は多大なものであると言えるでしょう。
映画音楽としても有名
美しく、優美なメロディーで聴衆を魅了したレハール。彼が生み出したオペレッタは、映画の世界でも表現されています。レハールの人生でもっとも成功を収めたオペレッタ『メリー・ウィドウ』は1934年と1952年の2回にわたり映画化され、いずれもアカデミー賞の部門賞にノミネートされました。
また彼が生み出したいくつものアリアは単独としても演奏されており、有名なところでは、ヴィスコンティ監督の傑作映画『ベニスに死す』(原作トマス・マン)において、主人公アッシェンバッハが絶世の美少年タッジオと出会う場面に用いられています。こうしたことから、レハールの作品は20世紀のエンターテイメントにも多大な影響を与えたと考えられます。
フランツ・レハールのおすすめ代表作4選
オペレッタで絶大な人気を獲得したレハール。以下では彼が残した有名なオペレッタを4作品紹介します。作品の上演は少なくなったものの、演奏会ではアリアなどが抜粋されて演奏されることが多いようです。
オペレッタ『パガニーニ』
レハール後期を代表するオペレッタです。タイトルの通りヴァイオリンのヴィルトゥオーゾで有名なパガニーニをモデルとした作品で、1925年10月、ウィーンにて初演が行われました。初演はレハール自らが指揮をしましたが、大きな成功には至らなかったと言われています。しかし翌年のドイツ初演では空前の成功を収め、オペラ劇場が3ヶ月にわたり満員となるほどの盛況ぶりだったといいます。この成功により気をよくしたレハールは、以降の活動拠点をウィーンからベルリンに移し、次々と傑作オペレッタを生み出していきます。
全3幕で構成され、演奏時間は2時間程度です。オペレッタのためアリアがメインですが、ヴァイオリンの名演も聴きどころです。
オペレッタ『ロシアの皇太子』
ポーランドの作家ガブリエラ・ザポルスカの『ロシアの皇太子』を原作としたオペレッタです。『パガニーニ』の発表から2年後の1927年にドイツ芸術歌劇場で初演が行われ、レハール本人が指揮した初演は大喝采のうちに幕を閉じました。本来オペレッタは「喜劇」をベースとしていますが、これをレハールは悲劇として描き、オペレッタの世界に新しい解釈を取り入れました。
19世紀末のサンクトペテルブルクとナポリを舞台とした本作は、全3幕で構成され、なかでも第1幕のアリア「私を愛し、求めてくれる男性にきっと巡り会える」が有名です。日本では吹奏楽曲としてアレンジされており、吹奏楽の定番として愛されています。
オペレッタ『微笑みの国』
レハールは生涯で30曲以上のオペレッタを作曲しており、そのなかでも本作は『メリー・ウィドウ』と並ぶ傑作として現在も世界中で親しまれています。1929年10月にメトロポール劇場で初演が行われ、こちらも大きな成功を収めました。全3幕の構成で、演奏時間は1時間30分から2時間程度です。この時代の風潮として東洋的要素(オリエンタル)を採用する作曲家が多く登場しており、レハールも本作においてオリエンタルの要素をふんだんに取り入れています。1912年のウィーンと北京を舞台にしていることからも、当時のオリエンタイズムの強い影響がうかがえます。
オペレッタ『ジュディッタ』
1930年代の地中海の港町と北アフリカを舞台としたオペレッタです。1933年に作曲が開始され、翌1934年に初演が行われました。同時代を背景としたオペレッタのため、臨場感に溢れ、当時の時代背景を知る意味でも興味深い作品となっています。本作はレハール後期のオペレッタであるものの、レハール作品として初めてウィーン国立歌劇場で上演された記念碑的作品でもあります。これまでのオペレッタとは異なり全5幕という長編で構成され、数々の名作アリアが歌われることでも有名です。
まとめ
フランツ・レハールの作品の特徴やおすすめ代表作を紹介しました。レハールのオペレッタはヨハン・シュトラウスの時代以降、新風を巻き起こしたものとして現在でも聴衆に愛されています。映画音楽に転用されている作品もあるので、もしかしたら聴いたことのある方もいるかもしれません。この記事で初めてフランツ・レハールを知った方は、優しく甘いレハールのメロディをこれから探求してみてはいかがでしょうか。
>>フランツ・レハールってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?
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