アルテュール・オネゲル「交響曲第3番典礼風」「弦楽四重奏曲第1番」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]Honegger: le melodies (the songs)

アルテュール・オネゲルはスイス人の両親の元に生まれ、おもにフランスで活動した20世紀前半を代表する作曲家です。幼少の頃から音楽の才能を発揮し、優秀な成績でパリ音楽院を修了したオネゲルは、ミヨーやプーランクといった同時代の作曲家と共に「フランス6人組」を結成し、クラシック音楽界に新たな旋風を巻き起こしました。交響曲や室内楽、映画音楽まで幅広いジャンルを手がけたオネゲルですが、今回はそのなかから「交響曲第3番典礼風」と「弦楽四重奏曲第1番」を紹介します。

交響曲第3番「典礼風」について

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プロ・ヘルヴェティア財団の委嘱により1945年から1946年に作曲された、オネゲル3作目となる交響曲です。「典礼風」というタイトルは、オネゲルの発言によると「この交響曲に宗教的性格を表すため」に付けられたそうです。また、全体の作風としてドイツ・ロマン主義を引き継ぐドラマチックな構成と荘厳な曲調、そして神への畏怖が感じられる作品となっています。

この作品が作曲された背景には、第2次世界大戦という暗い雰囲気が反映されており、あるインタビューのなかでオネゲルは次のように答えています。

「私がこの曲に表そうとしたのは、もう何年も私たちを取り囲んでいる、蛮行、愚行、苦悩、機械化、官僚主義の潮流を前にした現代人の反応なのです(中略)。私の交響曲は言わば、3人の登場人物を持つ一篇の劇なのです。その3人とは、「不幸」「幸福」そして「人間」です・・・。」

この発言からもわかる通り、オネゲルの交響曲第3番は「人間の愚かさ」を表現するものであると同時に「祈り」でもある作品と言えるでしょう。演奏時間は30分程度で、1946年、スイスのチューリッヒにてシャルル・ミュンシュの指揮により初演されました。全3楽章で構成され、各楽章にはオネゲルが「鳥の主題」と名付けたテーマが循環形式の様に用いられています。

それぞれの楽章にタイトルがついている。

全3楽章で構成された本作には、それぞれの楽章にタイトルが付けられています。()内はラテン語表記です。

第1楽章・・・「怒りの日」(Dies irae)

神の怒りに直面した人間の恐れが描かれ、オーケストラは「全てを一掃する絶対的な激怒した竜巻」と「力の爆発と全てを破壊する憎悪」を表現しています。

第2楽章・・・「深き淵より」(De profundis clamavi)

神に見捨てられた人々の苦しみや祈り、瞑想が静かに空間を包み込みます。後半ではフルートによる「鳥の主題」が平和の象徴として響きます。

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第3楽章・・・「我らに平和を」(Dona nobis pacem)

第3楽章では、文明がもたらした人間の集団的愚かさがテーマとなっています。オネゲルはこれを表現するために、バスクラリネットによる「馬鹿げた主題」を採用しました。そして最後はピッコロによる「鳥の主題」が登場し、静かに作品が終わります。

弦楽四重奏曲第1番について

1913年に作曲が開始され1917年に完成したオネゲル初期の室内楽曲です。幼少の頃からヴァイオリンに親しんだオネゲルらしい作品で、ベートヴェンの弦楽四重奏曲を彷彿させます。1913年はオネゲルがパリ音楽院に入学した時期であり、本作は若かりしオネゲルの対位法の知識やポリフォニックな感性が楽しめる1曲です。

1917年、ようやく作品が完成し、作品は独立音楽協会に提出されたものの「オネゲルがスイス人である」という理由から演奏会への出典が却下され、発表当時は議論を巻き起こした作品としても知られています。

またこの作品を聴いたモーリス・ラヴェルは「これが美しいものなのか醜いものなのか分からず、苦い顔をさせられる」と述べたそうです。最終的に1919年に独立音楽協会にて初演され、1920年に楽譜出版となりました。

1951年に出版されたオネゲルの著書『わたしは作曲家である』の中で、オネゲルは本作について「にれには欠点もあり、長すぎる。けれどもわたしは、鏡でも見るように、そこに自分を見るのです」と述べています。作品はフランスの作曲家フローラン・シュミットに献呈されました

楽曲構成や聴きどころは?

一般的な弦楽四重奏曲と同じく3楽章構成で、演奏時間はおよそ25分です。

第1楽章・・・Appasionata

ハ短調、第1ヴァイオリンの「衝突の主題」が魅力的な楽章。

第2楽章・・・Adajio

調性の取れた楽章。ワーグナーやドビュッシーの影響がみられる美しいメロディーが特徴です。

第3楽章・・・Allegro-Adagio

ハ短調、非常にポリフォニックな楽章で、ベルギーの音楽学者ハリー・ハルプライヒは、導入部を「バイクのエンジンのよう」と評価しています。

まとめ

いかがでしたか?今回はオネゲルの交響曲と室内楽の中から、それぞれ1曲ずつ解説しました。20世紀初頭の音楽界は無調音楽や12音技法の全盛期でしたが、オネゲルはそうした潮流に乗らず、あくまでもドイツ・ロマン主義や印象主義の伝統を引き継ぐ形で、作品を発表し続けました。今回紹介した作品以外にも、オネゲルは優れた作品を多く残していますので、この記事でオネゲルに興味を持たれた方は、ぜひ他の作品も聴いてみてください。

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