ジュゼッペ・ドメニコ・スカルラッティ ソナタ K.30L.499ト短調「猫のフーガ」の解説・分析。楽曲構成や弾き方の注意点は?

出典:[amazon]D.スカルラッティ:宗教声楽作品集

今回はバロック音楽時代に活躍した作曲家ジュゼッペ・ドメニコ・スカルラッティ(1685~1757)(以下スカルラッティ)の一番有名と言われている楽曲でありま「猫のフーガ」についてまとめさせていただきます。しかし、スカルラッティの作品のほとんどの自筆譜が消えてしまい写譜であったり、未解明の部分が多い謎多き作曲家であるスカルラッティですが、この曲にもなにかあるのでしょうか。それでは解説させていただきます。

解説・分析

まずこの曲の元の題名はチェンバロ独奏用単一楽章ソナタ「ト短調フーガ」という題名です。しかしそこからなぜ「猫のフーガ」と呼ばれるようになったのでしょうか。それには、作曲の時のある出来事が関係しています。

スカルラッティはこの当時猫を飼っていたそうです。その猫は、スカルラッティが練習したり音を出して作曲している姿を見て音が出ることに対して興味を持ち始めたそうです。その時猫が鍵盤の上に上り音を鳴らしていたそうです。実際には鍵盤の上を歩いていたら音が鳴ったという話ですが、その音を聴いてスカルラッティはひらめきます。「今猫が弾いた音を使ってテーマを作ろう」と。

しかし、実際に楽譜を見てみると細かい音であったり、単音、複数の音などがありました。実際に猫が鍵盤の上を歩くと何音も同時に鳴らしちゃうと思うのであくまでこの猫が鳴らした音というのは参考にしただけであってスカルラッティがそこから想像を膨らませて作曲したのではないかと言われています。

曲は8分の6拍子で書かれており、フーガということでテンポも歩くような速さで書かれています。しかし、スカルラッティが活躍したバロック時代というのは「ピアノ」ではなく「チェンバロ」や「オルガン」がメインでした。そのため、この曲もチェンバロの独奏用に書かれております。そのためチェンバロやオルガンにしか出せない弦の響き方を考えて作曲しているためピアノで今演奏してみると何か足りないような気がします。

前半部では、あまり激しく動くことはなく落ち着いた雰囲気が見てとれます。しかし、中間部の後半には今までの雰囲気が一変するように左手の伴奏はオクターブで動きます。それにより今まで左手は割と単音やハモリパートを演奏したり、ヘ音記号の楽譜から飛び出してト音記号の楽譜を弾いたりしていたのにも関わらず力強さを感じるパートに変わります。

またそのオクターブで動く部分は様々な音を行き来するわけではなく全音音階で6つの音を弾いています。言葉ではわかりづらいですね。8分の6拍子なのでこの曲には8分音符が一小節に6つ入ります。「レミファソラシ」や「ドレミファソラ」と8分音符をオクターブで弾いています。この音階にそって弾くことによって右手のメロディの邪魔をしないのになぜかとても力強いものを感じることが出来ます。

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そしてこの音階のオクターブのターンが終わると持続低音と言って「レ」の音を8小節間伸ばし続けます。勿論、ずっとタイ(タイでつながっている同じ音は弾き直さずずっと弾き続けなければならない音楽用語。例を出すと2分音符のレの音が2つありその音にタイがつながっていたら4拍伸ばさなければならない。)でつながっているわけではないので何度かは弾き直しをしますが、今までにない持続低音をここで用いることによって曲がフィナーレに向けて盛り上がっていると同時により低音の迫力を感じることが出来ます。そして最後の6小説はまた優美な雰囲気に戻り曲が終わります。

楽曲構成

この曲はソナタ形式で書かれているため「提示部」「展開部」「再現部」の3つを元に作られています。スカルラッティが生きていた時代には「ソナタ形式」は確立されていませんでした。そのためベートーヴェンなどが作曲したピアノソナタの曲に比べたらすこし怪しい部分があります。

しかし、このバロック期にはソナタ形式と似ている2部形式というものがありました。2部形式というのは第1部では主調で始まって属調などの新しい調に転調して終わりを迎えます。次に来る第2部ではその転調した調で引き継ぎますが最終的には主調に戻って曲の終わりを迎えるというものです。

ソナタ形式も始まりから提示部にかけて第1主題を主調で演奏しますが途中で第2主題が現れて転調します。そして迎える展開部では第2主題のまま進み最後の再現部ではまた第1主題の主調に戻り、第2主題を迎えて終わります。

唯一の違いといったら2部形式のものに対してソナタ形式は3部形式であることくらいでしょう。「猫のフーガ」もこのような形式として書かれているため「ソナタ形式」と言っていいでしょう。

弾き方の注意点

正直な話、私はこの曲を演奏したことはありません。またピアノが専攻でもないためあまり偉そうなことが言えません(笑)。しかし、1つだけ言うとしたら作曲家の意図を読み取ってあたかも猫が本当に鍵盤の上を歩いているような弾き方をすることでしょう。

この曲は他の曲と違って「自分の思う弾き方」ではなくスカルラッティが考えた「猫が弾いている」ような弾き方をすることが1番注意しなければならないことで大切にしなければならないことだと思います。「じゃあ具体的にどんな弾き方?」と言われてもそこからはピアノの前にいる皆様に考えていただきたいと思います。

まとめ

今回はスカルラッティ作曲の「猫のフーガ」についてまとめさせていただきました。スカルラッティの作品の特徴として少年心を忘れていないような傾向が見られますがこの曲にも存分に書かれていますね。では実際に「猫が弾いているような」とはどのような弾き方ですかね。ここからの続きは皆様の想像力にお任せします。

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