出典:[amazon]Mily Balakirev (Selected Piano Works)
ロシア民族音楽を再評価し、ロシア音楽に新しい流れを打ち立てたミリイ・バラキレフ(以下バラキレフ)。バラキレフは無料音楽学校を開校し、広く一般庶民にも音楽の素晴らしさを伝えたロシアを代表する作曲家です。あまり演奏される機会はありませんが、ロシアの民族や民謡、またはアジアのオリエンタリズムが活かされた美しい作品を残しています。もっとも難しいピアノ曲と言われる「イスラメイ」を作曲したバラキレフの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はバラキレフの作品の特徴と、おすすめ作品をご紹介します。
バラキレフの作品の特徴や評価について
「ロシア5人組」のまとめ役だったバラキレフ。バラキレフの作品の特徴は、広大なロシアの大地に広がる「ロシア的哀愁」が込められたメロディーにあります。尊敬するグリンカの影響を受け、ロシアの民族音楽や民謡を研究したバラキレフは、伝統的な「西欧派」に対抗するため「ロシア国民楽派」を立ちあげ、ロシア独自の音楽を作ることを目指しました。
その影響はリムスキー=コルサコフやグラズノフなど、バラキレフ以降の作曲家たちに引き継がれ、「ロシア国民楽派」はクラシック音楽史の中でも重要な位置を占めるようになります。
バラキレフは自身の作品を何度も改訂したり、1つの作品を完成させるのに何年もかかるという遅筆(ちひつ)な作曲家でしたが、その分、教育に熱心に取り組み多くの音楽家たちを育てました。その代表的な活動が、無料音楽学校の設立です。無料音楽学校では毎週日曜に音楽会が開かれ、新しい作曲家の作品紹介や、リストやシューマンといった後期ロマン派の作品が演奏されました。
一度は無料音楽学校から離れ別の仕事に就きましたが、復帰後は創作意欲を取り戻し、交響曲などの大曲を作成しています。また、晩年は宮廷直属の聖歌隊長になるなど、生涯に渡り音楽家として活躍しました。
バラキレフが作曲した「イスラメイ」は、現代においても最難曲のピアノ曲とされ、演奏家の技術を試す試金石とされています。
おすすめ代表作5選
バラキレフのおすすめ作品を5つご紹介します。バラキレフの作品は「ロシアの5人組」らしい民族性が豊かなものとなっています。
交響曲第2番
1908年に作曲されたバラキレフ最晩年の交響曲です。音楽界と距離をおき、周りからすでに過去の人として扱われた晩年でしたが、未完成の作品をいくつか完成させるなど、バラキレフは生涯にわたって音楽に関わり続けました。伝統的な4楽章構成で、演奏時間はおよそ35分とされています。1909年にサンクトペテルブルクの無料音楽学校演奏会にて初演され、指揮は友人であったセルゲイ・リャプノフが務めました。
交響詩「タマーラ」
1882年に発表された交響詩です。1860年代に3度コーカサス地方を旅し、現地の民族音楽を元に作曲しました。当初バラキレフは、これらの素材を元にグリンカの「ルスランとリュドミラ」を倣ったオペラの作曲を試みますが、のちに管弦楽曲に変更され最終的に交響詩形式となりました。タイトルの「タマーラ」はロシアの詩人で作家のレールモントフの詩によるものです。1883年にバラキレフ自身の指揮で初演され、尊敬していたフランツ・リストに献呈されています。演奏時間はおよそ25分です。
交響詩「ルーシ」
ロシア建国を記念して、1862年に標題交響曲「ルーシ」として構成されましたが、のちに「3つのロシアの主題による序曲2番」として発表されました。1880年代に入っても改訂作業が続いたため、完成までに20年以上費やしています。3部形式となっており、作品はリムスキー=コルサコフに献呈されました。演奏時間はおよそ15分です。
3つのロシアの主題による序曲第1番
1858年に作曲されたバラキレフ初期の作品です。演奏会用の序曲として作曲されました。バラキレフが敬愛していたグリンカの「カマリンスカヤ」に倣って作曲され、ロシアの民族音楽的要素が多く取り入れられています。作品にはロシアで有名な3つの民謡が主題として用いられています。とくに第3主題の「ピーテル街道に沿って」は、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」でも用いられています。
ピアノ曲「ひばり」
バラキレフのピアノ作品のなかでも、もっとも演奏機会の多い作品です。グリンカが作曲した歌曲集「ペテルブルクの別れ」のなかの「ひばり」をバラキレフがピアノ曲にアレンジした作品です。ロシアの哀愁あふれる名曲で、演奏会でのアンコールの定番としても有名です。哀愁のある作品ですが、非常に高度なテクニックも必要な作品となっています。「ひばり」が優雅に飛ぶ姿が目に浮かぶとても描写的な作品となっています。演奏時間はおよそ5分です。
まとめ
いかがでしたか?今回は、バラキレフの作品の特徴とおすすめ作品をご紹介しました。どの作品もロシアの哀愁漂うメロディーが魅力的だと思います。バラキレフの作品には、チャイコフスキーやラフマニノフのような「誰もが知る」名曲はないかもしれません。しかしバラキレフはロシアの音楽会を牽引した重要な人物であったことは間違いありません。この記事をきっかけに、バラキレフの作品に触れてみてはいかがでしょうか。
>>ミリイ・バラキレフってどんな人?その生涯や性格は?死因は?
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