ジャン=バティスト・リュリの作品の特徴や評価。おすすめ代表曲4選

[amazon]Grands Motets 1

太陽王ルイ14世の寵愛を受け、フランス・バロック音楽の礎を築いた稀代の作曲家ジャン=バティスト・リュリ。彼が生み出したオペラの手法はヨーロッパ全土へ広がり、17世紀のクラシック音楽に多大なる影響を及ぼしました。とりわけ、作家モリエールとともに制作にあたった『町人貴族』などの「コメディ・バレ」(舞台喜劇)は、新しいバレ様式として一世を風靡し、リュリの名を不動のものにしました。では、時代の寵児として名声を獲得したリュリの作品にはどのような特徴があるのでしょうか。今回はリュリの作品の特徴やおすすめ代表曲を紹介します。

リュリの作品の特徴や評価

フランス・バロックの創始者と称されるリュリは、流行を敏感に察知し、聴衆に向けて分かりやすく表現する手法に長けていました。また、人々の感受性に訴えかける叙情的メロディーは、リュリの天与の才能と言えるでしょう。

フランス・オペラの基礎を作り出した

ルイ14世の寵愛の元、宮廷音楽監督に任命されたリュリは、就任以降つぎつぎとオペラやバレエを生み出します。当初はフランスの伝統に則った宮廷バレを作曲していたリュリですが、やがてコメディ・バレ(舞台喜劇)の形式を取り入れ、その後「プロローグ付きの5幕構成オペラ」の定型を生み出します。

さらにリュリは、オペラに不向きと考えられていたフランス語法の研究に尽力し、フランス語に即した声楽スタイルを確立した他、フランス式序曲といった新しい手法を開発します。そしてこれらの手法が、のちの古典的交響曲の発展にも影響を及ぼしたことから、リュリは「フランス・バロックの創始者」とも見なされるに至ります。

宮廷バレ用の舞曲形式と宮廷歌謡の抒情性を統合し、古典的均衡と豪華さにあふれる1つの形式を完成した点において、リュリはフランス音楽界において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

神話を題材にしたオペラを多く手がける

リュリの作品にはバレ、コミック・バレ、オペラ(リュリのオペラは「抒情悲劇」と訳される)などいろいろありますが、その多くは神話(ギリシャ神話)を題材にしたものでした。
神話をおもな題材とした理由としては、神話で語られる「大胆さ」や「愛憎」、「特異性」に強い関心があったためかもしれません。また、リュリはルイ14世と友人同然の関係だったため、多くの作品の初演が宮廷内で行われました。

リュリのおすすめ代表曲4選

リュリのおすすめ作品を4つ紹介します。今回紹介するのは、すべてギリシャ神話を題材にした作品です。

スポンサーリンク

カドミュスとエルミオーヌ

1673年に初演されたプロローグと5幕からなるオペラです。リュリの盟友フィリップ・キノーが台本を担当し、パリ・オペラ座にて初演されました。本作はオウィディウスの『変身物語』に登場する、伝説の王カドミュスとエルミオーヌの物語を基調としており、リュリが「音楽劇」という新ジャンルを生み出すきっかけとなった記念碑的作品です。また、この作品のプロローグは太陽王ルイ14世に捧げられています。

イシス

こちらもフィリップ・キノーが台本を手がけたプロローグと5幕で構成されたオペラです。1677年にルイ14世の宮廷で初演され、この年の夏にはパレ・ロワイヤル劇場でも一般公開されました。作品は一定の成功を収めたものの、その内容において、ルイ14世の愛人関係を暴露した作品としてスキャンダルに発展。以降、キノーとリュリの活動は一時中断され、さらにリュリの芸術関係者が一斉に解雇されるという事件を巻き起こしました。

プシシェ

作家モリエールが草稿を書き、ピエール・コルネイユとフィリップ・キノーが詩をつけた5幕からなる悲喜劇とバレエの為の作品です。1671年に初演され、本作もルイ14世の王室の前で初演されました。このことから、よほど国王とリュリは親しかったことが分かります。
壮大な舞台と特殊効果が施された本作は大成功を収め、この作品により、リュリの名声は不動のものとなりました。

2世紀にアプレイウスが執筆した『黄金のロバ』に登場する、キューピッドとプシュケ(フランス語の発音では「プシシェ」となる)の物語を基に制作されました。

アシスとガラテア

1686年にパリ・オペラ座で初演されたリュリ最後のオペラです。ルイ14世への敬意の証として、ヴァンドーム公爵ルイ・ジョセフがリュリに作曲を委嘱しました。ラシーヌの弟子ジャン・ガルベール・ド・カンピストロンがオウィディウスの『変身物語』を基調に台本を執筆し、アシスとガラテア、ポリフェーメによる三角関係の愛の描いた本作は、盛況のうちに幕を閉じました。

この物語は、ヘンデルによる『アシスとガラテア』にも大きな影響を与えました。

まとめ

リュリの作品の特徴やおすすめ代表曲を4作紹介しました。バロック音楽というと、バッハやヘンデルといった人物が挙げられますが、実は彼ら以前の時代にも、優れた作曲家が数多く存在します。近年、バロック音楽の人気が高まり、これまで録音されてこなかった作曲家の作品が次々とリリースされています。今回紹介したリュリの作品をきっかけに、あらためてバロック音楽に触れてみてはいかがでしょうか。

👉[amazon]ジャン=バティスト・リュリのCDはこちら。

>>ジャン=バティスト・リュリってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

>>[amazon]クラシックのジャンル別話題作をチェック!

スポンサーリンク
関連記事
(Visited 862 times, 1 visits today)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)