パウル・ヒンデミットの作品の特徴や評価。おすすめ代表作5選

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パウル・ヒンデミットという作曲家をご存じですか?ヒンデミットは新即物主義や新古典主義などの作品において、20世紀クラシック音楽界に多大な影響を及ぼしたドイツの作曲家です。
とりわけバッハの対位法を熱心に研究した彼の作品は、鬼才グレン・グールドにより「現在の数少ない真のフーガの名手」と賞賛されました。

今回はヒンデミットの作品の特徴やおすすめ作品を5つ紹介します。

ヒンデミットの作品の特徴

ヒンデミットの作品にはどのような特徴があるのでしょうか。
20世紀という時代を反映していることもあり、純粋に「音楽のための音楽」という考えにはこだわらなかったようです。

独奏用曲を多数作曲

ヴィオラ奏者としても活躍したヒンデミット。そのため、あまり作曲されることのなかったヴィオラに注目し、多くの作品を手がけています。
また、オーケストラで使用されるほぼすべての楽器の独奏曲を作曲したとも言われ、

  • オーボエソナタ
  • トロンボーンソナタ
  • フルートソナタ
  • チューバソナタ
  • ハープソナタ

など珍しい楽器のソナタを多く作曲しています。

実用音楽の提唱

ヒンデミットの作風は後期ロマン派音楽に始まり、ストラヴィンスキーが提唱した新古典主義、そして新即物主義へと展開します。その後「音楽のための音楽」という考えをさらに進め、実用的で特定の目的のために存在する音楽である「実用音楽」の概念を打ち出しました。

たとえば、軍の式典やダンス、映画音楽などがそれに該当します。

ヒンデミットは、時代が求めている作品に対して「芸術家は積極的に応えるべきである」という姿勢をとっており、この思想は現代へと受け継がれていきます。

また、歴史における音楽の役割や社会的位置付けに目を向け、音楽を体系的に理解しようとしたのもヒンデミットが始まりです。

ヒンデミットのおすすめ代表作5選

ヒンデミットの作品を5つ紹介します。さまざまなジャンルから紹介していますので、ぜひお楽しみください

ウェーバーの主題による交響的変容

ヒンデミット作品の中でも、もっとも演奏機会の多い作品です。ロマン派の作曲家ウェーバーの作品をモチーフとしているため、聴きやすく軽快なメロディーが特徴です。

本作は、アメリカへ亡命中の1943年に作曲されました。

作品中に安心感を感じるのは、ヒンデミット自身の心境を表しているのかもしれません。

1944年、アルトゥール・ロジンスキの指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック演奏で初演され、大きな評判となりました。第2楽章には『トゥーランドット』の変奏曲が使用されています。

吹奏楽のための交響曲(協奏曲)

現在も続くドイツの音楽祭「ドナウエッシンゲン音楽祭」のために作曲された吹奏楽曲です。ヒンデミットによる吹奏楽曲はわずかですが、本作は3日で書き上げられたと言われています。

全3楽章で構成され、演奏時間はおよそ10分です。

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第2楽章ではオーストリア民謡「高貴な騎士オイゲン公」の軽快なメロディーが使用されており、聴く人を大いに楽しませてくれます。吹奏楽曲として、現在でも演奏機会の多い作品です。

室内音楽

あらゆるジャンルにおいて優れた作品を残したヒンデミット。1920年代には一連の室内楽曲も作曲しています。バッハの対位法を感じさせながらも、現代的でもあり、優雅な作品群として人気があります。

1番から7番まで作曲された本作は「20世紀のブランデンブルク協奏曲」とも称され、現代でも多くの聴衆に愛されています。

各曲3楽章から5楽章で構成され、演奏時間はどれも20分弱です。
第5番は1927年にヒンデミットの独奏で初演され、指揮はオットー・クレンペラーが担当しました。

カルディヤック

ドイツ・ロマン派の作家E・T・Aホフマンの『スキュデリ嬢』を原作とした全4幕からなるオペラです。ヒンデミットはオペラの作曲にも熱心に取り組み、現代的テーマを用いた作品をいくつも世に送り出しました。
1926年にドレスデン国立歌劇場で初演され、2013年には日本の新国立劇場でも初演されています。

連続殺人事件の発生により、恐怖に怯える人々の合唱から始まる本作は、果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか。殺人犯と疑われる主人公カルディヤックの運命は・・・。

気高い幻想

オペラの次はバレエ音楽です。本作はイタリアの画家ジョットによる「聖フランチェスコの生涯」をモチーフとして、1938年に作曲されました。ヒンデミットのバレエ作品でも人気が高く、現在でもたびたび上演されています。

聖フランチェスコとは、キリスト教カトリックにおけるフランシスコ会の創設者であり、「小鳥に説教をした」という伝説を持つ人物です。

フランツ・リストの『小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ』やオリヴィエ・メシアンのオペラ『アッシジの聖フランチェスコ』など、さまざまな音楽家がモチーフとして採用しています。

まとめ

20世紀のクラシック音楽界にとって、ヒンデミットは貴重な存在でした。

十二音技法が全盛となり前衛的音楽が主流となった20世紀において、古典主義への回帰は、新たな表現方法の模索であり「音楽を壊さない」ための試みでもあったと考えられます。そういう意味では、ヒンデミットは旋律の美しさを追求した最後の作曲家かもしれません。

今回紹介した作品は、初めて聴く方が多いと思います。

しかしどの作品も聴きやすく、ユーモア溢れる曲もありますので、この記事を機会にぜひヒンデミットの作品を聴いてみてください。きっと新しい発見があると思いますよ!

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