出典:[amazon]ボロディン:交響曲全集、だったん人の踊り 他
19世紀に活躍した作曲家アレクサンドル・ボロディン(以下ボロディン)。ボロディンはとても多才な人物で、化学の分野でも大きな業績を残しました。バラキレフに出会うまで、正式に作曲の勉強をしたことがなかったそうですが、バラキレフと出会ったことで音楽の才能も開花させ、優れた作品を残しています。今回ご紹介する2作品も、ボロディンの才能を示す素晴らしい作品ですので、ぜひ一度聴いてみてください。
弦楽四重奏曲第1番について
1874年から1879年にかけて作曲された作品です。完成まで5年の歳月がかかっていますが、この時期のボロディンは本業の忙しさに追われていたため、作曲する時間が取れなかったと言われています。ロシア国民楽派は「標題音楽」を多く発表しましたが、ボロディンのこの作品はベートーヴェンの「弦楽四重奏曲」の主題に倣った「絶対音楽」として完成しています。これに対してムソルグスキーや評論家スタソフから非難されたようですが、今日ではボロディンを代表する作品の1つとなっています。
1880年、サンクトペテルブルクのロシア音楽協会にて初演されましたが、譜面が手書きであったためミスが多く失敗に終わったとされています。しかし1ヶ月後の演奏会では譜面を修正し無事成功しました。演奏時間はおよそ40分で、作品はリムスキー・コルサコフの夫人に献呈されています。
楽曲編成は?
全4楽章構成となっており、1〜3楽章はベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第13番」の主題が用いられています。ボロディンはバッハや古典派の音楽にも関心を示し、バッハの主題を用いたチェロ・ソナタなども残しています。
第1楽章・・・Moderato-Allegro イ長調 2分の4拍子のソナタ形式
第2楽章・・・Andante con moto 嬰へ単調 3分の4拍子
第3楽章・・・Presto へ長調 3分の8拍子(第3楽章が最後に作曲されました)
第4楽章・・・Andante-Allegro risoluto イ短調ーイ長調
楽器編成は、
- 第1ヴァイオリン
- 第2ヴァイオリン
- ヴィオラ
- チェロ
となっています。
聴きどころは?
ベートーヴェンのドイツ古典派に倣った作品らしく、全体として重厚で厚みのある作品となっています。第3楽章のPrestoではトリオによるハーモニクス技法が使われメロディの幻想性や表現力を高めています。ロシアの民族音楽ではなく、ボロディン流の古典派の解釈が楽しめる傑作です。
弦楽四重奏曲第2番について
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1881年にロシアのシトヴォで作曲された作品です。翌年1882年に初演され好評を博しました。愛妻家だったボロディンは、この作品を妻・エカテリーナへの20周年にわたる愛の記念として捧げています。「イーゴリ公」や「交響曲第2番」と並ぶボロディンの傑作とされ、それと同時にこの「弦楽四重奏曲2番」は19世紀ロシアを代表する室内楽として位置付けられています。
後世に与えた影響も大きく、第2楽章の第2主題はミュージカル「キスメット」で採用され話題を呼びました。また第3楽章は「夜想曲」として親しまれ、コンサートで単独で演奏されるなど、現在でも多くの聴衆に愛されています。室内オーケストラへの編曲はリムスキー・コルサコフが行いました。
楽曲編成は?
全4楽章で構成されており、
第1楽章・・・Allegro moderato ニ長調 ソナタ形式
第2楽章・・・スケルツォ Allegro へ長調
第3楽章・・・ノクターン(夜想曲)Andante イ長調 3部形式とソナタ形式、変奏曲の折衷となっています
第4楽章・・・Andante-Vivace ニ長調 ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第16番」を倣っているとする見方もあります。
楽器編成は次の通りです。
- 第1ヴァイオリン
- 第2ヴァイオリン
- ヴィオラ
- チェロ
聴きどころは?
ノクターンとして抜粋されて演奏されることもある、第3楽章は必聴の価値ありです。作品全体としてはボロディンらしい抒情的な雰囲気と美しいメロディーが魅力ですが、第3楽章の優しく語りかけるような旋律は、まさに「癒しのメロディ」と言えるでしょう。第3楽章のノクターンはソナタ形式も含まれているので、場面転換もわかりやすく飽きることなく聴くことができます。そしてそれに続く第4楽章は、一転してスラヴの民族性を前面に出したフィナーレとなっています。演奏時間は30分程ですが、音楽的に華やかな場面展開が多く、弦楽四重奏曲の醍醐味を味わえる作品といえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はボロディンの「弦楽四重奏曲」2曲をご紹介しました。室内楽は落ち着きがあり心が安らぐ作品が多いですが、ボロディンの弦楽四重奏曲は、ロシアの民族的旋律を使いながら、表情豊かで繊細なメロディーが特徴です。あまりクラシックに馴染みのない方は室内楽を聴く機会が少ないかもしれませんが、今回の記事を機会に、ボロディンの室内楽を聴いてみてはいかがでしょうか。
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