フリッツ・クライスラー「愛の喜び」「愛の悲しみ」「美しきロスマリン」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集(クライスラー)(1935-1936)

20世紀最高のヴァイオリニストの1人であり、多くの名曲を残した作曲家としても知られるフリッツ・クライスラー。その甘美で高貴さを漂わせるメロディーは、聴く人を安らぎの世界へと誘います。オーストリアに生まれ、わずか12歳でパリ高等音楽院を修了した天才少年は、波乱の時代を経て世界的ヴァイオリニスト・作曲家となりました。そんなクライスラーをもっとも代表する作品が「3つの古いウィーンの舞曲」です。大変有名な作品なので、誰でも一度は聴いたことがあると思います。今回は「3つの古いウィーン舞曲」と呼ばれる「愛の喜び」「愛の悲しみ」「美しきロスマリン」について解説します。

「愛の喜び」について

クライスラーの作品中でもっとも有名な作品です。タイトルの通り、快活なメロディーと晴れやかなテンポは、まさに「喜び」を表現しています。本作ではウィンナ・ワルツの要素が取り入れられています。ウィンナ・ワルツとは、19世紀にオーストリアのウィーンで流行したワルツであり、ウィーン会議を通じてヨーロッパに広まったことにより名付けられました。ワルツと言えば3拍子ですが、ウィンナ・ワルツでは2拍子目を早めにずらして演奏するのが特徴です。

発表当初は、ウィンナ・ワルツの始祖と言われるヨーゼフ・ランナー名義で発表されましたが、後年、クライスラーの自作であることが判明しました。「愛の悲しみ」「美しきロスマリン」とセットで演奏されることが多く、コンサートのアンコールとしても定番です。

作品は短い3部構成で、演奏時間はおよそ3分となっています。

ラフマニノフによるピアノ版もある

第1次世界大戦終戦後、ラフマニノフと交友を深めたクライスラー。いつしか2人はお互いに作品を献呈するほどの友人となっていました。ラフマニノフは「コレルリの主題による変奏曲」をクライスラーに献呈し、さらに「愛の喜び」「愛の悲しみ」の2曲をピアノ独唱用に編曲しました。一方クライスラーはというと、ラフマニノフの歌曲をヴァイオリン版に編曲した作品を献呈しています。

聴きどころは?

短い小品ですが、聴きどころはなんといっても冒頭の花開くようなメロディーでしょう。一瞬でその場を明るくする華やかさがこの作品の魅力です。上記で解説したウィンナ・ワルツ形式にも注目して聴いてみてください。

「愛の悲しみ」について

「愛の喜び」と対で演奏されることが多い作品です。「愛の悲しみ」というタイトルですが、ただ悲しみに浸るだけの作品ではなく、中間部では「思い出を懐かしむような」優しさや邂逅が感じられます。

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ドイツ語のタイトルは「Liebesleid」ですが、同じドイツ語圏でもドイツとオーストリアでは微妙に意味合いが違うようで、オーストリアにおける「leid」は悲しみの中にも望みや希望が含まれていると言われています。「愛の喜び」と同様、「愛の悲しみ」も3部構成で、演奏時間は約3分半です。

「四月は君の嘘」にも登場する名作

中学生ピアニストとヴァイオリニストの成長を描いた人気漫画「四月は君の嘘」にも使用されているので、聞き覚えのある方も多いと思います。本編では、主人公の有馬公生が亡き母を思いラフマニノフ編曲の「愛の悲しみ」を演奏します。クライスラー版とは違った複雑さや奥行きが感じられる作品です。

聴きどころは?

イ短調の悲しげなメロディーで始まりますが、中間部の希望と後悔が入り混じったメロディーは、まさに白眉といえるでしょう。ヴァイオリンとピアノのための作品ですが、チェロやフルート、ビオラなどさまざまな楽器でも演奏される作品ですので、聴き比べるのも楽しみの一つです。

「美しきロスマリン」について

3曲目は「美しきロスマリン」です。こちらも上述した2作品と併せて演奏されることが多く、アンコールの定番作品でもあります。この作品もウィンナ・ワルツ形式で作曲され、ト長調による軽快で愛らしいメロディーが特徴です。

タイトルの「ロスマリン」とはハーブの「ローズマリー」のことで、花言葉は「追憶」や「思い出」、「変わらぬ愛」などを意味するほか、女性の名前としても使用されることが多いそうです。もしかしたら、自分を献身的に支えてくれたハリエット夫人へのプレゼントなのかもしれませんね。

こちらも3部構成となっており、アルペジオと半音階が組み合わさった軽やかな主題が聴く人を楽しませます。演奏時間はごく短く、2分程度です。

聴きどころは?

2分程度の短い小品なので、気軽に聴ける作品です。軽快なメロディーとローズマリーの美しい花を思わせる表情豊かな音色が、聴く人の心にも一輪の花を咲かせてくれます。ヴァイオリニストにとってマストな作品ですので、いろいろな演奏を聴き比べて、自分好みの演奏家を見つけてみてください。

まとめ

いかがでしたか?。今回は「3つのウィーンの舞曲」について解説しました。どれも単独作品として作曲されましたが、コンサートではセットで演奏されることが多く、現在でも大変人気のある作品です。動画を観ていただければ、「聴いたことある!」となる方も多いのではないでしょうか。どの作品もクライスラーらしい華やかさと語りかけるようなメロディーが美しく、何度でも聴きたくなってしまいます。この記事を機会に、さらに天才クライスラーの作品を聴いてみてはいかがでしょうか。

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