サミュエル・バーバーの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

出典:[amazon]「サミュエル・バーバー(1910-81)の歴史的録音集1935-1960」

アメリカ現代クラシック音楽の巨匠サミュエル・バーバー。日本ではあまり馴染みのない作曲家かもしれませんが、母国アメリカでは代表作『弦楽のためのアダージョ』がジョン・F・ケネディ大統領の葬儀で使用されるなど、国民的人気を獲得しています。また、歌曲の作曲家としても知られており、なかでも全10曲からなる歌曲『世捨て人の歌』はバーバー作品の中でももっとも演奏機会の多い作品の一つです。そんな20世紀を代表するアメリカの作曲家バーバーの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はバーバーの作品の特徴とおすすめ作品を紹介します。

バーバーの作品の特徴や評価について

バーバー作品の特徴について紹介します。楽器演奏や作曲のみならず、声楽家としてもバーバーは名声を博しました。

伝統的な和声や形式にこだわる

バーバーが生まれた20世紀初頭のクラシック音楽界は、無調や十二音技法といった現代音楽(あるいは実験音楽)の全盛期とも言える時代でした。しかしそんな時代にあっても、バーバーは伝統的和声や楽式に強いこだわりを持ち、19世紀から続くロマン主義的作品を貫いています。

しかしバーバーが現代音楽の潮流にまったく無関心だったかというと、一概にはそうとも言えないようです。例えば『ピアノ協奏曲』では、非常に複雑かつ実験的和声を多用しており、その点から考えると、バーバーは「同時代的風潮を横目に見ながら」、伝統を受け継いだ最後の作曲家と言えるでしょう。そのことから、バーバーの音楽はしばしば「新ロマン主義」の音楽に分類され、自身も「最後のロマンティスト」と称されています。

作品の過半数が歌曲

生涯で200曲に及ぶ作品を残したバーバー。なかでも『弦楽のためのアダージョ』はアダージョの白眉として人気があります。しかしその作品の過半数に及ぶ、約6割が歌曲であったことはあまり知られていません。読書愛好家でもあったバーバーは、青年時代から詩集を好み、10代の頃はジェームス・ジョイスやウィリアム・イェイツに熱中したそうです。

そんなバーバーは、歌曲の創作にあたって次のような言葉を残しています。
「私は、言葉を扱う音楽を作曲しているとき、その言葉の中に浸ってしまう。そうすると、音楽ははその言葉からあふれ出てくるんだ」

バーバーにとっての音楽とは「言葉とともに」あったのかもしれません。

バーバーのおすすめ代表作5選

バーバーのおすすめ代表作を紹介します。どれも初めて耳にする作品だと思いますが、バーバーの音楽性や管弦楽法が存分に発揮されている作品ばかりです。

交響曲第1番

1935年から1936年にかけて作曲されたバーバー初期を代表する交響曲です。作曲時20代半だったバーバーの若々しさと、独自のロマン主義的叙情性が、作品に色濃く反映されています。

1937年、アルトゥーロ・ロジンスキ指揮によるニューヨークでの初演後、ザルツブルグ音楽祭でも取り上げられ、大きな話題となりました。これはアメリカ人作曲家として初の快挙であり、『交響曲第1番』はバーバーにとって記念碑的な作品といえるでしょう。

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交響曲第2番

『交響曲第1番』からおよそ8年後の1943年から1944年にかけて作曲された2つめの交響曲です。アメリカ陸軍航空部隊の委嘱により作曲され、クーセヴィツキー指揮、ボストン交響楽団によって初演されました。

初演当初は作品の出来に満足していたバーバーですが、のちに楽譜を破棄したため、楽譜が発見される1984年まで「幻の作品」となりました。この作品を作曲中のバーバーは、自らも航空軍基地に滞在し、パイロットたちの経験などを実際にインタビューしてイメージを膨らませました。全3楽章構成で、演奏時間はおよそ30分です。

コマンド・マーチ

バーバーが作曲した唯一の吹奏楽曲です。「コマンド」とは「特殊部隊」を意味します。1943年、第2次世界大戦中の徴兵中に作曲され、初演はバーバー本人の指揮によって演奏されました。後日クーセヴィツキーの依頼により管弦楽版にも編曲され、クーセヴィツキー指揮により初演されています。

一般的な「マーチ」のイメージとは異なりますが、兵士の勇敢な姿がありありと目に浮かぶ良作です。

カプリコーン協奏曲

1944年に作曲された「室内楽のための」協奏曲です。作品にはバロック形式が採用されており、楽器編成もバッハの『ブランデンブルク協奏曲2番』がモチーフとなっています。室内楽そのものを協奏曲として使用した興味深い作品です。

また、タイトルの「カプリコーン」とは意味深なネーミングですが、これは1943年に購入した自宅の愛称から命名されたそうです。ロマン主義的傾向の強いバーバーですが、この作品からは、プロコフィエフの作品を彷彿とさせる実験的試みが感じられます。3楽章構成で、演奏時間は約18分です。

序曲『悪口学校』

バーバーが21歳で作曲した演奏会用序曲です。それと同時に、バーバー初の管弦楽曲でもあります。タイトルの『悪口学校』とは、アイルランドの劇作家シェリダンの同名作品によるもので、原作のイメージを元にバーバーが管弦楽曲として表現しました。

1933年の初演では大成功を収め、若きバーバーの名が世に知れ渡るきっかけとなりました。演奏時間はおよそ9分です。

まとめ

いかがでしたか?今回はサミュエル・バーバーの作品の特徴やおすすめ作品について解説しました。日本では『弦楽のためのアダージョ』以外、あまり知られていない作曲家かもしれませんが、ヨーロッパ諸国で成功したアメリカ人作曲家の一人として、現在では世界的名声を獲得しています。今回紹介した作品は、バーバーの豊かな抒情性が表現された作品ばかりですので、今回の記事をきっかけに、他のバーバーの作品にも触れてみてはいかがでしょうか。

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