スティーブン・フォスター『おおスザンナ』『草競馬』の解説と分析。楽曲編成や聴きどころは?

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「アメリカ民謡の父」と称されるスティーブン・フォスター(以下フォスター)。フォスターが残した名作の数々は、現在でも祖国アメリカにとどまらず世界中で親しまれています。なかでも、今回紹介する『おおスザンナ』と『草競馬』はフォスター屈指の傑作であり、誰しも一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。
37歳という若さでこの世を去ったフォスターですが、その作品群は今日に至るまで絶大な影響を及ぼしています。

『おおスザンナ』とは?

37歳という生涯の中で、200曲以上もの作品を残したフォスター。
その中でも『おおスザンナ』はとりわけ名曲として知られています。

本作は1848年に作曲された歌曲であり、フォスターが吸収したクラシック音楽や黒人音楽の要素が融合した最高傑作です。

また、全世界でもっとも有名なアメリカ歌曲であり、ポップスやジャズといったさまざまなアレンジもなされている点も特徴と言えるでしょう。

この作品を作曲した当時のフォスターは、兄が経営する船舶会社で会計係を務めていた時期で、社交場で披露するために作曲されたと考えられています。

その後1847年にピーターズ社より楽譜が出版されると、たちまち大ヒットを記録。フォスターの名は一気に知られるようになりました。

伝統音楽の融合

フォスターの作品の大きな特徴は、アフリカ系アメリカ人などの黒人音楽の要素を採用した点にあります。19世紀初頭から中期にかけてのアメリカでは、ミンストレル・ショーと呼ばれる黒人を風刺した音楽が流行し、フォスターもこの分野において多くの作品を残しました。

本作『おおスザンナ』が、アフリカを起源とするバンジョーを用いて演奏されるのもそのためです。19世紀後期になると、差別反対の運動の高まりからミンストレル・ショーは衰退の一途をたどりますが、フォスターの作品は19世紀を代表する「アメリカ音楽」として今日まで歌い継がれています。

アメリカ初のソングライター

フォスターがアメリカ初のソングライターであることをご存じでしょうか。
フォスターは『おおスザンナ』を楽譜出版する際、楽譜1部につき2セントの印税で契約を結んでいます。

そしてこの契約は、アメリア初の「プロ音楽家」の誕生と考えられています。
しかし当時は現在のように著作権に対する意識が高くなかったため、『おおスザンナ』の大ヒットにもかかわらず、フォスターが受け取った金額はわずか100ドル(現在の金額でおよそ30万円)だったそうです。
フォスターの後半生は、経済的困窮や妻との不和に悩まされましたが、もし当時からきちんとした著作権が担保されていれば、フォスターの収益は数億円にまで及んだとも言われています。

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余談ですが、本作は日本でも早くから知られており、1852年にジョン万次郎によって伝えられたと言われています。

『草競馬』の解説

上述の『おおスザンナ』と同様、フォスターを代表する歌曲です。
1850年に楽譜出版社ベンティーン社により出版され、こちらも大ヒットを記録しました。
原題の「Camptown」とは、アメリカ大陸横断鉄道の建設を請け負った建設会社の「テント村」を意味するそうです。

フォスター本人もペンシルバニアのキャンプタウンを数回見ており、その体験が本作の作曲に繋がったと考えられています。

当初は歌曲として発表されましたが、その完成度の高さからのちに管弦楽版にもアレンジされています。こちらも黒人音楽の民族的要素が活かされており、単純なフレーズの中にも懐かしさが感じられる名曲です。

また、20世紀に入るとヨーロッパ各国にも広がりを見せ、ジャコモ・プッチーニが1910年に発表したオペラ『西部の娘』でも本作のモチーフが採用されています。

日本でもお馴染みの名曲

『草競馬』というタイトルを聞いてもピンと来ない方が多いのではないでしょうか。
本作は「聴いたことがあるけどタイトルを知らない」作品の代表としても有名です。

しかし、動画をご覧いただければわかるように、日本でもとても馴染み深い作品として、
さまざまなメディアで使用されているほか、日本各地の駅ホームの発車音としても採用されています。

本作で印象的に使用される「Doo da day(ドゥー・ダ・デイ)」という歌詞は、ハラハラやドキドキという意味を表しているそうです。

また、サッカー・イングランド代表の応援歌「Two World Wars and One World Cup」は、本作の替え歌が使用されています。

まとめ

フォスターをもっとも代表する2作品を紹介しました。
フォスターの音楽は親しみやすく、心にスッと届くメロディーが特徴です。
聴いていると、日本人である私たちにとってもどこか懐かしく、郷愁感を覚える方もいらっしゃると思います。
フォスターは生涯で200曲以上の作品を残しました。今回紹介した2曲以外にも、優れた名曲が多くありますので、興味を持たれた方は、ぜひフォスターの他の作品にも触れてみてはいかがでしょうか。

>>スティーブン・フォスターってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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