ヨーゼフ・シュトラウス「天体の音楽」「フェニックス行進曲」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

出典:[amazon]ヨーゼフ・シュトラウス:オーストリアの村つばめ

作曲家としてのデビューは遅かったものの、生涯で280曲あまりの作品を作曲したヨーゼフ・シュトラウス。兄ヨハン・シュトラウス2世の激務を手伝うためにやむなく音楽家に転向したヨーゼフでしたが、のちに才能を開花させ「ワルツのシューベルト」とまで評されました。42歳という短い人生でしたが、残された作品の多くは今でも聴衆に愛されています。今回はヨーゼフ・シュトラウスの作品のなかから「天体の音楽」と「フェニックス行進曲」をご紹介します。

天体の音楽について

ヨーゼフ・シュトラウスをもっとも代表するウィンナー・ワルツです。ナポレオン失脚後のウィーン会議を題材にしたドイツ映画「会議は踊る」(1931年)で使われていることでも有名です。1863年、ウィーン大学医学生で構成される「医学舞踏会」の音楽監督を兄のヨハンから引き継いだヨーゼフが、彼らの依頼で作曲しました。

ヨーゼフはこの曲を作曲するにあたり「天体の運行を大きなハーモニーと考えて」曲想を練ったとされています。フルートが静かに鳴り響き、それを遠くから美しいハープの音色が追いかけます。また、弦楽器によるピチカート(※2)は、星々の輝きを表現しているといわれています。

「天体の音楽」という意味深なタイトルの由来は、当時流行していた古代ギリシャの哲学者ピュタゴラスの「天球の思想」からきているそうです。1868年、ゾフィエンザール(※1)にて初演され大成功を収めました。演奏当日には、会場全体が星を散りばめた青い絹布で飾り付けられるという美しい演出もなされました。

※1、ゾフィエンザールとはウィーンにかつてあった温泉プール施設です。2001年に火事で焼失しましたが、現在は複合商業施設として利用されています。
※2、ピチカートとは弦を指で弾く技法のことです。

楽曲編成は?

5つの小ワルツから構成されるウィンナ・ワルツで、演奏時間は10分前後です。
ニ長調のアンダンテ・モデラート(4/4拍子)の序章から始まり、5つのワルツに展開します。第1ワルツの優美さから第2ワルツ(ト長調)へと展開され、第3・第4ワルツでは華やかで豪華なワルツへと変化します。最後の第5ワルツでは音量が増しフィナーレとなります。

あまり演奏される機会はありませんが、第1ワルツに合唱が付くこともあります・

聴きどころは?

「天体の運行を大きなハーモニーと考えて」の曲想の通り、ワルツは序奏からさまざまな景色を見せてくれます。5つのワルツそれぞれが優雅でありながら、星々や夜空の美しさを表現しているところが魅力です。第4ワルツの主題はとくに有名で、一度は聴いたことのあるメロディーだと思います。この部分だけでもウィンナ・ワルツの醍醐味を味わえる作品ではないでしょうか。ニューイヤー・コンサートでもたびたび演奏され、「天体の音楽」は今年(2022年)のプログラムのラストを飾りました。

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フェニックス行進曲について

フェニックス行進曲について調べてみましたが、残念ながら多くの資料を見つけることができませんでした。1861年にウィーンの新しい公園の開園を記念して作曲された作品とされています。演奏時間はおよそ2分間です。行進曲にふさわしく、勇ましく堂々とした作風が特徴です。公園の開園を記念して作曲されたことから、「遊園地で流れてきそうな」音楽というイメージにピッタリです。

そして特筆すべきは、2022年に初めてニューイヤー・コンサートで採用されたところでしょう。これまでのニューイヤー・コンサートでは一度も演奏されたことがありませんでしたが、今年はヨーゼフ生誕195周年を記念しての採用だったそうです。またタイトルの「フェニックス」は不死鳥とされていることから、「コロナ禍から再生する希望」としても演奏されたそうです。2022年のニューイヤー・コンサートの1曲目を飾り、2曲目は兄ヨハン・シュトラウスの「フェニックスの羽ばたき」が演奏されました。

ちなみに、今年(2022年)のニューイヤー・コンサートでは「フェニックス行進曲」以外にも、「海の精セイレーン」や「ニンフのポルカ」などもヨーゼフ作品として初めて演奏されています。

その他に今年(2022年)に初採用された作品は以下の通りです。()内は作曲者。
・ちょっとした記録(エドゥアルト・シュトラウス)
・夜遊び(カール・ミヒャエル・ツィーラー)
・家の精霊(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世)

聴きどころは?

2分ほどの短い作品ですが、全体を通して明るく陽気な作品となっています。ウィーンの澄んだ青空と、人々のワクワクした気持ちが目に浮かぶようです。木管楽器と金管楽器が奏でる軽快なメロディーが聴く人々に勇気や楽しさを与えます。

まとめ

いかがでしたか?今回は「天体の音楽」と「フェニックス行進曲」について解説しました。「フェニックス行進曲」についてはあまり詳しいことはわかりませんでしたが、「コロナ禍を乗り越えるという」意味では、私たちに勇気を与えてくれる作品だと思います。なかなか聴くことはないと思いますが、この記事を機会にぜひ覚えておいてください。「天体の音楽」は、映画にも使われていますので、合わせて映画を見てみるの面白いもかもしれません。

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