ベンジャミン・ブリテン『青少年のための管弦楽入門』『戦争レクイエム』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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ベンジャミン・ブリテンという作曲家をご存知ですか?ブリテンは20世紀初頭に生まれ、世界的名声を獲得したイギリスの作曲家です。作曲以外にもピアニスト、指揮者としても活躍し、多くの名作を世に送り出しました。

なかでも今回紹介する『青少年のための管弦楽入門』と『戦争レクイエム』は、ブリテンをもっとも代表する作品として、現在の演奏会でもしばしば取り上げられています。そこで今回は、ブリテンを代表する上記2作品について解説します。

『青少年のための管弦楽入門』について

『青少年のための管弦楽入門』は、1945年にブリテンによって作曲された管弦楽曲です。ユニークなタイトルに興味を惹かれた方も多いと思いますが、この作品はイギリスBBCが制作した音楽教育映画のために作曲されました。

また、本作の主題にはイギリスバロック期の作曲家ヘンリー・パーセルによる主題※1が用いられていることから『パーセルの主題による変奏曲とフーガ』という副題が付けられています。作曲期間はかなり早く、1945年12月中頃から31日のおよそ2週間で作曲されました。映画は1946年11月に公開され、それに先立ち同年10月に初演されています。

年少者への教育的作品であるため、作品にはナレーションによる解説が付けられるバージョンもあり、ナレーション無しの演奏時間はおよそ17分です。プロコフィエフの『ピーターと狼』やサン=サーンスの『動物の謝肉祭』と並び、年少者向け作品として定評のある作品です。

※1ヘンリー・パーセルによる劇付随音楽『アブデラザール』のロンドが主題として用いられています。

主題の展開に注目

冒頭にパーセルによる主題が堂々と展開し、それを追うように各パートがテーマを奏でます。これに注目しながら作品を聴くと、より一層本作を楽しめるはずです。編成順は次の通りとなっています。

1、合奏
2、木管合奏
3、金管合奏
4、弦楽合奏
5、打楽器合奏
6、合奏(フーガ)

以上の順に作品が展開します。ぜひそれぞれのパートに注目しながら聴いてみてください。ラストを飾るブリテンによるフーガとパーセルのフーガの2重フーガは圧巻です。

楽器編成について

楽器編成についても見てみましょう。以下の順番で楽器が登場します。
・フルート、ピッコロ
・オーボエ
・クラリネット
・ファゴット
・ヴァイオリン
・ヴィオラ
・チェロ
・コントラバス
・ハープ
・ホルン
・トランペット
・トロンボーン、チューバ
・打楽器

『戦争レクイエム』とは?

『戦争レクイエム』は1962年に作曲された、管弦楽付き合唱曲です。ソプラノ、テノール、バリトンによる3人の独唱と混声合唱、児童合唱、オーケストラで構成されています。第2次世界大戦戦災の中、ドイツ軍によって破壊されたコヴェントリー大聖堂の再建献堂式を祝う目的で作曲されました。

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またこの作品では、第2次世界大戦で傷ついた「全ての国の犠牲者を追悼する思い」と、「世界の平和を願う」ブリテンの高い精神性が表現されています。

作品は1962年5月30日に初演され、一部ミスがあったものの、成功のうちに幕を閉じました。バリトンを担当したフィッシャー・ディースカウは、フィナーレの部分で戦死した友人たちのことを思い出し、涙ながらに独唱を務めたそうです。

また、『戦争レクイエム』を聴いたショスタコーヴィチは、この作品について「人間精神の偉大な作品」と賞賛し、自身の『交響曲第14番』をブリテンに献呈しています。

初演翌年の1963年にはレコードが販売され、異例の20万枚を突破するヒット作となりました。これによりブリテンは、第6回グラミー賞「クラシカル・アルバム・オブ・ザ・イヤ」並びに「最優秀クラシック・コンテンポラリー作曲賞」を受賞しています。

楽曲編成について

本作は全6章で構成されており、演奏時間は1時間30分程度です。各構成は以下のようになっています。タイトルは全てラテン語です。

1、レクイエム・エテルナム(永遠の安息)
2、ディエス・イレ(怒りの日)
3、オッフェルトリウム(奉献唱)
4、サンクストゥス(聖なるかな)
5、アニュス・デイ(神の子羊)
6、リベラ・メ(我を解き放ちたまえ)

最初から通して聴くのに抵抗のある方は、部分的に聴いてみると良いかもしれません。

ブリテンの最高傑作と称される

この作品の成功により、ブリテンの名声は頂点に達することになります。作品にはさまざまな賛辞が送られましたが、なかでも世界的脚本家ピーター・シェーファーは雑誌記事において次のような賞賛を述べています。

「かつて我が国で作曲された宗教曲の中で、最も荘重(そうちょう)かつ感動的な作品であり、20世紀に作られた最も偉大な音楽作品の一つであると信ずる」

戦争の惨禍と平和への祈りが込められた『戦争レクイエム』は、瞬く間にイギリス全土へ広がり、続いてドイツ、アメリカ、ニュージーランドなど世界各国でも演奏されるようになります。その影響は日本にも及び、発表からわずか3年後の1965年に日本初演が行われました。

余談ですが、『戦争レクイエム』は、日本を代表するコンサート・ホールの一つ「すみだトリフォニー・ホール」の柿落としで演奏されたことでも知られています。

まとめ

いかがでしたか?今回はブリテンの『青少年のための管弦楽入門』と『戦争レクイエム』について解説しました。どちらの作品も、初めて耳にした方が多いのではないでしょうか。ブリテンは日本ではあまり紹介されない作曲家ですが、今回紹介した作品以外にも数多くの傑作を残しています。この記事を機会に、少しでもブリテンの作品に興味をもっていただければ幸いです。

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