ゲオルク・フィリップ・テレマン『ターフェル・ムジーク』『忠実な音楽の師』の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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後期バロック音楽を代表するゲオルク・フィリップ・テレマン(以下テレマン)。バッハやヴィヴァルディ、ヘンデルといった大作曲家たちと同じ時代に生き、その人気は彼らを凌ぐものでした。生涯でおよそ4000曲以上もの作品を作曲し、作品群は21世紀に入った今も編纂が続けられています。

テレマンの死後、彼の作品は急速に忘れ去られましたが、20世紀に入り徐々に見直され、現在ではコンサートでもたびたび取り上げられるようになりました。
そこで今回はテレマンをもっとも代表する作品『ターフェル・ムジーク』と『忠実な音楽の師』について解説します。

『ターフェル・ムジーク』とは?

『ターフェル・ムジーク』はおそらくテレマンをもっとも代表する作品ですが、「ターフェル・ムジーク」自体はテレマンの時代より以前から作曲されていました。
「ターフェル・ムジーク」とはドイツ語で「食卓の音楽」を意味し、16世紀中頃から登場した音楽形式のことを言います。

貴族の宴会やお祝い事で演奏される作品で、現在のBGMのような役割を果たしていました。テレマン以前の「ターフェル・ムジーク」の主な作曲家としては、ヨハン・シャインなどが挙げられ、彼の曲集『音楽の饗宴(きょうえん)』は高い人気を得たと言います。

これらの作品は、現在では古楽器を使用した演奏会でたびたび演奏されており、多くの録音もリリースされています。

テレマンの『ターフェル・ムジーク』

こうした歴史的背景の上で、作曲されたのがテレマンの『ターフェル・ムジーク』です。1733年頃に作曲された作品で、楽譜出版当時はフランス語で販売されました。膨大なテレマン作品群のなかでも屈指の人気作品集であり、テレマンといえば「ターフェル・ムジークの作曲者」と言っても過言ではないでしょう。

実際、発表当時も絶大な人気を獲得したようで、その人気はバッハの『ブランデンブルク協奏曲』と二分するほどだったと言います。バッハとテレマンでは、テレマンの方が圧倒的に人気があったことを考えると、本作は相当なベストセラーだったことが考えられます。

楽曲編成は?

本作の楽曲編成は全て同じ構成で作曲されており、作品の順番は以下の通りです。
1、組曲
2、弦楽四重奏曲
3、協奏曲
4、三重奏局
5、独奏
6、終曲

これら合計6曲を1作品とし、いずれもおよそ100分程度で演奏されます。
他の作品と異なり比較的大規模な作品であるのは、BGMとしての効果を高めるためだと考えられます。この曲集は全部で3巻あり、少人数で演奏できるものからオーケストラ曲まで、幅広いジャンルが網羅されているのも特徴と言えるでしょう。本作が「バロック音楽の百科全書」と呼ばれるのも納得ですね。

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テレマンのビジネス戦略

テレマンは作曲の天才であると同時に、商才も備えた人物でした。
本作『ターフェル・ムジーク』もテレマンのビジネスセンスを物語る作品として知られ、発表当時は予約販売で販売されたそうです。

それは、売れない在庫を抱えるリスクを避ける目的と、予約者限定割引という特典を付けて商品価値を高めるためでもありました。

事実テレマンのビジネス戦略は功を奏し、ドイツ本国で好評を得たのはもちろんのこと、海を越えたフランスやロシア、北欧などからも注文が集まったそうです。また、イギリスで大成功したヘンデルも本作を注文しています。

『忠実な音楽の師』について

本作もテレマンの作品集です。しかし『ターフェル・ムジーク』のようなBGMとしてではなく、室内楽やオペラからの引用、ピアノ曲などさまざまなジャンルで構成されているのが特徴です。

1728〜1729年にかけて作曲され、2週間ごとに4ページずつ販売された「企画ものの作品集」として、1年にわたり販売されました。最終的に本作品集は全25作品・69曲となり、アマチュア音楽家から宮廷音楽家にいたるまで、幅広い層から支持を得ています。
その内容もカンタータやアリア、交響曲やソナタなど多種多様な構成で、購読者を飽きさせない戦略がテレマンの商才を物語っていますね。

バッハも毎週のように教会音楽を作曲したことで知られていますが、テレマンはその記録をあっさり抜いていることにも注目です。本作品集は、その明快な音楽スタイルにより、現在もたびたび演奏される人気曲です。

その他の作品集

テレマンは本作品集以外にも数々の組曲や作品集を作曲しています。
なかにはスウィフトの『ガリバー旅行記』をモチーフにした『ガリバー組曲』などの作品もあり、文学と音楽のコラボ作品も生み出しています。

人気の文学作品に音楽を付けるアイディアも、テレマンの戦略だったのかもしれません。本記事の読者の方で『ガリバー旅行記』を読んだことのある方がいらっしゃったら、音楽と照らし合わせながら再読するのも面白いのではないでしょうか。

まとめ

テレマン作曲『ターフェル・ムジーク』と『忠実な音楽の師』を紹介しました。
BGMという考えがバロック時代からあったのかと思うと、なんだか興味深いですね。
それはいつの時代も、音楽が人々の生活の一部であったことの証拠なのかもしれません。
近年、テレマンの作品は徐々に復活しつつあり、演奏会でもたびたび演奏されています。
今回の記事で少しでも関心を持たれたなら、その膨大な作品の渦に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

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>>ゲオルク・フィリップ・テレマンってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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