ジャン・シベリウス「フィンランディア」「エン・サガ」の解説・分析。楽曲編成や聴きどころは?

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ジャン・シベリウス(以下シベリウス)はロシア帝国の圧政に苦しめられながらも、祖国フィンランドを心から愛し、愛国精神に溢れる作曲家でした。その生涯は波乱に満ちたものですが、後世の音楽に多大な影響を及ぼし、作品は今もなお多くの人々に愛されています。なかでも「フィンランディア」はシベリウスの1番の代表作として今日も世界中で演奏されています。そこで今回はシベリウスの代表作「フィンランディア」と交響詩「エン・サガ」について解説します。これを機会にぜひ聴いて見てください。

フィンランディアとは

交響詩「フィンランディア」は、1899年に作曲されたシベリウスを代表する作品です。シベリウスを代表するだけではなく、フィンランド国民にとっては第2の国歌として広く愛されています。作曲された当時のフィンランドは、ロシア帝国から圧政を受けており、言論統制まで行われた苦しい時代でした。

そんな中、フィンランドの独立運動が活発になり、シベリウスは新聞社が主催する歴史劇の作曲を任されます。「フィンランディア」が発表された当初は、ロシア当局の監視の目が厳しかったため、「フィンランディア」とは呼ばれておらず別のタイトルが付けられていたそうです。この劇音楽は7曲で構成され、フィンランドの民族意識を高めるために叙事詩「カレワラ」から題材が取られています。そしてこの歴史劇7曲目の最後「フィンランドは目覚める」が「フィンランディア」の原形です。1900年に「フィンランディア」と正式にタイトルが付けられました。

この曲がフィンランドの人々の共感を呼び、作品は大成功を収め、シベリウスの名前がフィンランド国内に届くようになります。1941年にはフィンランドの詩人コスケンニエミによって歌詞が付与され、「フィンランディア讃歌」としてフィンランドの人々にとっての心の音楽として今もなお深く愛されています。

歴史劇は次のような作品で発表されました。

  1. 前奏曲
  2. ワイナミョイネンの歌
  3. ヘンリク司教によってフィン人が洗礼を受ける
  4. ヨハン公の宮廷からの1場面
  5. 三十年戦争におけるフィン人
  6. 憤怒(ふんぬ)
  7. フィンランドは目覚める

楽曲編成は?

演奏時間はおよそ9分です。物語前の序奏が2つ続き、冒頭部分の重くのしかかるようなメロディーは、圧政に苦しむフィンランドの人々を表現していると言われています。
音楽的構成としては序奏Aー序奏BーAーBーAの構成となっています。

楽器編成は以下の通りです。

  • フルート
  • オーボエ
  • クラリネット
  • ファゴット
  • ホルン
  • トランペット
  • トロンボーン
  • テューバ
  • ティンパニ
  • トライアングル
  • シンバル
  • 大太鼓
  • 弦楽5部

聴きどころは?

序奏の暗く重い雰囲気がフィンランドの人々の心情を強く表しています。しかし音楽が進むに連れて、独立を勝ち取るかのような強いパッションが表現されていきます。さらに後半部分では、民衆を自由へと導くかのようなメロディーが高らかに奏でられます。とくに展開部Bの部分は、「フィンランディア讃歌」として歌詞が付けられ、とても美しいメロディーが聞く人の心を勇気付けます。

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エン・サガとは

交響詩「エン・サガ」は1892年の暮れに完成され、1893年に初演されたシベリウス27歳の頃の作品です。10年後の1902年に改訂され今日に至ります。タイトルの「エン・サガ」とは日本語にすると「ある伝説」と訳され、「サガ」とは伝承文学や散文で書かれた歴史的物語を指します。「エン」とは英語の定冠詞「a」にあたるそうです。

フィンランドの叙事詩「カレワラ」に基づいて作曲されたクレルヴォ交響曲と同じ年に作曲され、クレルヴォ交響曲の成功を見た指揮者のロベルト・カヤヌスが、新作を依頼したのがきっかけで作曲されました。

シベリウスの最初の交響詩として知られ、大指揮者のトスカニーニやフルトヴェングラーも得意なレパートリーとしてたびたび演奏していました。この作品は「エン・サガ」というタイトルが付けられていますが、特定の叙事詩や歴史的ソースが出てこないのが特徴です。また作品の中にプログラム(物語の流れ)がありませんが、それでも絵画的な物語性を感じさせてくれます。

楽曲編成は?

交響詩なので、物語的で抒情的な作品です。演奏時間はおよそ20分でシベリウスの交響詩の中では最長の作品です。

楽器編成は以下の通りです。

  • フルート
  • ピッコロ
  • オーボエ
  • クラリネット
  • ファゴット
  • ホルン
  • トランペット
  • テューバ
  • バスドラム
  • トライアングル
  • シンバル
  • 弦楽5部

聴きどころは?

北欧の大地を思わせる雄大さと、後半部分では英雄的勇ましさが表現されている、視覚的作品と言えるでしょう。作品の改定後、この作品は上記の指揮者ロベルト・カヤヌスに献呈されています。シベリウスとかヤヌスは生涯に渡って親交を深めました。

冒頭部分から、北欧の厳しくも雄大な大自然を思わせるようなメロディーが聞く人の心を捉えます。中間部のシベリウスらしい大胆な音楽的展開は、聞く人をまるで冒険譚(たん)の中にいるような感覚に誘います。最後は木管楽器による静かなメロディーが流れ、その後チェロによるメロディーが物語の終わりを告げます。

まとめ

今回は「フィンランディア」と「エン・サガ」についてご紹介しました。どちらも交響詩らしく物語性のある作品で、シベリウスのフィンランドへの祖国愛が感じられる作品です。とくに「フィンランディア」はフィンランド独立の支えともなった名曲です。作品を見かけたら、ぜひ聴いてみてください。

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