出典:[amazon]ジョン・ケージ生誕100周年スペシャル・エディション (John Cage 100 – Special Edition) (5CD) [輸入盤]
数々の伝説を生み出した前衛芸術家ジョン・ケージ。その作風や発想は20世紀のクラシック音楽界のみならず、芸術運動や思想面にも大きな影響を及ぼしました。音楽面では今回紹介する「4分33秒」により、音楽に対する人々の意識に革命を起こし、思想においては「偶然性や非西洋的思想によって音楽の新しい地平を切り開いた」として京都賞を受賞しています。では、音楽界に衝撃をもたらした「4分33秒」とはどのような作品なのでしょうか。今回は、世界最長の音楽と合わせて2つの品を解説します。
「オルガン/ASLSP」について
ARVE Error:ARVE Error: Invalid URLInvalid URLin
url
in
url
src mismatch
provider: youtube
url:
src: https://www.youtube-nocookie.com/embed/M0Re3tanthg?start=238&feature=oembed
src mod: https://www.youtube-nocookie.com/embed/M0Re3tanthg?start=238
src gen: https://www.youtube-nocookie.com/embed/M0Re3tanthg
ジョン・ケージがピアノコンクール用に作曲した「ASLSP」をオルガン用に編曲した作品です。タイトルの「ASLSP」とは「As Slow as possible」の略称で、「可能な限り遅く」を意味しています。
8ページ程の小曲ですが、ジョン・ケージの他の作品と同様に「開かれた形式」(※1)で作曲されたため、演奏の長さは事実上無限の長さで演奏できる奇想天外な作品です。
この作品について、ジョン・ケージが亡くなってから5年後の1997年、「可能な限り遅くとはどの程度か」を話し合うシンポジウムがドイツで行われました。この問題について、オルガン奏者、哲学者、神学者、音楽学者などが集まって議論した結果、「理論上永久に演奏できる」という結論が導き出されています。
※「開かれた形式」とは、作品のテンポや演奏する順番、演奏ミスなどを含めて、全てが演奏者に委ねられる形式のことです。
639年かけて演奏するプロジェクトがある
上記の議論の結果を受けて、「ASLAP」を639年かけて演奏するプロジェクトが発足。2001年、ジョン・ケージの89歳の誕生日である9月5日にプロジェクトが開始され、2003年2月5日までは休符のため無音。その後2005年7月5日まで最初の和音が鳴り続け、2022年2月5日より、15番目の和音が演奏されています。ちなみに、演奏終了は2640年を予定しているそうです。
聴きどころは?
この作品の聴きどころといえば、「音の変更がいつになるのか」ではないでしょうか。音の変更時には世界的なニュースになりますので、気長に待ちながら音楽を楽しむのが良いかもしれません。
「4分33秒」とは?
1952年に作曲したジョン・ケージを代表する作品です。前衛音楽の代名詞であると同時に、ジョン・ケージの思想が色濃く反映された作品でもあります。演奏者に指示がなく、「演奏者が演奏しない」唯一の作品として知られています。
ジョン・ケージによる「沈黙の美学」の追求と、ハーバード大学に設置されていた「無響室」における「無音」の体験が作品のきっかけとなったそうです。無音を体験するために無響室に入ったジョン・ケージは、それでも「何か」が聞こえることに疑問を持ちます。そのことについて無響室の技術者に尋ねたところ、「神経系が働いている音と、血液が流れている音」であることがわかり、完全な無音は不可能であるとの認識に至ります。
そしてこのジョン・ケージの沈黙に対する気づきと、「偶然性の手法」が合わさり、「4分33秒」が生まれます。また、ジョン・ケージは「4分33秒」を作曲するにあたり、タロットカードを用いており、カードに時間を書き入れてシャッフルし、カードに書かれた数字を足して各楽章の長さを決定しています(ここが偶然性の手法です)。
作品の構造は、「第1楽章→休み→第2楽章→休み→第3楽章→休み」とされ、第1楽章30秒、第2楽章2分23秒、第3楽章1分40秒の合計4分33秒となっています。
初演は1952年の8月29日、ニューヨーク州ウッドストックにてデイヴィッド・チューダーによって演奏され、この時の演奏では、蓋の開け閉めにより各楽章の始まりと終わりを合図するという視覚的演出が施されました。
「4分33秒」については、その発表以降賛否両論が巻き起こり、「既成概念のために見落としている感覚を意識させる」という好意的な評価がある一方で、「音が持つ社会性が失われる」という批判も出ています。また作曲家で音楽研究者のマイケル・ナイマンは、1974年の著書『実験音楽 ケージとその後』において、ジョン・ケージをノイズミュージックの先駆けであると定義しています。
実は他にも数字シリーズがある
「4分33秒」ばかりが取り上げられるジョン・ケージですが、聴覚の拡張を意識した「0分00秒」や「弦楽器奏者のための59分1/2秒」、「ピアノ奏者のための34分46,776秒」といった時間に関わる作品も作曲しています。
また晩年はナンバー・ピースと呼ばれる、タイトルが数字のみの作品も作曲し、「101」「103」「108」では、巨大編成オーケストラを使用するなど、さまざまな数字シリーズが存在します。
まとめ
いかがでしたか?今回はジョン・ケージの「オルガン/ASLSP」「4分33秒」の2曲について解説しました。作品を調べてみると、どちらも哲学的な作品であることがわかりました。とりわけ「4分33秒」はジョン・ケージにとってだけではなく、クラシック音楽全体にとってもエポックメイキングなのではないかと筆者は感じています。作品を楽しめるかどうかは、聞く方の感性によりますが、まだ一度も聞いた事のない方は、ぜひ一度ジョン・ケージの作品に触れてみてはいかがでしょうか。きっと新たな体験が待っていると思いますよ。
>>ジョン・ケージってどんな人?出身やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?
コメントを残す